青春は駆け足で



九月一日の六時間目。場所は私立聖華高校三年A組の教室。実行委員の女子生徒は、黒板に【文化祭の出し物について】と書き、クラスメートの方を振り返った。

「それでは皆さん、何かやりたい事はありませんか」

「はい」

ザ・野球部!といった雰囲気の坊主頭の男子生徒が右腕を真っ直ぐ挙げている。

「高野君、何かありますか」

クラス中が注目する中、男子生徒ーー高野康介(たかのこうすけ)は言った。

「是非、ネコミミ喫茶をやりましょう」

「却下です」

司会の女子生徒は即答し、何事もなかったかのように続けた。

「何か提案のある人はいませんか?無いのなら梶先生のフランクフルトになりますが」

クラス中の雰囲気が「それで良いんじゃないか」と言っている。教室の後ろで様子を見ていた担任の梶正太は、自分の生徒達のやる気のなさに苦笑を浮かべた。

「はいッ」

が、そこで再び康介が手を挙げた。

「高野君、何かありますか」

司会の女子生徒は若干うんざりしながら彼に尋ねる。

「是非、メイドカフェをやりましょう」

「それでは、このクラスはフランクフルトの屋台を出すことにします。皆さん、それでいいですね?」

クラス中からパラパラと返事が返ってくる。康介は明らかに落ち込みながら席に着いた。

それを横目で見て、鳥山麗雷は呟いた。

「……バカみたい」



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