今までのこと、これからのこと3
回想のきっかけは、国見さんの「私達が辞めたあとどんな依頼があったのか教えてよ」という一言だった。私は過去を振り返ってパッと思いついた依頼を口にする。
「ちょっと大変だったのはお屋敷に宝石を盗みに行く依頼とかですね」
「へぇ、けっこう大きな仕事じゃん」
「もともとの依頼は、婚約指輪にこんな大きな宝石がついたやつを用意してたけど盗まれちゃったから取り返してほしいってもので、警備員に追い掛け回されるは乗り込むのは私一人きりだわで、大変だったって思い出しかないです」
「瀬川君とか絶対そういう依頼加わらないよね」
「瀬川君は家帰って寝てましたねその時。びっくりだったのはその依頼人密輸か何かで捕まっちゃって、朝のニュースに出てきたんですよ。顔見て、あ、この人!って」
「なにそれやば!それでどうなったの?」
「後日その婚約者が店に乗り込んできて、あなた達がチクったから捕まった!って」
「怖すぎ。大丈夫だったの?それ」
「女性一人でしたし暴力沙汰にはならなくて、店長が適当なこと言って帰ってもらいました。でもその後その依頼人脱獄したらしくて」
「まじか。……って、まさかそれ」
「たぶんそのまさかです。私は全く関わらなかったから知らなかったんですけど、脱獄に手を貸したの、何でも屋だったんでしょうね」
「けっこうやばい仕事もしてるもんね〜。盗みもだし、他店舗では死体の処理とかもあったらしいじゃん」
その後に実際に殺人の依頼を受けたのだが、これは国見さんには話さないでおこう。私が直接手をくだしたわけでは無いにしても、きっとショックを与えてしまうだろう。あの依頼は深夜さんと出会った貴重な依頼でもある。
「やっぱり裏は真っ黒な会社なんだなぁと思いますね」
「他にはどんな仕事があったの?」
「他には……その後すぐに白虎店との共同での仕事がありまして」
「へぇ!白虎店!店長が代わりたての頃に行ったきりだなぁ」
「依頼は指定の人物の捕獲だったんですけど、」
本当は捕獲か殺害だったが、この辺はまぁ濁しておく。
「その相手が凄腕の護衛を雇っててボコボコの殴り合いになって」
「まじ?大丈夫だったの?」
「その護衛が人間を超越してるレベルで強すぎてほんとに走馬灯見た程だったんですけど、私の顔見知りが参戦してくれて。その子がけっこう強かったんで一命を取り留めたって感じですね」
「うわー、そんな仕事もあるんだ。何でも屋怖っ。命一つじゃ足らないじゃん」
あの依頼は初めて白虎店へ行き、藍本さんと知り合い、鳥山さんと仲良くなるきっかけになった依頼だ。今ではだいぶお世話になっているお兄さんや鈴鹿さんと初めて顔を合わせたのもこの時である。切り裂きジャックであるジェラートさんに会い、北野さんと再会した、盛りだくさんな依頼だった。
「それで、この護衛が実は私と歳の近い女の子で、次の仕事でばったり会ったんですよ。尾行の依頼でネズミィーランドに来てて」
「えっ、それ大丈夫なやつなの?」
「ええ、殴り合いの後にちょっと仲良くなって、謎にみんなでお喋りとかしてたんですよ」
「へぇ〜。まぁ味方につくと安心だよね。てかネズミィーランド行ったんだ。いいなー、タダネズミィー」
「タダで行けたけど仕事だしそんなに楽しいものじゃなかったですよ。一緒に行った人店長だし」
「えぇ、何で店長。あの人目立つでしょ。一番尾行に向かないじゃん」
「あんまり行ったことないって言ってて、楽しそうにしてましたよ」
あの依頼も面白かった。依頼人がストーカーなのかと思っていたら、尾行対象がストーカーだったのだ。しかもその相手は白虎店の鈴鹿さん。最後、瀬川君と二人でびっくりしたっけ。
「あ、そういえば、依頼ではないんですけど、その後玄武店の人達に会って」
「玄武店ってことは、たしか忠彦さん?店長の」
「いえ、陸男さんっていう若い人が店長になってて。その人と、妹さんの花音ちゃんと知り合いました」
「うわ〜知らないなぁ〜。私が辞めた後に変わったのかな?」
「そうだと思います。店長になりたてだって言ってたので」
「あれ?ちょっと待って?花音ちゃんって子私わかるかも。店長に求婚してた子じゃない?」
「あ、その子です」
「二、三回見たことある。たまに仕事関係で朱雀店に来たときに。すごいよね、あの子」
「まだ頑張ってますよ。今となっては私はけっこう仲良くて。来週何人かと一緒にネズミィーランド行くんです。店長は来ませんけど」
「そうなんだ。まぁ歳近いしね。恋愛相談乗ってあげなよ」
国見さんは冗談っぽく笑ったが、もうすでに乗っているのである。しかも私くらいしか相談する相手がいないらしく、それはもうバリバリのガチガチに乗っている。
一度コーヒーに口をつけ、次にあった出来事を思い出す。たしか社長である一郎さんと偶然知り合って、その後は……そうだ、説明会があったんだ。
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