ついに決行!偶然を装ってバッタリ大作戦!3
電車を乗り継いでネズミィーランドに到着した私達は、しばらく入場ゲートの列に並び、ようやくパーク内に入ることができた。事前にチケットを購入しているといえども、列には並ばなければいけないのだ。
パーク内に足を踏み入れた私たちはパッと顔を明るくした。まずはお土産売り場にて恒例のカチューシャを購入しようと、誰か言うまでもなく決まった。女性陣が引っ張るような状態で土産売り場へ足を踏み込む。
キャッキャとはしゃぎながらカチューシャを選ぶ女性陣を、一歩離れたところから男性陣が観察していた。私はその二つのちょうど中間にいたが、彼らの分のカチューシャも選んであげるべきだろう。私が女性陣の方へ向かったちょうどその時、唯我さんが独尊君を呼んだ。
「どー君もおいでよ。お揃いのやつにしよう」
唯我さんが笑顔で手招きすると、独尊君は無言で進み出た。だがカチューシャを選ぶのは気恥ずかしく、どうすればいいか悩んでいるようだ。何をするでもなく唯我さんの斜め後ろに立っている。
「私これにしますわ」
私は花音ちゃんの声に振り返り、素早くその手に視線を走らせた。彼女が持っているのはルシーというキャラクターのうさぎの耳のカチューシャだ。そちらは女性向けでリボンがついている。私は男性向けのうさぎ耳にシルクハットのカチューシャを引っつかむと、隣の独尊君に押し付けた。
「独尊君はいこれ!この前にネズミィーキャラではこれが一番好きって言ってたよね!」
「そんなこと言ってな……」
「言ってたよね!」
浮かべた笑顔で圧力をかけると、独尊君は素直にそのカチューシャを受け取った。花音ちゃんとの話題になりそうな言動はなるべくしておいた方がいい。同じうさぎのキャラクターならそれで話が盛り上がるかも。できることは何でもしておくべきだ。なにせ独尊君は今日一日で「赤の他人」から「友達」までランクアップさせなければならないのだ。
「どー君うさぎにするの?私はこっちにしようかと思ってたんだけど……」
「姉ちゃんの好きな方にすればいいと思うよ。何でも似合うから」
そう言われて、唯我さんは犬の耳のキャラクターのカチューシャに決めたようだ。カチューシャコーナーの前はまだ賑わっているので、唯我さんは一歩下がる。私は振り返って藍本さんと瀬川君を呼んだ。
「二人ともさっさと決めちゃおう」
手招きすると藍本さんがこちらにやってきた。仕方なく瀬川君もそれに続く。
「あたしこの犬のやつにします。帽子かぶってる方」
「じゃあ私とお揃いだね」
椏月ちゃんのチョイスに唯我さんが反応する。二人はそのまま談笑を始めた。色んな店の者同士仲良くなるという目的は建前だったが、どうやらそれも上手くいってるようだ。と、ここで唯我さんがナイスなことを言った。
「そういえば、どー君と花音さんもお揃いだね」
鏡の前でカチューシャをつけて見栄えをチェックしていた花音ちゃんは、突然出た自分の名前にそちらを振り返った。
「そうですわね。でも何となくわかりますわ。兵藤さんうさぎみたいですもの」
私はその言葉の意味を理解にしかねたが、どうやら他の三人もそうだったらしい。唯我さんと独尊君と椏月ちゃんは一瞬「?」浮かべたが、深く追求はせずに別の話題に移った。
せっかくのチャンスだったのにあまり話題が広がらなかったことを悔やみながら、私はカチューシャコーナー の前にいる二人に視線を戻した。ちょうど藍本さんがネズミの耳のカチューシャを手に取ったところだった。それはこのネズミィーランドのメインキャラクターだ。
「藍本さんそれにするんですか?」
「一番普通かなと思って」
「一番人気ですしね。種類も多いですし」
さすがメインキャラクターだけあって、ネズミ耳はカチューシャの種類も多い。他のキャラクターは女性向けと男性向けの二つしか用意されていないのに対し、ネズミ耳はリボンや花がついていたり帽子やモチーフが付いていたりとデザインが様々だ。その中でも藍本さんは何の飾りもついていない、一番ノーマルなやつを選んだらしい。
「瀬川君は?」
「僕はなくてもいい」
「せっかくみんな付けてるんだから瀬川君も付けようよ」
私は適当にネズミ耳に青い三角帽子が付いているカチューシャを手に取り、それを瀬川君に押し付けた。
「せっかく来たんだから楽しまなきゃ損だよ。テンション上げてこ」
半ば無理やり手渡すと、瀬川君は渋々カチューシャを受け取った。全員が選び終わったのを確認してレジへと向かう。会計を済ませ、買ったばかりのカチューシャで武装した私達は、気分を盛り上げて最初のアトラクションへ向かった。
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