うさぎの気持ち2




次に目を覚ました時には窓の外はすっかり暗くなっていた。

横になったまま耳を澄ましてみたが、家しんと静かだった。家族はみんな寝てしまったのだとわかった。

ゆっくりと上体を起こす。頭がぼーっとした。しかし寝過ぎて頭が痛い。もう一度横になる気にはなれなかった。

どうやらまだ熱が引いていないみたいだ。風邪薬を飲んだのに熱っぽいということは、もしかして本当にインフルエンザだろうか。熱が高いので今日はお風呂は止めておこうと思った。

喉の渇きを覚えたので、何か飲もうと一階に下りる。熱はあるといっても先程よりは随分とマシだ。

コップ一杯の水をぐいぐいと飲みほし、リビングのソファーに座る。テーブルの上に出しっぱなしになっていた体温計で熱をはかった。三十八度五分だった。

静かな空間に寂しさを覚えてテレビをつける。こんな時間じゃろくな番組はやっていなかった。一日中寝ていたのでもう眠れる気がしない。頭痛もする。私は仕方なく面白くもない番組を見続けた。

一時間程そこにいたが、だんだん気分が悪くなってきたような気がする。何だろう。お腹がむかむかする。私は動けるうちに部屋へ戻ることにした。

手すりにしがみつきながら階段を上る。先程まではなかった吐き気を覚えた。なんだか淋しくて、涙が出そうになる。熱が出ると人って弱くなるのかな。

部屋に戻ると、真っ暗の中にケータイのディスプレイがちかちかと光っていた。メッセージアプリの通知だろう。

どうせどうでもいいメールだろうと思ったが、今の私は無視することができなかった。大事なものを落としてしまったみたいに寂しくて、何かで気を紛らせたかった。

アプリを開封してみると、差出人は店長だった。

【熱下がらなかったらインフルエンザかもしれないから医者に診せてみて】

インフルエンザ……かもしれないとは私自身も思うけれど。

でも明日は日曜日だ。医者はどこも休みだろう。

受信時間を見ると二時間前だった。今返信しても店長は起きているだろうか。

私は少し迷ったが、日曜日は医者は休みでは?という疑問を書いてメッセージを送信した。今は寝ていても朝に読んだらいいもんね。そう思ったが、しかしすぐにメッセージが返ってきた。

【知り合いに医者いるからそこ行って】

その文面の下に地図の画像が張り付けてある。ここからそんなに遠くない。

知り合いに医者がいるなんて、なんて便利なんだろう。顔が広いと困った時頼れる人が増える。交遊関係は狭く深く派の私は少しだけ羨ましくなった。

私はケータイを操作して【明日行ってみます】と返事をした。ケータイを充電器にさしてイスに座った。

明日お母さんに頼めば車を出してくれるだろうか。もしこれがインフルエンザというのなら、医師の処方した薬を飲まなければならない。

今はインフルエンザウィルスが蔓延しているようだから、どこで移されても不思議ではない。おそらく学校か、駅か、スーパーか、とにかく人が多いところでウィルスをもらったのだろう。最近はマスクもしていたが効き目はない。 

私は深いため息をついた。何だか熱がどんどん上がってきている気がする。吐き気も増している。気持ち悪い。

寝れる気は全然しなかったが、他にどうしていいかわからなくて、私は布団に潜り込んだ。頭からすっぽりと布団をかぶる。

寂しい。この世界に自分一人しかいないみたいだ。私、このまま死んじゃうのかな。なんだかウサギになった気分だった。




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