知りたくないわけじゃないけど2




「はい、これが見取り図ね」

そう言って店長は私に地図と数枚の紙が入ったクリアファイルをわたした。

「ちなみに調べてくれたのはリッ君です。感謝するように」

瀬川君に「ありがとう」と言うと、「いつもの事だから」と返された。翌日、私達三人は来客用のソファーに座って、槙島さんの依頼についての話をしていた。神原さんは相変わらずカウンターでこっちを見ている。

「なぁー、店長はーん。ボクも混ざったらあかん?いい加減寂しいわぁ」

「無理無理。閻魔は僕のこと見張ってるんだから暇じゃないでしょ」

神原さんは「ケチー」だの「鬼ー」だの言っていたが、しばらく無視していると黙った。まぁ、店長も瀬川君もガン無視してるし、私さえ関わらなければ神原さんって可哀相な状態になっちゃうんだよね。

「そういえば、今回は瀬川君も参加なんですね」

こういう潜入系の仕事に瀬川君が参加するのは珍しい。高嶋さんの宝石の時だって、有無を言わさず私が駆り出されたし。

「うん、今回はちょっと訳あって三人でするから。だから僕も雅美ちゃんについていくし」

「だったら店長が直接指輪取りに行ってくれればいいのに」

「だから訳があるんだって。今から説明するから」

店長はまず、テーブルの上に見取り図を広げた。

「裏口から入って、こうこうこう行ってこの階段を上がってこう行ったここが社長室」

次にファイルからもう一枚紙を取り出す。

「で、社長室にこのタイプのロックがかけられてるんだよね」

私もその紙を見てみたが、機械の設計図やら変な数字の羅列やらで、全く意味がわからなかった。

「裏口とかにももちろんロックはかけられてるけど、その辺はレベル低いからぶっちゃけどうにでもなるんだよね。問題はこれ。社長室のロック。なんかこの社長さ、自分がかわいいのか知らないけど社長室にだけめちゃくちゃハイクオリティな鍵つけてて」

店長の説明によると、そのロックを外部から操作して解除して社長室に入ったとしても、一分以内に鍵を元に戻さないと、再びロックがかかって警備会社と社長の携帯電話に通報されるらしい。つまり、その鍵にとって異常な状態が一分続くと社長にバレてしまうのだ。

「だから僕がついて行くの。まずロックを解除して、雅美ちゃんだけ社長室に入って僕が外からまたロックをかける。で、宝石を見つけたら合図してもう一回ロックを外す。雅美ちゃんが出たらまたロックをかける。理解した?」

「バッチリです。つまり私は一度社長室に取り残された状態になるわけですね」

「ちゃんと出してあげるじゃん」

というか、ロックを解除するとかまた掛けるとか言ってるけど、そんなに簡単にできるものなの?私、ホントに捕まったりしないよね。

「で、リッ君の役目だけど、いつも僕が外で待機してたけど、今回はそれがリッ君の仕事。できるよね?」

瀬川君は相変わらずの無表情で「はい」と答えた。

「雅美ちゃんも、何かあったらすぐリッ君に連絡つくようにしといてね」

「はーい」

瀬川君の番号、スマホの短縮ダイヤルにでも登録しておくか。




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