もはやこの程度で驚いてはいられない3
「店長!会議いいんですか!?」
店長は道を間違えることなく真っ直ぐロビーに向かい、そのまま外に出た。どうやら駐車場に向かうらしく、完全に帰路についてしまう前にと私は尋ねてみた。
「いいのいいの、どうせ陸男が記録持って来てくれるんだから」
「そういう問題じゃないですよぅ」
私には朱雀店で働くアルバイトとして店長を会議に出席させる義務があるわけで……。別にそうしろって誰かに強制されたわけじゃないけど、やっぱり私的にも出席してほしいし……。
「雅美ちゃん、会議に出てほしいの?」
「だって店長だったら出るべきなんじゃないかと……」
口ごもってしまったが、店長だから店長会議に出る。私が言っていることは当たり前のことではないだろうか。
私の返事を聞くと、店長は今度は瀬川君の方を向いた。
「リッ君は?」
「僕はどっちでもいいと思います」
私は瀬川君の答えに耳を疑う。店長は満面の笑みで「リッ君さすが~」と瀬川君の頭をなでた。瀬川君はやはりその手を振り払う。
「瀬川君、いいの!?」
無表情の瀬川君に詰め寄ると、彼はその無表情を崩すもせずこう答えた。
「別に……。店長が会議に出なくても店は困ってないし」
瀬川君、何考えてんのかほんとわかんない!店が困らなくても出た方がいいに決まってるじゃん。だって「店長会議」だよ!?店長以外他に誰が出るっていうの!
「まぁまぁ、二対一で今日は行かないってことで」
そう言うと、店長は車のドアを開けた。そのままさっさと運転席に乗り込んでしまう。
「今日だけですよ……」
不満な気持ちを声に滲ませながら、私も助手席のドアを開けた。こうなってしまったら説得は無理だろう。瀬川君も店長派らしいし、それにもともと私に店長の説得なんて無理なのだ。
そこで私は気づく。瀬川君が車の外に立ったままなのだ。何してるんだろう……と思って、すぐに閃く。私は慌てて車内に突っ込んだ片足を引き抜いた。
「あ、ごめん、瀬川君も助手席派だった?」
仕事上では一応瀬川君の方が先輩なんだから、指定席は譲らないとね。私もいつも助手席に座るが、この席に座ってきた時間は瀬川君の方が長いだろう。
私は完全に助手席から離れて瀬川君にそこを勧めたが、彼は一向に座ろうとはしなかった。ここで、運転席に座ったまま様子を見ていた店長が口を開く。
「なら二人共後ろに乗ればいいじゃん」
その意見になるほどと納得して、私は後部席に乗り込んだ。すると瀬川君もそれに倣う。全員が座ったところで、店長はアクセルを踏んだ。
「じゃあ出発するよ」
私達三人を乗せた車はみるみる本部から離れてゆく。私は背後を振り返って小さくなってゆく建物を見た。
店長会議って何時からなのかな。休むときって何も言わなくてもいいのかな。まぁ、ただのアルバイトである私が考えても仕方のないことだけど。
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