青春は駆け足で4




「性格はアレだったけどぉ、ネイルはまぁまぁかなぁ~」

璃夏は目の前に手をかざし、キレイにマニキュアがぬられた爪を眺めた。ピンク色の爪に、キラキラとストーンが輝いている。

「でも、ほとんど立花さんがやってたな。まぁ、ほかの奴らは素人だから仕方ないんだろうけど」

「麗雷も似合ってんじゃん。麗雷ってあんまり着飾らないからさぁ」

「ちゃらちゃら付けるのは好きじゃないのよ」

そう言って自分の爪を見る麗雷。流雨が尋常じゃないやる気を出して、とても豪華に作られていた。黄色を基調としたネイルは麗雷に似合っている。家の状況だけでなく、流雨自身にも才能があるのかもしれない。

「さっ、次行こっか!さっさとしないと店番の時間になっちゃうし」

結歌はパンフレットをパラパラとめくった。

「そういえば麗雷さ、明日のライブ出るの?」

パンフレットの一番最後のページを見て尋ねる結歌。そのページには、生徒達によるライブに関することが書かれていた。これは毎年恒例の行事で、放課後グラウンドの特設ステージで、一日目には漫才、二日目には各自結成したバンドで音楽を披露するのだ。

「そんなの出ないわよっ!断った断った!」

ブンブン手を振って否定する麗雷。実は麗雷は、隣のクラスの数人の女子生徒達にバンドのボーカルを担当してくれないかと誘われていたのだ。

「まぁ断るとは思ってたけどさ。でもさぁ、高校最後の文化祭くらい、はっちゃけちゃえばいいのに」

「イヤよ。私目立つの好きじゃないし」

「頭金髪にしてる奴がよく言うよ」

「別に目立ちたくて金髪にしてるわけじゃないわよ」

ぶつぶつ言う麗雷だったが、彼女が髪を金髪にしている理由はとても単純だ。ただ単に、他のどの色よりも金色が似合うと思っている、というだけである。何せ彼女は小学生の時分から髪を染めていたのだ。

「まぁ、金髪じゃなくなったらもう麗雷じゃないしな」

「麗雷の髪が黒いところなんて想像できない」と言って凪砂は笑った。

「まぁ、璃夏はぁー、璃夏の色とカブってなければ何でも良いけどぉ?」

そう言って璃夏は、自分の栗色の髪をかきあげた。

「茶髪なんて絶対にしないわよ。茶髪ですっごいキライな奴がいるの」

誰を思い浮かべたのか、麗雷は苦虫をかみつぶしたような顔をした。それには、結歌と凪砂も苦笑を浮かべる。

「ああ……"花音さん"だろ」

「そんな名前三秒で忘れて。呪われるわよ」

麗雷は気を紛らわすようにパンフレットを開いた。

「ホラ、時間ないんでしょ?さっさと次行くわよ」




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