第3話

昼休みが終わり、午後の授業に入っていた。

でも、授業の内容が入ってくるはずもなく、僕はずっと昼休みの話について考えていた。


加流瀬さんは本当に初恋だったらしく、恋愛については何にも知らない、赤ん坊状態だった。


まあ、僕も人のことは言えなくて恋愛なんてした事ないけど、ある程度の事は加流瀬さんにも教えて、何とか僕と同じくらいの知識を持った恋愛初心者程度にはなったと思う。


……問題は、どのようにして加流瀬さんを黒崎にアピールさせるかだ。

このクラスになってから、あの二人は会話したことはあるかもしれないが、指で数えられるくらいだと思う。


なら、まずは趣味とか好きな食べ物を聞いて、お互いの意見を交換し、ちょっとずつ相手に自分がどんな人かを理解してもらう。


それで次からは、少し話しやすくなってるはずなので、攻めに行ってみる。

取り敢えずは加流瀬さんに伝えて、攻め方は2人で考えよう。

そこまで考えて、黒板に書かれた文字を素早くノートに書いて授業は終わった。


僕は作戦を伝えようと、すぐに加流瀬さんの机に向かって歩き出す。

でも、加流瀬さんは休憩になった途端に机に伏せてしまい、なかなか起きてはくれなかった。

しばらくの間待っても、彼女が起きることはなく、次の授業が始まる予鈴が鳴ってしまった。

僕は仕方なく自分の席に戻ることにし、今度はしっかり真面目に授業を受けた。



そして、今日最後の授業も終わりホームルームの時間になった。それなのに、僕らは昼休み以来喋ることはなかった。

加流瀬さんは本当に僕を必要としているのか……? それすらも、疑ってしまうくらい彼女は余裕の態度だった。


……ここで、1つの疑問が浮かんだ。


僕がおまじないから開放されるのは告白する時だ。でも、僕は加流瀬さんから、いつ、告白するのか教えてもらってない。

もし、加流瀬さんが告白しなかったら、僕は一生、彼女に自由を奪われる。


そんな事を考えた瞬間、鳥肌が立ち、夏なのに寒く感じた。



やがて、ホームルームも終わり下校の時間になった。

僕は、真っ先に加流瀬さんの所に向かい、帰りの準備をしていた彼女に話しかける。


「加流瀬さん、ちょっといい? 」


僕が話しかけると加流瀬さんは、そういえば、と何かを思い出したように席を立った。


「高林くんって 、私と帰る方向一緒でしょ? ……なら歩きながら話さない? 」

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