第4話 魔法の練習
ここの所の私の行動は怒られてばかりだったので、今日は大人しく部屋で一日過ごすことにした。
私がそう伝えると、アリナはとても喜んでくれた。
あの後、アリナはお母様からなるべく私を自由にし、興味のあることはやらせてあげて欲しいと頭を下げられたらしく、屋敷内なら一人でも自由に歩いてもいいと言ってくれた。ただし、レディとしての教育は別なので、余りにもお転婆すぎるのはダメだとも言われてしまったけれど……
私は、お母様に頭を下げさせた事と、アリナに主人に頭を下げさせてしまったと気を遣わせてしまった事を、深く反省したので、レディらしく大人しくしようと思ったのだ
ただし、それがいつまで続くかは自分でもあまり自信がないのだけれど……
折角なので今日は沢山の本を読むことにした。まだ難しい字は読めないが、随分と字を覚えたので本を読むのがとても楽しい、お昼を終えたころには用意していた本を読み切ってしまった為、アリナが図書室から新しい本を数冊持ってきてくれることになった。
その間に基礎魔法の本を読む。
(うーん、やっぱり怪我や病気の事を考えると癒しの魔法は大事だよね……)
回復魔法についてのページを開き、読んでみる
(ふむふむ。傷口や病気を癒すイメージをもち、手に魔力を集めると……)
魔法を使うにはどうやらイメージ力がとても大事らしい、私は家族が病気になったり、怪我をした姿を想像してみた。お母様、アダルヘルム、オルガ、マトヴィルそしてアリナ、皆私の大事な家族だ。絶対に失いたくはない。
すると、自然と手に魔力がどんどんと集まってきた、金色の光がボールの様に大きくなっていくーー
(この後、ど、どうしたらいいのかしら……)
そう考えているうちにも、光はどんどんと大きくなり、椅子に座っていられなくなってきた。ついにはバランスボールぐらいの大きさになってしまい、焦りだす。
そう、焦ると魔力がどんどんと流れていくのだーー
(落ち着け、落ち着け……)
とりあえず開いている窓の方に近づき、空にむっかて放り投げようと考えた。空になら人も居ないし、何かあっても大丈夫と思いついたからだ、私は膨れ上がる魔力を意識しながら徐々に窓に近づいて行った、その間も光はどんどん成長し、気球ぐらいに大きくなってしまった。
(ううう……元気玉みたいになってるよー)
やっと窓につき、深呼吸をして大きな声で叫びながら、空に向かって光の塊を投げ捨てた!
「回復!」
ドーン! と空で花火の様に光ははじけ飛んで、あちらこちらへと飛んで行った。
私はへなへなと、疲れてその場にしゃがみこんでしまった、かなりの魔力を使ったらしく体に力が入らない。
「お嬢様!」
アリナが本を抱え部屋へと飛び込んできた、その後ろにはアダルヘルム、オルガ、マトヴィルもいた。
アダルヘルムがすぐにしゃがみ込む私を、お姫様だっこの様にかかえてくれた。
私は皆に心配かけたくなくて、なんとか大丈夫アピールの為に言葉を発した
「……だいぶ、体が強くなりました……今度は気を失いませんでした……」
力のない笑顔になっていただろう、みんなが心配そうに私を覗き込んできた
「ララ様、一体、何をされていたのですか?」
アダルヘルムに抱きかかえられながら問われ、私は力のない声で素直に答えた。
「みんなが、怪我をしたときに治したいと考えたら……あんな風になってしまいました……」
私はそのまま、皆に笑いかけると、意識を手放したのだった……
(あー、また、お小言フルコースかな……)
と思いながら……
目を覚ました時には夕方だった、今回は倒れたその日の夕方だった。少しづつだが魔力の使い方が上達しているようで、嬉しくなる。私はふと、ベット横に心配そうにしているアリナが目に入り、声を掛けた。
「……アリナ……ごめんなさい……心配をおかけしました……」
まだ力が出なく、それだけ言うのが精一杯の私の頬を、アリナはそっと優しく触れた。
「良いのですよ、さあ、少しお水を飲んで、またゆっくり休みましょうね……」
アリナの優しい声に、私は頷くと、直ぐに眠りについたのだった……
次の日、私の体調はすっかり良くなっており、何時ものようにお母様との朝食へと向かった。
朝食の席では思い掛けず、お母様から魔法の勉強についてのお話があった、私は魔法の勉強が出来る事が嬉しくて思わず笑みが溢れた。そんな私をお母様は優しく見つめ、ゆっくりと話しだした。
「本当は5歳ぐらいになってからと思っていたのですが、貴女は色んな事に興味を持ち進んで行くとても聡い子のようです。
このまま自己流で魔法を使うのは、魔力の多い貴女にはとても危険な事なのです。
ですからこれから、私が基本的な魔法の使い方を教えていきたいと思います」
今日はお小言フルコースだと思っていた私は、とてもビックリした。私の好奇心旺盛なところを心配した皆が、お母様と話し合ってくれたらしい。
まさかお母様が魔法を教えてくれるだなんて、こんなにうれしいことは無い。
「お母様に魔法を教えて頂けるなんて、とても嬉しいです」
私がそう言うと、お母様は女神の笑顔を返してくれた。
「では、今日から週に2回、時間を設けましょう……ララ、しっかり覚えるのですよ」
「はい」
この世界の名前はアルデバラン。
この世界には12ヶ月あって
