Boys be ambitious5
「そういえば二人とも何しに来たの?」
どうやら店長も彼らがここへ来た理由を知らなかったらしく、開口一番そう尋ねた、その問いに兄弟は目を輝かせ、身を乗り出して答える。
「冒険しに来たんだ!オレたち二人で来たんだぞ!すげーだろ!」
「電車とバスで来たんだよ。二人だけで」
褒めて褒めてという顔をする兄弟に、店長は「ああ、うん、すごいね」とかったるそうに答えた。
「来るのはいいけど親には言っといた方がいいと思うよ」
「秘密の作戦だったんだよ!」
「お父さんとお母さんには内緒なんだからね」
この二人がどこに住んでいるのかは知らないが、電車を使ったということは結構遠くに住んでいるのだろう。子供だけで遠くへ行くなんて危ないと思う。だがこの兄弟はそれをやってみたかったのだろう。
「それより蓮太郎どこ行ってたんだよ。せっかく来たのにこんなオバサンしかいなくってさ!」
「バカでメガネのオバサン」
兄は私を指さして言い、弟はその隣でボソッと呟いた。私はこちらに向けられた人差し指をその手ごと払い落とす。
「オバサンって言うのやめてって言ったでしょ」
兄は不満げな目をこちらに向けながら叩かれた手をわざとらしくさすった。
「オバサンはオバサンだろ」
「こうねんきのオバサンはキレやすい」
「もー、店長何か言ってやってくださいよ!」
私が何を言っても聞きやしない。店長に助力を求めたが彼はスマホから顔を上げたところで、私は思わずため息を吐きそうになった。
「ごめん全然聞いてなかった。どうしたの雅美オバサン」
「しっかり聞いてるじゃないですか蓮太郎オジサン」
結局私はため息を吐き出した、あまりムキになっては精神面に悪い。私は気を取り直して兄弟に目を向けた。
「それで結局この子達何なんですか?知り合いのお子さんとか?」
私の問いに店長は少し意外そうな顔をする。
「まだ自己紹介してなかったの?」
「しましたよ私は。でもこの二人は名前も教えてくれないんですよ」
二人の名前もどこから来たのかも何回か聞いているのだが、結局教えてくれず仕舞いだ。挙句の果てにはオバサンなんて呼んでくる。
店長は一番近い位置にいた弟の頭にぽんと手を乗せ、彼らの紹介をした。
「こっちが弟の来輝(らいき)そっちが初輝(はつき)。確かニ年生と一年生」
「で、なんでここに来たんですか?」
「さぁ、暇だったからじゃない?」
店長の答えを初輝君が「ちっげーよ!」と否定した。
「作戦だったんだよ!」
「蓮太郎をびっくりさせようと思ったんだ。電車の時間もボクらだけで調べたんだからね」
兄の言葉足らずを弟が補完する。今日ずっと思っていたが、兄の初輝君より弟の来輝君の方が賢そうだ。
「 びっくりしただろ?」
「うん、すごくびっくりしたよ」
店長の答えに初輝君は満足そうに胸を張った。
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