映画

「暇だぁ…」

隆二は唐突に呟いた。今は夏休み真っ盛りであった。あの日、友達になった以降何も進展がなくて、どのようにしたらいいか分からずに夏休みを過ごしていた。実際は夏休みを謳歌していた。一日中ゲーム等に没頭しているためであった。でも、毎日続けているとさすがに飽きていた。

「明日にでも出かけるか。」

隆二はそう言って、今日も飽きてきたゲームに一日を費やした。そして、次の日になった。今日は8月5日金曜日であった。近くにあるデパートに向かった。デパートに向かった訳は映画を見るためであった。

「これよさそうだな。」

隆二はそう言って、君恋きみこいのチケットを高校生料金で一枚買った。チケットを買うのにかかった金額は1000円であった。

隆二が見る君恋とは、『君との恋』という映画であった。いわゆる恋愛映画というものであった。そして、上映時間十分前になり入場できるようになって、隆二はポップコーンと飲み物を映画館の売店で買ってチケットを渡して上映場所に向かった。

「俺の席は、H-8だから、ここから少し上がればいいんだな。E-1…F-1…H-1、ここか。」

そう言って、隆二は自分で買った席に向かった。そうして、自身の席につき上映時間までスクリーンには予告の映像等が流れていた。もうすぐで始まるとき誰かが隆二の目の前をすみませんと言いながら通った。その声に隆二は聞き覚えがあった。その声の主は、夏帆であった。

「まさか、夏帆か?」

「その声まさか隆二?」

まさかの偶然がまた重なったであった。会うのもとても偶然なのか、うんまいに仕組まれたものなのか。それを知るのは、運命のみぞ知ることであった。

更に、偶然は重なった。それは右隣に夏帆がいるのだ。そのことに気づいた夏帆は大声を出してしまいそうになったが何とか堪えていた。その様子を見た、夏帆の友達である、美咲と美玖が心配していた。その様子をチラ見していた隆二はこれが本当の友達かと少し残念そうに思うのと、何だかとても夏帆のことが気になっていた。

そんな状態でも上映が始まった。この映画の上映時間は166分であった。その間、隆二の隣にはずっと夏帆がいるのだ。そのため映画なんかに集中ができるはずが図太い神経などを隆二は持ち合わせていなかった。それは、夏帆もであった。お互いがお互いに好意を持っていることが理解できなかったのだ。正確に言うと、この気持ちが何なのかまだ知らなかったためであった。

そんな中、映画を見ている最中にお互いの手が触れた。その時、二人の心臓の鼓動が生きてきた中で一番速い速度と言いていいほどに早くなっていた。

映画が終わるころにはお互いに茹で上がったタコのような顔になっていた。

「夏帆大丈夫?!顔赤いよ。熱でもあるんじゃないの?今日はもう解散にしよ。また今度三人でくればいいことだし。」

「そうだね、今日は帰ってまた今度一緒に出掛けようね。」

そう言われて夏帆は心の中でこれは体調が悪いとかじゃないのにと思って、このもやもやを物に八つ当たりしようと、電柱を殴ってしまった。とても痛かったためその場に少しうづくまった。ジンジンしている手を撫でながら家に帰った。そして、曲がり角に差し掛かった。

隆二は茹で上がったタコになった後しばらくして、上映が終了しているのに気づいたのと、隆二以外残っていなかった。そして隆二は、すぐに映画館を出て家に帰った。

「なんで俺はあんなにもドキドキしていたんだ?なんだ?」

隆二は、自身に問いをかけた。その問いの答えは今の隆二に出せる簡単問題ではなかった。そんなことを考えながら歩いていると曲がり角に差し掛かった。そして曲がった。曲がると誰かにぶつかってしまった。

「大丈夫ですか?」

隆二はぶつかってしまい、ぶつかって倒れた人に右手を差し伸べた。ぶつかって倒れた人は隆二の右手を掴み立ち上がった。

「こちらこそすみません?!」

お互いにこの声を聴いたことがあった。それは、隆二と夏帆であった。

普通こんなにも偶然が重なるだろうか。それは、否である。これは偶然なんかではなく、運命の赤い糸が結ばれている二人と言った方がいいだろう。この時、お互いが少しだけではあるが夏帆は隆二のこと、隆二は夏帆のことが好きという気持ちということが心の中にあった。

「俺は何で夏帆のことがこんなにも、異性としてきになってしまうのはなんでだ…。」

隆二はそう思いながらも、冷静であるかに立ち振る舞っていた。夏帆も同じであった。いつの間にか、隆二の右手を話していた。そのことに気づいたのは、少し経ってからであった。

お互いが冷静であったため、少しではあるが空気が重かった。その空気を変えようと何か話題がないか辺りを見渡した。すると、8月14日に夏祭りがあるお知らせのポスターを見つけた。そして、夏帆に隆二は提案をした。

「あのさぁ。あそこに書いてある夏祭りに行かない?」

隆二が提案した内容があまりにも予想していたこととは違うため、少しびくっとなっていたがうんと頷いた。

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