生きる喜びとは主役を演じることを意味しない4
「いないね……」
「そう簡単に見つからねーよ。だいたいこいつ何の特徴もねぇし、覚えてる奴なんていねーって」
「むぅ~~……」
やはり聞き込みではダメそうだ。もう何十人もに声をかけたて画像を見せたが、この男性を見たという者はいなかった。私達は途方にくれて街をとぼとぼと歩く。時刻は一時半になっていた。
「……なぁ、やっぱ無理だよ。諦めようぜ」
「でも店長さんに怒られちゃうよ?」
「それは仕方ねぇよ……。だって俺のミスだもん」
そんなに簡単に諦めるなよなぁ。頑張ってる私が馬鹿みたいじゃないか。隣を歩く独尊君の背は少し丸まっていて、その顔にはすでに諦めの色が浮かんでいた。そりゃあ、失敗を認めて店長に怒鳴られる方が楽なのは、もちろんそうだろう。
「唯我さんに失望されちゃうよ?」
「それはぜってー嫌だ」
「……シスコン」
「うるせー」
独尊君はぷいっとそっぽを向いた。キャラ付けでなく、本当にお姉さんのことが大好きなようだ。それでいて、その感情が他人にとって異常である事をきちんと理解しているらしい。
それはとにかく置いといて、探し人が本当に見つからない。あの男性が見つかる気配がこれっぽっちも感じられない。これには私も内心かなり焦っている。「探しに行こう」と言って引っ張ったくせに、全く役に立っていない。これじゃあ完全に口だけ野郎である。
「仕方ないか……」
私は最終手段を取る事にした。私の呟きに、独尊君が顔を上げてこちらを見る。
「あそこに頼ろう」
私の言葉に彼はわかりやすく首を傾げた。
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