第2話「知らない猫、そいつは……」

 気がつくと周囲に湯気煙がまっていた。空はオレンジ色と濃い青色が印象的で、もうすぐ夜になると本能で気づく。

 田中はキョロキョロと周りを見るが周辺には大きい岩ばかりでここがどこかわからない。岩場の奥には湯気が出ている。


「ここは温泉なのか?この大きさここは一体?」


 田中は先ほどのピカリエの言葉を思い出す。


『異世界にでも飛ばしてやる』


「おいおい。マジで異世界なのかよ。この大きさも巨人が住んでるんじゃないのか」


 田中は慎重に出口を探しながら、適当に歩いていると岩場の上から声が掛かる。


「よぉ、にいちゃん。新入りかい?」


「ひゃい」


 渋い声が聞こえる。田中は身体をビクンと無意識に動かすと、すぐに声があった方向に身体を向ける。

 そこには黒と茶色が混ざり合ったサビ地全身模様の大柄な猫が、岩場でどっしりとあぐらをかいていた。


 喋りかけてきた猫に目を大きく見開き、田中は腰を地面に落とした。


「そんなに驚くんじゃねーよ。おじちゃん傷つくだろうが。まあいい、お前さんもあのくそチート神ってやつに連れてこられたくちかい?」


「え?なんでそれを!!」


 大柄な猫はニヤリと悪い笑みを浮かべる。


「まあなんだ。俺様もお前さんと同じ境遇ってわけだよ。俺様とおんなじ匂いがぷんぷんするぜ」


「な……、俺はこんな猫じゃない。日本育ちの人間だ!!匂いもそんなに臭くない!!」


「……お前さん結構失礼だな。違うわい!!俺様も元は人間だ。お前も自分の身体をよく見やがれ」


 何を言っているんだと思いながらも、身体中を見る。尻には尻尾が有り、白、黒、茶色の色が混ざり合っていた。

 大柄の猫は股間のところから手鏡を出す。これ見ろと言わんばかりに田中の顔に近づけてくる。


「おい、やめろ。ばっちいだろう!!」


「汚いとはなんだ!!汚くないわい!!毎日3回舌で手入れしとるわい!!」


「ばっちいだろうが!!!!汚いもの近づけんじゃ……」


 田中は手鏡に目線が行った時、言葉を失った。なんせ姿形とも人間ではなく、三毛猫、猫の可愛い姿になっていたのだから。


「にゃんじゃこりゃ!!」


「猫だけにな」

 大柄の猫はクスリと笑いながら言いやがった。

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