Boys be ambitious4




店の中に飛び散ったファイルを本棚の前に集める。床の上で一旦日付順に並べ、それを本棚に収納する。ファイルから飛び出してしまったページもいくつかあり、元通りにするまでに一時間もかかった。その間店長は一度も店に戻らなかったが、いったい何をしているのか。

最後の一冊を本棚にしまい、達成感から肩で息をつく。ファイルの片付けが終わり、私たち三人は手持ち無沙汰になる。振り返ると兄弟はもじもじしながら立っていた。

「そういえば、結局君たちは何でここに来たの?」

先ほどの会話から店長の知り合いということはわかったが、ここに来た理由は分からないままだ。こんな子供だけで一体何をしに来たのだろう。

「お、お前なんかには言わねーもーん。バーカバーカ」

兄の方がそう答えたので、私はそれにため息を返した。教えてくれないのならそれでもいい。後で店長にでも聞こう。

ファイルの片付けも終わってしまったのでこの二人にやってもらうことがもうない。私は二人の対処に困ったので店長の指示を仰ぐことにした。さすがにもうイタズラしないだろうと判断して、二人はお店に置いたまま裏へ向かう。

台所の前を通り、トイレの前を通り、洗面所の前を通り、その全てに店長の姿がないことを確認する。となると二階だろうか。また外出した可能性も考えて、一度瀬川君に聞いてみよう。私は瀬川君の部屋のドアを叩いた。

「どうしたの?」

「店長知らない?まさか出かけてはいないとは思うんだけど……」

ドアを開けた瀬川君に用件を伝える。彼はほとんど考え込まずに答えた。

「ニ階にいると思うよ。たぶん仕事中だと思うけど呼べば来るんじゃないかな」

私は瀬川君に礼を言い、彼の部屋を離れた。ニ階へ延びる階段の前に立ち、大きな声で店長を呼ぶ。

「店長~~!」

すぐにニ階で物音がして店長が降りてきた。こんな時間に仕事をしているなんてここ、数日依頼は来ていないはずだが。

「どうしたの?」

「片付け終わったんですけど、あの二人どうしたらいいんですか?」

店長はパチリと一回瞬きをしてこう呟いた。

「あ、忘れてた」

「忘れないでくださいよ!」

「ごめんごめん、ちょっと別のことを考えてて」

店長はポケットからスマホを取り出すと、何やら操作をしながら店へ向かった。他に行き場もないし、私もそれについて行く。

店では兄弟がちょこんとソファーに座っていた。私が座らせた時はすぐに立ち上がってギャーギャー落ち着きがなかったのに。店長の指定席である真ん中の二人掛けのソファーが兄弟に取られていたので、店長は普段瀬川君が使っているソファーに座った。私はいつも通りカウンターに一番近いソファーに座る。




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