めんどくさい程遠回り4




ファーストフード店の涼しさを堪能しながらバーガーにかぶりつく。ポテトをつまみ、ストローでコーラを啜った。お腹もいっぱいになったしこれからどうしようかと考えたところで、目の前にトレーが置かれる。たしかにサイズは小さいがここはテーブル席なのにと驚いて顔を上げると、イスに座ったところの鳥山さんと目が合った。

「あんたこんな所で何してるのよ。仕事は?」

「いやー、ちょっと……」

苦笑いで誤魔化そうとすると、鳥山さんの目付きが鋭くなる。私は観念して正直に答えた。

「実は店長とケンカしちゃって……」

「ケンカ?そんなんで逃げてきたの?」

「かなり酷いこと言っちゃったし、店にいられなかったというか……」

「どうせ怒ってないわよ。っていうかいつも甘やかされてるんだからたまにはガツンと言ってやればいいのよ」

鳥山さんはそう言うと、とてつもなく辛そうなバーガーにかぶりついた。パンと肉の間から溢れ出る真っ赤なソースを見て、私は口から火を噴くような気分になった。

「でも、たぶん私が悪いんだろうし……。謝りたいんだけど帰りにくくて」

「謝んなくてもいいわよわざわざ。何食わぬ顔で戻ってやればいいの」

「でも……」

「でももクソもないわよ!店長とケンカしたくらいでグジグジすんな!」

「うぅ……」

と言われても。もし白虎店だったなら他の従業員と過ごして時間が解決してくれるのを待てばいいかもしれない。だが、瀬川君が常に自室にこもっている朱雀店では、店に私と店長しかいないのだ。もし店長が怒っていた場合、それはちょっと気まずいのではないだろうか。

「そういえば、鳥山さんは何でここに?」

「仕事の帰りよ」

「も、もしこのあと暇ならさ、店長の様子見にちょっと店に……」

「何で私がそんなことしなきゃなんないのよ」

「ですよね」

私は「はぁ」とため息をついた。バーガーをコーラで流し込んだ鳥山さんは、少し言いにくそうに口を開く。

「あんたが何言ったのか知らないけどさ、別に怒ってないわよきっと」

「怒ってるかもしれないじゃん」

「怒ってないわよ。だってあいつ、何だかんだ心広いじゃない」

鳥山さんはプイッと顔をそらした。しかしすぐに目線だけ私に向けて、「ほら、グズグズしてないで早く行きなさいよ」という顔をした。

「ありがとう鳥山さん。私もう行くね」

私はトレーを持って立ち上がった。勢いのままファーストフード店を出る。太陽の日差しはまだまだ暑かったが、店を飛び出した時よりは和らいでいる気がした。




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