それを奇跡と呼ばず何と呼ぼう
こんにちは、荒木雅美です。年は十七。容姿は少し茶色めいたショートカットに高校の制服。今日は整髪料も使わず、メイクもすっぴん風のごく薄いものにして、清潔感に気を使っているつもりだ。
現在の時刻は午後五時四十五分。今日は六時にここへ来るように言われていたが、緊張のため時間前行動が過剰になってしまい、十五分も早くついてしまった。一応放課後の時間をファーストフードで潰してきたのだが、あまり意味はなかったらしい。こちらから出向く場合は時間より少し遅れるくらいがちょうどいいというが、近くのコンビニで時間を潰してきた方がいいだろうか。
「……やっぱり出直そう」
そう呟いて古びた引き戸から一歩下がった瞬間、すぐ後ろから「うおっ」という男性の驚いた声が聞こえた。
「すみませんっ」
慌てて振り返り謝ると、自転車に乗った大学生くらいの男性が胸を撫で下ろしていた。私は一歩奥まった所にいたので、道を走っていた男性からしてみれば私が突然出て来たように見えたのだろう。危うくぶつかるところだった。
「いや、こちらこそごめん。もしかしてお客さん?」
「え?」
てっきりこの道を通り過がっただけなのだと思っていたのだが、どうやら男性はこの店の従業員らしい。店先の端に設置してある自販機の横に自転車を停めている。
「たぶん中に人いると思うけど。まぁ、入りにくいわな」
男性は苦笑しながら引き戸に手をかける。この人がここの従業員だというのは、私にとってラッキー以外の何物でもない。私は店の中に一歩足を踏み入れた男性に慌てて言った。
「あの、私バイト希望で、今日は面接に来たんですけどっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます