チリンチリンと鈴鳴れば3



「ただいまー……」

あのあともさんざん探し回ったが結局猫は見つからず、私はテンション低く店に帰ってきた。画像を添付して友達中にメールを送ってみたりもしたが、いい返事は得られなかった。また明日も放課後猫探しだろう。

「あ、おかえりー雅美ちゃん」

来客用のソファーに座ってくつろぐ店長が私に挨拶を返した。私はそれにもう一度「ただいま帰りました」と言って店長に近づいた。まぁ見たら結果はわかると思うが、一応今日の成果を報告しようと思ったのだ。

ん?あれ?私は店長の膝の上に茶色い毛玉が乗っているのを見つけた。茶色いトラ模様の毛玉は、どう考えても猫だろう。私はその猫を指差して尋ねた。

「店長、その猫どうしたんですか?」

「ああこれ?捕まえたんだ。虫とり網でね」

そう言って店長は首ねっこを掴んで猫を持ち上げてみせた。その尻尾には私が散々追いかけ回した鈴。猫が尻尾を揺らすと鈴はチリンチリンと音をたてた。

「なんで捕まえた時点で連絡してくれなかったんですかッ」

「いやー、雅美ちゃんが無駄なのに探し回ってる所を想像すると楽しくってつい」

何が「つい」だこの野郎!私はメラメラと燃え盛る殺意を背負いながら店長に怒鳴った。

「酷いですよ最悪ですよ最低鬼畜外道ですよ店長!」

「そこまで言われるとさすがに罪悪感が芽生えてくるなぁ」

全く悪びれた様子もなく笑顔でそう言ってのける店長に、私の殺意の炎は油を注がれたかのように大きくなる。

「最悪ですよ本当に、最悪の気分です!私もう疲れたから帰ります!」

「お疲れー」

引き止めないのかよ!そこは引き止めてよ!私は想像した反応をしてくれない店長にムカついた。イライラした私はそのまま家に帰ってやることにした。私だって黙ってからかわれるような人間じゃないのよ!

「お疲れ様でした!」と叫んで思いきり引き戸を閉める。引き戸はピシャン!と大きな音をたてた。私は膨れっ面のまま自転車にまたがり、怒りに任せてペダルをこぎだした。

家に向かっている最中に気づいたが、荷物を全部店に置いたままだ。でもまぁいいかと思った。学校に必要なものは家にあるし、明日のバイトの時持って帰ればいい。どうせ明日も明後日もバイトなのだから。




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