世界はとても窮屈だ11
四月十八日。土曜日。午後六時半。一人の若い男性が店にやって来た。やたらに高いテンションと履歴書を持って。
「表の貼り紙を見て来ました!ここでバイトさせてください!」
俺と向かい合うように来客用のソファーに座った男は無駄にでかい声でそう言った。空がテーブルに二つお茶を置いてカウンターへ消えて行った。と思ったらひょこっと顔を出してこちらの様子を窺っている。
「バイト希望?」
「はい!やる気だけは十分にあります!」
履歴書を見ると、名前は上根定秋(かみねさだあき)と書かれていた。
「君いくつ?学校は?何曜日何時から来れる?」
「年は十九です!大学は行ってません、高卒です!あとは、えぇと……すみません、もう一回言ってくれませんか?」
大丈夫かこいつ。やる気だけは本当にあるようだが。……いや、待てよ。この店は今まで俺や空みたいな奴しかいなかったから、こういう馬鹿が一人くらいいた方がいいのかもしれない。
ちなみに、大学に進学しなかったため毎日暇で、月曜日から日曜日までどの時間でも出勤できるらしい。これは便利だ。この店で唯一動ける空は早い時間に帰ってしまうし、空の代わりに夜はこいつに動いてもらおう。
「うん、とりあえず採用。明日の昼から来て」
「ありがとうございます!……ところで」
上根は店内をキョロキョロと見回すと、それはそれはいい笑顔で言った。
「今日は店長さんはどちらに?」
カウンターで空が吹き出したのがわかった。
「店長は俺だけど何か文句あるか?」
「そ、それは失礼しました……」
これからしばらくは、いちいちこのやり取りをしなければならないのだろうか。ついため息がもれた。
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