夏休みのご利用は計画的に3
「うわー、ギリギリ」
店長があくびをしながら時計を見た。壁にかかった時計は、長針は九と十の間、短針は六を指していた。つまり現在六時四十八分だ。
「つ、疲れた……」
私は若干泣きそうになりながら、テーブルに突っ伏した。このまま寝てしまいそうだ。
「何とか終わりましたね……」
さすがの瀬川君も眠そうに目を擦っている。
「とりあえず、見苦しいから深夜起こすか……」
そう言って深夜さんのポニーテールを引っ張る店長。まぁ、確かにお客さんにこの姿をさらすのはどうかと思うが、もっとマシな起こし方があったのでは。
「あ゛~~髪引っ張んなクソヤロー……」
ようやく起きた深夜さんは、頭をガシガシとかいて目を擦った。よくも一人で寝てくれましたね……と言いたいところだが、深夜さんが寝た後は静かで、実にやりやすかった。
「風呂入る」
「どーぞ」
そう一言だけ言って、店の奥に消える深夜さん。私もお風呂入りたいなぁ……。というか寝たい。
全ての宿題が終わっているか再確認し、紙袋に入れ直している間に金元君がやってきた。
「おはよーございまーす!宿題取りに来たぜっ!」
このまま直接学校に向かうらしく、金元君は城ヶ崎中学の制服を着ていた。金元君の後ろには、おしとやかそうなお母さんがついている。が、このお母さん、今回の依頼を見るからに、金元君に相当甘いんだろうなぁ。
「マジで終わらしたのか!?すっげーなお前ら!」
「ちょ、あんまりデカい声で喋らないで……」
耳を押さえる店長。しかし金元君はお構いなしだ。
「おー!おー!お━━!すっげー!全部できてる!」
受け取った宿題をぺらぺらとめくる金元君。朝からテンション高いなぁ……て、私らが低いのか。
「しっかしこんな問題よく出来たなー。そんな頭してっから、絶対オレより馬鹿だと思ってたよ!」
まぁ、店長の見た目があまり賢そうじゃないのは認めますが。そんなハッキリ言わなくても。子供は怖いもの知らずだなぁ。
「そう思ったなら、尊敬する人第一位に入れといて」
金元君はついて来たお母さんにお金を払わせて、元気よく出ていった。
そのあとお風呂から上がった深夜さんが出てきて、ソファーにどっかり座ってテレビを付けた。
「最近切り裂きジャックの話ばっかだよなー」
この時間だからニュースしかやっていないらしく、深夜さんはころころチャンネルを変えまくった後、結局テレビを消した。
「レン、朝飯作ってくれよ」
「あのねぇ、深夜は爆睡してたけど、僕は全く寝てないんだけど」
「お前一週間くらい寝なくても平気だろ」
「深夜は僕を何だと思ってんの?」
何だかんだ言いながら、結局台所に向かった店長。まぁ、私もお腹空いてたし店長の助けに入らなかったんだけど……ごめんなさい店長。でも多分瀬川君も同じだと思うから。
そんな感じで、やけに長かった八月三十一日はようやく終わりを向かえた。ちなみに私はそのあとがっつり寝ました。応接室のクーラー付けてもらって、毛布借りてソファーで爆睡した。瀬川君は自分の部屋に帰ったけど、どうやら机で寝てたみたい。深夜さんはしばらくしたら帰った。店長はホントに寝てないみたいだけど(私達が店番できないから)、あの人マジで一週間くらい寝なくても大丈夫なんじゃないかな。
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