霞の月-1月、雪の月-2月、夢の月-3月、祭の月-4月、梅の月-5月、風の月-6月、夜の月-7月、草の月-8月、長の月-9月、穏の月-10月、霜の月-11月、納の月-12月となる。
曜日配列は7日で
月の日(月曜日)水の日(火曜日)金の日(水曜日)花の日(木曜日)火の日(金曜日)樹の日(土曜日)太陽の日(日曜日)となっている。
お母様の体調が良い日の、月の日と、花の日に、魔法の勉強をする事となった。
因みに、今日はアルデバラン歴1441年の、長の月、6日の月の日となる、そんな小さな事でもこの世界の事が分かるのが嬉しくてたまらない。
私はお母様の部屋に行き、用意された席に着く。
私のために応接室に机が用意されており、そこにお母様と向かい合わせで座った。
今この部屋には、お母様と私とアダルヘルムだけがいる。
お母様の部屋は私の部屋よりもかなり広く、とても落ち着いた色合いになっている。
もしかしたらお父様に合わせて作られた家具なのかもと思う色合いだ。
壁には大きなお父様の肖像画があり、私と同じ水色の瞳で微笑んでいた。
髪の色は私とは違い漆黒だ。とてもハンサムなので、お母様とはお似合いだなぁなんて考えてしまう。
「さぁ、ララ、今日は魔力を優しく扱う練習をしましょう」
「優しくですか?」
「そうです。貴女は魔力がとても多いので、手元からあふれ出してしまうのですよ。まずは細かく繊細な扱いを覚えなければなりません。いまのままでは魔力を使う際に自分だけでなく周りも危険にさらしてしまいます。ですから相手にも自分にも優しい魔法を心がけましょうね」
「はい、お母様」
私はそこで以前から疑問に思っていた事を聞いてみた
「お母様、私が魔力量が多いというのはどうして分かるのですか?」
お母様は女神の笑顔で微笑みながら答えてくれた。
「魔力量は生まれたときに水晶を握らせて測ります。後は魔法で鑑定することでも測ることが出来るのですよ」
そこで言葉を切ると、お母様の目が真剣なものに変わった。お母様の薔薇の様に深く紅い瞳に決意の様な物が見える……
「ララ、貴女が生まれたときに持たせた水晶は、手の中で消えて無くなりました」
「えっ!」
「それは水晶では魔力量が測りきれない事を表します。私はそこで貴女に鑑定魔法を掛ける事にしました。魔力量、属性を調べるためです。属性は私と同じ全属性、そして魔力量はーー」
お母様はさらさらと、紙にペンを通した
「この形が見えました……」
お母様は私の前に紙を差し出す。そこには、前世でも教わった数字の8を横にした形、無限が書かれていたのだった。
「この形はこの世界では ”全て” と言う意味です。つまり貴女はどこまでも魔法を使い続けることが出来る、と言う事です。使い方を間違えればとても危険であり、またこの事を知った者がいれば心を乱し、貴女を手に入れようとするでしょう。それほど魅力があり危険なものなのです。まだ小さな貴女には本当は話すのは早いのですが、貴女は聡い子ですし、それに色々な事に興味を持つ子です。ですので今後のことを考えて、話す事を決断いたしました」
私がお母様から視線をアダルヘルムに送ると、アダルヘルムは頷いていた。その様子で私の魔力量の事を皆も知っていたことを悟った。
「ララ、いいですか、優しい魔法を心がけるのですよ。貴女は私とアラスター・ディープウッズの娘です。決して、魔法の使い方を間違える事など、有り得ないのですからね」
お母様に心配しなくても大丈夫と 言われたきがした。自分たち夫婦の子なのだからとーー
大好きなお母様と素敵なお父様の子、神様から頂いた力。
神様、盛りすぎだけれど大事に使わせて頂きます。
私はお母様の言葉に「はい!」と元気よく返事を返したのだった。
その後は、繊細に魔力を扱う練習から始めた。
お母様が周りに結界を張ってくれて、その中でおこなう。
机の上に紙の束を置き、その上に葉を一枚置いて、葉だけを浮き上がらせるのだ。
今日はまずは風魔法を勉強する、少しだけ魔力を使う事をイメージしながら(風よ吹け)と心で願うとーー
ぶわっと全ての紙が舞い上がり、部屋中に散らばってしまった。失敗だーー
何度も何度も同じ練習を繰り返して、今日の勉強が終わるころにやっと失敗無く葉だけを浮き上がらせることが出来る様になっていた。
本当にほんの少しの魔力で魔法が使えることがわかった、今までの行いを私は反省した。この体で耐えられる魔力を全てつぎ込んでいたのだから、薪も飛んでいくはずだ。
「まさか1日でこんなに繊細に魔力が使える様になるなんて……ララ、本当に素晴らしい出来ですよ」
お母様そう言って微笑むと頭を撫でてくれた
「本当にララ様は、とても優れていらっしゃいますね」
アダルヘルムも普段あまり見せない笑顔を私にみせる。
私はそんな2人の言葉に驚いて思わず本音が出てしまった。
「えっ? 今日中に覚えなければならないと思ってました!」
「まぁ!」
ふふふ、と手を添え笑うお母様と、ニヤリとするアダルヘルムに
(先に言ってよー!)
と思ってしまったのは、仕方のないことだと私は思った。
こうして無事? 最初の授業は順調に終わったのだった。
(魔法使いに一歩前進したから、まぁ、いいか……)
と思いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます