第4話

僕は今、家に帰る途中だ。


いつもなら音楽を聴きながら、一人で家に向かって歩く……はずなのに。


横にはクラスメイト。しかも女子。

傍から見たら、交際しているように見えて誇らしくなる気分なんだろうけど、僕は全く、微塵も嬉しくない状況だった……。


もし、これがクラスメイトに見られたら、光の速さで噂が広まってしまう。


普通だったら、そんな事を考えて一緒に帰るなんてことは避けるはずなんだろうけど……


生憎、この人は回りの目も気にせず行動するタイプらしい。


「それで? 私に何か用? 」


横を見ると後ろで手を組みながら、笑みを浮かべている加流瀬さんがいた。


一瞬、気を取られた僕は恋人っぽい雰囲気にドキドキしてしまったが、すぐに顔を逸らす。


「加流瀬さんって、いつ告白するの? 」


僕は真剣な表情に変え、加流瀬さんの顔を見ながら、決まっていないであろう予定を聞いた。


すると、彼女は頭の上にハテナマークを浮かべるように首を傾げると


「そんなの、明日でしょ? 」


「え? 」


それしか言葉が出てこなかった。


この人は、告白するための手助けが必要で僕を協力関係に置いた。

なのに、今日は特に黒崎と何もしていないと言うのに、明日告白すると言い出した。


「あ……もしかして、黒崎と凄い仲良かったりする? それとも、もうアピール済み? 」


僕は今さっき聞いた事が未だに信じられず、一気に質問した。

それでも、彼女はまだ、頭の上にハテナマークを乗っけていて……


「黒崎くんとはあいさつくらいしかした事ないし、なんなら、私から話しかけた事はないかも」


わお……


その言葉を聞いた時、本当にこの人はなんで僕のことを呼んだのだろう、と心の底から思った。


「そ……そっか。い、いつ好きになったの? 」


僕はこの人の返答全てが怖くなってしまい、恐る恐る聞く。


「つい昨日の事」


……やっぱり凄い返答が返ってきてしまった。


でも、僕はこの加流瀬 里依紗という人を少しずつ理解してきた気がする。


会話をするようなってからまだ、数時間という短い時間しか共にしていないというのに。


「どこで告白するとか、言葉は決めているの? 」


一応、念のために、また質問をすることした。

すると、彼女は足を止めて


「告白は屋上……」


「うん」


この人と会話していて、初めて普通の返答が返ってきたと思うくらい、本当に普通の返答でビックリした。

告白の言葉は、と彼女は切り出すと、顎に手を当てながら考え始めて……


「そうね。告白の言葉と言ったら『名字を一緒にしませんか? 』じゃない? 」


うん。結構いいセリフだと思った。

プロポーズする際のセリフにはピッタリだった。

だけど、名字を一緒にするって、もう結婚前提じゃん。

僕は突っ込むことが多すぎて、自分はツッコミキャラだったんだと初めて気づいた。


そして、加流瀬さんのボケなのか本気で言ってるのか、よく分からない言葉に僕がツッコミを入れている内に僕の家に着いた。


「ここが僕の家なんだ」


僕が足を止め目の前にある家に指を差す。

彼女は、僕の家を見上げ


「2階にある、一際大きな窓が1つある所が高林くんの部屋? 」


正面から見える、大きな窓に指を差しながら彼女は僕に聞いてきた。


僕はそれに頷くと、加流瀬さんは玄関の方に歩いていき……


「それじゃあ、お邪魔します」

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