てんやわんやで大団円6




「つまり、あなた達は美佳の依頼でここまで来たってこと?」

鈴鹿さんが私達に確認するように聞いた。私達、と表現したが、その問いは完全に私一人に向けられたもので、鈴鹿さんも瀬川君に聞いても無駄だと思っているのだろう。

「そうなんです。まさかこんなことになるとは思いませんでしたけど……」

私も瀬川君が進んで答えるとは思わなかったので、変な間が空かないようにそう答える。そして、私は改めて鈴鹿さんの隣に座っている鈴木さんを見た。

現在私達はあまりにも目立ちすぎたロッテリマを出て、近くのアクドナルドで話をしている。

その席順は、四人掛けのテーブルに、私と瀬川君が隣、私の前に鈴鹿さん、その隣に鈴木さん。白虎店の店長さんは近くのテーブルから椅子だけ持って来て、私と鈴鹿さんの間に座っていた。

ちなみに革口さんは、鈴木さんにボコボコにされた後、栗山さんに引きずられて行ってしまった。依頼人の鈴木さんがこの場にいる以上、私達はもう革口さんを追う必要はないと判断した。さんざん鈴木さんに殴られた革口さんだが、きっとこれから栗山さんに殴られるのだろう。

「遊宇火とは中学の時仲良くなってね。ほら、名前の順で仲良くなるってよくあるでしょ?それからずっと連絡取り合ってて……。で、最近変な男がつけてくるって相談されてさ。調べたら私と同じ大学の革口だったってわけ」

鈴木さんは親しみやすそうな笑みを浮かべながらそう説明した。私はなるほど、と納得する。そして鈴木さんをストーカーだと疑ってしまった自分を恥じた。

蛇足だが、鈴木さんは現在大学生だが、鈴鹿さんは大学に進学はしなかったらしい。どうやらこの仕事をしている人で大学まで行く人は珍しいみたいだ。社員さんなんかは高校もまともに出てない人もザラなようだ。

この仕事は学歴よりは個人の能力を重視しているし、本当にこの仕事を続けるつもりなら、大学に通っている暇があればひとつでも多くの仕事をこなしたいところだよね。私はただのアルバイトで、大学生が本業だけれど。

そういえば白虎店の店長さんに教えてもらったが、うちの店長も高卒らしい。でも大学に通っていたって言われた方が私はビックリしたかも。結局何を言いたいかっていうと、高卒でも店長になれるってこと。

「でも私達、一応真面目に革口さん尾行してたのに。鈴木さん一人で解決しちゃうんですもん」

私がちょっと拗ねたふりをしてそう言うと、鈴木さんは「ごめんね~」と両手を合わせた。

「ちゃんとお金は払うからさっ。本当は完璧に調べてからにしようと思ったんだけど……いてもたってもいられなくなっちゃって」

ここでようやく今まで黙っていた白虎店の店長さんが口を開いた。こちらはふりではなくて、本当に拗ねているような気がする。

「……鈴鹿も俺に相談してくれればいいものを」

ボソッと呟いた白虎店の店長さんに、鈴鹿さんはあっさりこう言った。

「店長なんかより美佳の方がよっぽど頼りになります」

白虎店の店長さんは少し……いや、彼の表情のなさを考えるとかなり。かなりショックを受けたような顔をした。鈴木さんが面白そうに笑っている。鈴鹿さんもコーヒーカップの下で微笑んだ。

店長って、どこの店もこんな感じなのかなぁ。




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