幼なじみの男子がラスボスとして君臨する悪夢の世界、無限に繰り返される少女の冒険のお話。
現代ファンタジーです。ゲームの世界をモチーフにした、転生ものかあるいはその変奏——のように見えてそうでもないようなあるような、この「世界そのものの正体の分からなさ」が肝となる作品。平たく言えば、世界の真実を解き明かしていく物語で、複雑に入り組んだ舞台設定が魅力的でした。もっというなら設定そのものに加えて、その結果課せられる運命の壮絶さも。
少年少女を主役とするファンタジーやSFにおいては、ときにその世界全体が敵になることもありますが、まさにその系譜——と言ってしまうと少しイメージの違うところもあるかも。構造的にはその王道を踏襲しているとしても、その味付けの仕方が面白い。
まずもって冒頭が尖っているというか、いきなり最終決戦の決着後、つまりハッピーエンドの瞬間から始まっている。この「スタート地点でいきなり終わってる」というインパクトも凄いのですが、でもそれよりなによりこの冒頭の第一話、ここで物語全体の方向性がざっくり示されているのが好きです。
うまく言えないのでちょっと乱暴な丸めかたになっちゃうんですけど、状況自体はかなり複雑なのに、でも「ラスボス戦の後」の一語でほぼ完璧に理解できちゃう感じ。ゲーム的なものをイメージすると理解が容易で、しかもそれが章題にある「LOAD」の一語によって誘導されている。おかげでわずか500文字強で導入が済んでいて、そしてここが何より重要なのですけれど、わかりやすいのに真相や全体像はちゃんと謎のままになっているところ。わざわざ問いの形で謎を投げかけなくとも、自然と「どうしてラスボス戦になってるの?」を気にさせる展開になっている。とても自然で、スルッと入っていけました。二話三話も同様に、一歩一歩謎が解き明かされていくような感覚。
そしてその結果、というかやがて明らかになる真相なのですが、まあ壮絶でした。あまりにも強大かつ残酷な運命。いや世界を向こうに回す以上はそうこなくっちゃという部分ではあるのですけれど、でもこれが思った以上にハードというか、本当に「壮絶」という形容が似合う感じ。それも好きなところなのですけれど、でもなにより興味を惹かれたのは、その壮絶さがそのまま極まったかのようなこのラスト。
以下は結末に触れてしまうためネタバレになります。
いやハッピーエンド〝+〟ってそういうこと? と、後頭部を鈍器で殴られたかのような衝撃がありました。なかなかに業の深い物語。だって少年少女が感動の再会を果たす恋のお話が、そのままぴったり世界への復讐の物語でもあるんですから。総じて辛口の物語というか、所々に容赦無く顔を見せるハードコア要素を含め、残酷さと壮絶さの漂うダークファンタジーでした。