第566話 遂に入学です

 季節は流れ、今日はユルデンブルク魔法学校の入学式。


 新しい制服に身を包み、楽しみいっぱいな気持ちで今日のこの日を私は迎えていた。


 制服姿でお母様に毎朝恒例の挨拶へ行く。


 ユルデンブルク魔法学校の制服は、なんとスター商会で新しくデザインした物となっている。


 決してアダルヘルムのお怒りが怖かったから、校長先生がその罪滅ぼしでリニューアルしようと思ったわけではない。


 食堂の修繕工事の注文と一緒に制服もどうでしょうか? 安くなりますよ。とリアムが上手く誘導し営業したのだ。


 お陰様でスター商会の衣装部は大忙し。


 裁縫大好きなノアもお手伝いに行っていたが、学校に通っているリタやブライス、そしてまだ入学前のアリスもお手伝いしてくれた。


 ユルデンブルク魔法学校の新制服がスター商会でデザインされた物だと聞いて、多くの在校生迄もが新制服を注文してきたので、それはそれは凄い数の制作数だった。


 まあ、こちらとしては売り上げが伸びるので万々歳だが、リアムは余りの忙しさに(ちょっとだけ早まったかも……)と悔いていたし、商業ギルドのギルド長であるルイスの所には、色々な学校から問い合わせが有ったようで、貰い矢で大忙しになったと、ルイスからリアムに愚痴のような連絡が入ったらしい……ルイスごめんね。


 うん、これはリアムの笑顔に免じて許して貰おう。


 それにそれが商業ギルド長であるルイスの仕事だものねー、頑張って貰うしかないだろう。



 そして、お母様はというと、ここのところ老化の症状も落ち着いていて、起きている時間も一時よりも長くなった。


 ノアと一緒にお部屋に顔を出すと、お母様は笑顔で出迎えてくれた。


 その上スター商会の皆で頑張って作った制服がとても似合うとお褒め付きだ。


 お母様は私とノアの頭を優しくなでて、嬉しそうに笑ってくれる。


「学校生活を楽しんでいらっしゃいね」との優しい声掛けもしてくれた。


 お母様の笑顔は私の癒し。


 出来るだけ長く一緒に居たい。


 お父様、もう少しだけお母様との時間を私に貸してくださいね。





 そしていつものようにかぼちゃの馬車でユルデンブルク魔法学校へと向かう。


 今日は金馬君ではなく、セオが魔力を流した紺馬君だ。


 入学式では学生側ではなく、教師陣側に座る予定の私は、どう考えても絶対に目立つ。


 なのでせめて登校ぐらいは目立ちたくはないと、セオにお願いして紺馬君を出して貰った。


 まあ、親代わりにアダルヘルムとマトヴィルが来ているので、馬車から降りてしまえばその瞬間から目立つことは絶対なのだが……


 でもそこは周りの皆の視線はアダルヘルムとマトヴィルの二人に向かっているので、私は一緒に歩くモブとして認識されるだろう。


 なので今日、気を付けるのは入学式のみ!


 とにかく目立たず騒がず大人しく!


 それが学校で友人を沢山作ると決意している私の目標だった。



「ララ様! アダルヘルム様、マトヴィル様、お付きの方々、おはようございます! 入学式にピッタリないいお天気ですねー!」

「……モルドン先生……おはようございます……まさか……今日もお出迎えですか?」

「ええ! 勿論でございます! 本日はララ様の大切な記念日でございますからね! 失礼があってはなりません! さあ、私がご案内させて頂きます!」

「……はい……有難うございます……」


 嫌な予感という物は当たる物で……


 校長先生にはお手紙でお出迎え等特別な事はなさらなくても結構です! とお願いはしていたのだが、このモルドン先生にはそれは通用しないらしい……


 アダルヘルムとマトヴィルが学園に来るのに、お出迎え(ファンの出待ち?)をしないなど、モルドン先生にはあり得ない、考えられない事なのだろう。


 モルドン先生は一応は私に最初に声をかけてくれたが、視線は大好きなアダルヘルムとマトヴィルへと向かっている。


 その上興奮しているからか、入学生プラス保護者が集まる入口付近で大きな声を出すので大注目だ。


 こちらを見てくる生徒やその保護者達は、モルドン先生の大声のお陰で「なんだ? なんだ?」と興味津々な様子だ。


 それにモルドン先生はこのユルデンブルク魔法学校の有名な先生なのだろう。


 あの子あのモルドン先生に頭を下げらせるだなんて何者だ? と私にチクチク突き刺さるような視線まで送ってくる。


 アダルヘルムとマトヴィルは注目される事などなれているからか、そんな視線など全く気にならないようだ。


 でも平穏無事な学園生活を願う私としては、無難に登校したかった。


 スター商会に注目を集める時なら、その視線も大歓迎なんだけどねー。


 次に新店舗をオープンさせるときはモルドン先生を呼んでみようか?


 いい宣伝効果になるかもしれない。


 本気でそう思う程、モルドン先生の声は大きかった。



「さあ、さあ、職員室へ参りましょう!」


 と、入学式までは一生徒のフリをしようと思っていた私に、モルトン先生はそんな事を言ってくる。


(ううう……私もノアとルイとメルキオールの馬車に乗ればよかったよー……)


 と、本気でそう思うぐらい、初日から大注目な登校となってしまった。


 モルドン先生……本当勘弁してほしい。


 校長先生、モルドン先生を止めて下さいよー!



「ララ様、おはようございます!」


 渋々職員室に到着すると、心の中で突っ込んでいた狸顔な校長のブルーノ・ラクーン先生と、狐顔な教頭オスカル・フックス先生が私の下にすっ飛んできた。


 まだアダルヘルムに叱られた日の事が尾を引いているのか、入学式の善き日だというのに、二人共顔色が悪く笑顔が引きつっている。


 まあ、アダルヘルムは笑顔も怖いからね、気持ちは良くわかりますよ。


 でも怒られたくないならばモルドン先生を止めて欲しかったよ。


 校長先生は相変わらずそういう気遣いが出来ないようだ……うん、やっぱり人は中々変われないものだよねー。


 それに急に物分かりが良くなっても裏がありそうで怖いものね。


 明日からはきっと普通に学校生活を送れる……そう希望を持つことにした。



「では、アダルヘルム様とマトヴィル様は来賓席へ、お付きの方々はララ様とご一緒に、教師陣席で大丈夫ですよ」


 校長先生はアダルヘルムとマトヴィルを保護者席ではなく、来賓席へと招待する様だ。


 それいいの? と心配になったが、保護者席がざわざわとするよりは、人が少ない来賓席の方がまだ周りに影響がないのかもしれない。


「ララ様、大人しくですよ」とアダルヘルムは最後に私に言い残し、セオとクルトに目配せをして、モルドン先生の案内で職員室から来賓席へと向かって行った。


 アダムヘルム……大人しくって……


 それ、モルドン先生に言って下さいよ!


 心の中でだけそう突っ込み、大人しく頷いた私だった。


 はあ……波乱万丈な入学式になりそうだよ。トホホホホー。




☆☆☆




こんばんは、白猫なおです。(=^・^=)

やっとこさララの入学式です。長かった、長かったですね……ううううう。

でも終わりはまだまだ見えません……今年ももう半年……年内に終わりそうにないですねー。てへぺろ。

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