第5話 ヤンキーの不幸

 俺は保健室で治療を受ける事になった。

 ナイフで刺された箇所を止血していた包帯みたいなのを外し、保健室の先生が来た。

 足と腕にあるナイフで刺された傷。

 あと顔の傷。

 これらを全て直すとのことだった。

 どんな治療法なのか知りたい一心で見ていると先生の手は俺のおでこに触り目を閉じていた。

 「治療開始」

 そう先生が言った瞬間俺の体は温かくなっていった。温泉に入っているような感覚だった。腕の傷口を見てみるとどんどん傷口が狭まっているのがわかる。

 凄い能力だ。

 どんな能力かはわからないが戦闘向きではないので、ここで働いているのだろう。

 少し先生の顔を見てみる。

 茶色に染まった髪に長いまつ毛、唇も綺麗で鼻も高い。見た目だけをみるとクールビューティーな感じがする。白衣がとても似合っていた。こんな美人がこんなところにいる事に驚いた。

 保健室に通うかと迷った瞬間だった。

 「終了」

 変な妄想をしている間に治療は終わっていた。

 その瞬間目眩がした。

 心臓が飛び跳ねるぐらい鼓動が早くなっている。息も荒れていく。

 何もしていないのに凄い疲れた。

 長距離を走ったあとの感覚に似ている。

 「あ、そうか。初めて来たんだっけ?

ごめんね。説明するの忘れてた。テヘペロ」

 疲れた顔を必死にしてあげ先生を見る。

 ウインクしながら舌を出す先生。

 全然クールではなかったがやはり美しい。

 「私の能力は、おでこに手を当てた相手を回復させる能力かな?」

 なんで自分の能力なのに疑問形なのかは理解できないがツッコム気力もなかった。

 「でも、こんなスゴーーーーい能力にはある条件があります。一つは病は治せない事。

もう一つは治療する相手の怪我の具合が酷いにつれて治療している人の体力を消費しなくてはならない」

 「簡単に言ったら体力がガソリンみたいなもの」

 そうか

 だからこんなに疲れたのか。

 「だから寝たほうがいいよ?君少し傷深かったから」

 その言葉を聞いた俺はベットに倒れ込んだ。

 眠たい

 多分先生はヤンキーの治療に行くのだろう。

 申し訳ない感情を残しながら俺は目を閉じた。

 

 

 

 


 キーンコーンカーンコーン

 

 チャイムの音を聞いて目が覚めた。

 いつのまにかかぶっていた布団をどけて立ち上がる。

 体力は回復し、体も元どおりになっていた。

 「やぁっと起きたーー」

 そう言って先生は俺にもう異常がないかを聞いてもう授業が終わり帰宅時間と教えてくれた。

 俺の新しい家の寮に向かう。

 帰宅途中色々考えた。俺はなんであそこまでやったのか。

 死の恐怖とはそこまで大きかったのかと実感した。

 ナイフで刺された時アドレナリンが出ててあまり痛くは感じなかった。だがそれ以外に相手には殺意があることがわかった。

 ただの喧嘩なはずだったのに。

 俺には理解できない感情だった。

 何もしたいな奴を殺そうとしたんだろ?

 馬鹿極まりない。

 こんな高校行きたくない。

 怖い

 だが自分が悪魔かもしれない。

 それを最近実感し始めてきた。

 夕焼けが眩しく川にも映り込んでいた。

 何故太陽は昼は無色なのに夕方はオレンジ色になるのだろう 

 世界には謎がたくさんある。

 まぁなんでオレンジ色かは謎じゃないんだけど、、、

 そのたくさんの謎を一つ一つ解明していっているのにまた新しい謎が出てくる。

 この俺の悪魔の謎も解決できるのだろうか。

 悪魔とわかった瞬間殺されたりしないだろうか。

 不安の多い中俺は寮についていた。一年の部屋は四階にある。

 廊下を歩いていると笑顔マンが前から歩いてきた。喧嘩を止めてくれたお礼を言わないとと思い話しかけてみる事にした。

 「あっ、あの時喧嘩止めてくれてありがとう」

 突然話しかけられてびっくりした笑顔マンだったがすぐに話を返してくれた。

 「いいよいいよ。あんな喧嘩、目に入ったら誰でもとめにはいるよ」

 「本当にありがとう。あと名前教えてくれない?」

 「僕の名前は紅炎大介(こうえんだいすけ)

よろしくね」

 「よろしく」

 そこからは漫画の話や本の話、能力の話を聞いた。

 彼の使う能力は「炎」

 炎を使う時自分自身は熱く感じないらしい。

 部屋に戻り、ベットに入る。

     

       疲れた。

 たった一日でこんなにも疲れたのは初めてだった。学校行って走らされるは喧嘩売られるは体力めっちゃ使うはいい事一個もなかった。

 帰りたいなーばあちゃん。俺もう少しがんばるよ。

 

 

 

 次の日学校に行って先生にみっちり怒られた。

 

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