無限ループの回答9
数日後、あの犯人達が内藤さんを狙った理由がわかった。彼らはとある高校の教師で、同じ学校の教師の一人にいじめを行っていたらしい。日頃のストレスをぶつけていたのだろう。数人でいじめをしていたので罪悪感も薄らいでいたようだ。いじめの対象が教師なら、その教師が我慢すれば、生徒と違って問題にならない。
ところがいじめ行為の末、誤ってその教師を殺してしまったらしい。日頃から殴る蹴る等の暴行を加えていたのがだんだんエスカレートした結果のようだ。遺体を前にして彼らが出した答えは、「とりあえず山に埋めよう」というものだった。しかし遺体の処理をしている最中、趣味で山登りをしていた内藤さんが通り掛かる。内藤さんは道から外れた場所にいる男性を見て、野糞でもしているのかとたいして気にも留めなかったらしいが、相手は遺体を埋めている所を見られたと勘違いしたらしい。それで犯行に及んだようだ。
今回、僕らの目の前で直接内藤さんを襲った理由は、内藤さんが遺体のことを僕らに喋ったと思ったのだそうだ。そうなると彼らは僕らまで口封じしなければならない。どうせ殺すなら正面からぶつかって一気に片付けようと思ったらしい。ただ彼らにとって誤算だったのは、この店の従業員がやたらに強いことだったのだが。
報告書に誤字脱字がないかもう一度目を通し、僕はそれを黄龍に送信した。黄龍という場所がどんなところなのかほとんど何も知らないが、こうして報告書を送っているということは何でも屋の本部、元締め的な存在なのだろう。気が向いたらまた調べてみようかと思う。
僕はきっとこの仕事を楽しんでいると思う。学校で授業を受けている最中、家で夜布団に入る前、僕は早く仕事に行きたいと感じる。それはきっと、この場所が僕にとって居心地のいいものになっているからだろう。
姉と弟が勝手に家を出て行って、予想通り母は怒り狂った。だがそれはすぐに鎮まって、今は前より更に家に帰ってこなくなった。反対に父は家に帰る回数が増え、僕が店にいる時間はだんだん伸びていった。
姉からは、あれから一度も連絡がない。もともとそんなに仲がいいわけではなかったから、連絡がないのも仕方がないと思う。姉のことだから元気にやっているだろう。
僕はずっと姉と自分を比べながら生きてきた。僕の視野は本当に狭かったと思う。今ならちゃんと姉を瞳に映して、姉のいい所を探せるような気がする。
僕はこの仕事がだんだん好きになっている。相変わらず、上根さんは一人で騒がしいし、久世さんは読書ばっかりしているけど。でも僕はそんな朱雀店だから好きになれたんだと思う。
あの時この店に誘ってくれた姉に僕は感謝したい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます