梅雨
学校に登校した隆二は、教室に入り自分の席に着いた。ショートホームルームが始まるまでまだ時間があり隆二は机に頭と腕を机に預けて、仮眠をとることにした。
仮眠をとると言っても、今から十分くらいであった。今は、8時29分30秒すぎであった。そして、ショートホームルーム始まるのは、8時40分丁度であった。それと隆二の机があるクラスは、2-Aであった。2-Aは、梅ヶ丘高校の二階に位置する場所で二階に行くために階段を上って、左最奥の教室が2-Aであった。
キ~ン~コ~ン~カ~ン~コ~ン~。キ~ン~コ~ン~カ~ン~コ~ン~。
チャイムが鳴り隆二は仮眠をやめて、授業を受ける体制へと戻った。ショートホームルームが終わり、一時間目の準備をしようとロッカーに教科書を取りに行こうと、椅子から立ち上がり廊下に出た。廊下には数人で固まってたむろしていたり、トイレに行くために廊下に出ている生徒等がいた。そんな中、隆二はロッカーに手をかけた。すると、放送が入った。
「え~。2-A桐生隆二。今すぐに生徒指導室に来なさい。」
放送の声の主は、男性であった。その声の主は、二学年の学年主任である
そして、隆二はめんどくさいと思いながらもクラス棟の真逆に位置する、職員棟に向かった。生徒指導室があるのはクラス棟の階段を下りて一階に行き、そのまま昇降口を向けて左手の方向に曲がり角で曲がり、三部屋の空き教室を通り生徒指導室にたどり着いた。
「はぁ…。めんどくせぇ。」
ため息交じりながら隆二はその場にはいた。そして、コンコンと二回ノックをして、扉を開けて失礼しますといい、高橋教諭の逆側の椅子にこしをかけた。
「ここに呼ばれた、心当たりはあるか?」
そう高橋教諭言われて、心当たりがあった。それは、昨日の喧嘩であった。まぁ、当然そんなことを学校側に知られてしまえば、謹慎処分や退学処分になることが容易に想像ができる。隆二はめんどくせぇと感じながらも素直に話した。すると、やはり停学処分になった。期間は2週間であった。
でも、隆二はその処分が少し甘いと思った。だが、これ以上高橋教諭と話したくなかったその処分に何も言わずに受け入れた。そうして、隆二は帰宅をした。
帰宅をすると母がいた。母は昨日のことが学校側に知られて謹慎処分を貰ったことを察してくれたのか、おかえりなさいと一言言って自身の仕事に戻った。
「…ただいま…」
小さく返すように隆二は母に言った。そして、階段を上がり二階に行って自室に向かった。自室に入ると、たくさん出された課題をこなすためにカバンを開いた。
だが、日曜日に学校に行かないといけないため早めに課題を終わらせないといけなかった。そのため、すぐにとりかかった。そして、課題が終わったのは謹慎処分を受けてから四日後であった。そうして、今日の曜日を確認した。
「今日は、金曜なのか…。課題終わったし何するか。本でも読んでるか。」
そう言って、日曜まで過ごした。そうして、日曜になり学校に登校した。登校し、一時間以上説教を受けたのち、今週の課題を提出して新しい課題を受け取り帰宅した。
課題等をやっているうちに謹慎期間が今日で終わった。今日も学校に行き、先週と同じこと繰り返しであった。
「今日で、終わりかぁ。明日から学校とかだるいな。」
そうつぶやきながら歩いて自宅に帰り、明日の準備をした。夕飯等を食べ終える等をした後、何だか疲れがどっと出てきて、横になるとすぐに眠ることができた。
この時、隆二は久々にぐっすり眠れた。最近は、夢すら見れないなかったのと眠っている気がしていなかったためであった。そして、朝になり目を覚ました。
「う~ん。よく眠れたなぁ。」
そう言って、朝食を食べ学校に向かった。今日の朝食は、バターを塗ったトーストにスクランブルエッグ。そして、飲み物に珈琲のなんとも贅沢な朝食の組み合わせであった。学校に向かうと、いつもなら眠いため机に伏せて仮眠を問ているが今日は窓の外を眺めて時間が来るまでボートした。
そんなことを繰り返す日々を最近は行っていた。隆二は今日が何日かを把握していなかった。正確には、曜日しか気にしていなかった。
こんな調子で自宅に帰っている途中に大粒雨が、ポトポトと音を立て少しすると、ポトポトからザーという本ぶりの音に変わった。そして、この時隆二は今が梅雨ということを自覚した。
「家までまだ全然距離あるし、何処かで雨宿りでもするか…。」
そう言って、雨宿りできそうな場所を探した。すると、お祭り等をやっている神社を見つけて、雨が止むまで、そこで雨宿りをさせてもらうことにした。そうして、隆二が腰を掛けようと拝殿の階段に腰を掛けようと手を置いた。
何故か、柔らかい感触が隆二の手に触れた。すぐさまに手をそこからどけて隣に顔を向けると、隆二と同じ学校の制服を着た女子生徒がいた。
「女の子の手って、こんなにも柔らかいのか。」
隆二は手に残る感触と同時に心の中に思った。そうして、隆二は女子生徒に声をかけた。隆二が、あのと声をかけると女子生徒は少しおびえるようにビクッとなってこちらに顔を向けて何か言いたげにこちら見つめていた。
「やべぇ、緊張してきた。女の子とこんなに近くになったの初めてだから何を話したらいいんだ?なんか、少しおびえているような気がするけど大丈夫かな?」
隆二は生まれて初めて、女の子とこんなにまじかになったことがなかったため、どうしたらいいか分からなかった。しかし、そんな状態でも隆二は声を女子生徒にかけた。
「あの…さっきは…手が触れて…嫌でしたよね…」
隆二はボソッと聞こえたか聞こえないかの声で言った。それを聞いた女子生徒は自分のせいで隆二が少し傷ついてしまったのかと思うのと同時に、少し慌てていた。
そして、女子生徒も少し気まずそうに声を発した。
「い、いえ。こちらこそ、ごめんなさい…」
女子生徒がそう言うと、少しの間沈黙が続いた。沈黙の間も雨は降り続いた。雨の強さは増すばかりであった。そうして、しばらく沈黙が続いた後お互いが同時に声を発した。まさに紙一重なタイミングであった。そのためお互いが譲り合いを始めた。仕方なく、隆二が先に言葉を発した。
「あの。何か話しませんか?」
隆二がそう尋ねたとき、隆二と女子生徒はお互いがお互いの方向と違う方向を向きながらであった。失礼なのは隆二は承知していたが仕方なかった。それでも、隆二は女子生徒の方向を向かなかった。それは、女子生徒も同じであった。
「ええ、そうですね。なら、お互いに名前を知っていた方が話やすいですね。私は、
隆二はその高校に聞き覚えがあった。それは、隆二が通う高校であったからだ。その時女子生徒の方を見た。するとその時またお互いに顔を合わせた。偶然だろうか、こんなにも同時に同じことをすることがあるだろうか?それは、否とは言いきれなかった。
隆二はその事を頭の隅の方において、この後夏帆と何を話せばいいのか分からずに少し固まっていた。
「あ~の、もしかしてだけど君って、私と同じ学校ですよね?」
隆二はそう言われると、素直にこくんと頷いた。頷いた後、隆二も夏帆に自身の名前を言った。少し気恥しいように感じた。だが、新鮮で少しいいとも隆二は思った。
「俺は、桐生隆二。君と同じ学校に通う二年生です。」
隆二がそう言いうとまた偶然か必然か分からないが、夏帆も同じ学年ということを知った。隆二は何かが二人にあると思った、これが運命というのをこの時の隆二には理解できていなかった。正確には運命というものを知らなかっただけだったのだ。
「そっか。私たち同じ学年だったんだね。君はどこのクラスの人?私はAだよ。」
隆二は夏帆が同じクラスだってことを聞いた時、同じクラスにこんな人いたっけとも思った。実際は隆二はクラスメイトの名すら知らなかったのだ。それは、隆二がクラスメイトのことをどうでもいい存在と思ってためだ。隆二は目つきが鋭く髪色が赤いため、隆二に近づこうとする奴なんて誰一人としていなかった。そんなのが何年も続いたためであった。
そんな中で隆二と話をこんなにも長くしたのは、家族や先生以外で夏帆が初めての存在であった。だから、少し話すのが楽しかった。
「同じクラスだったですね…」
夏帆がそう言った時には十分くらいたっていた。そのため、夏帆は服がすごく濡れており、下着が透けていた。そんな状態でいたため寒そうにしていた。くしゃみを、くしゅんくしゅんと何回かしていた。身体の方はだいぶ冷たく冷えて、体をぶるぶるふるわせ熱を発生させて、体温を保っていた。
「少し…寒いね…」
そう小さく夏帆は言った。夏帆のくしゃみが出る頻度が早くなっていた。そんな中、隆二は自身が羽織っていた学ランを夏帆に羽織らせた。衣替えの期間は隆二が謹慎処分を受けている最中に終わっていたことを知らずに毎日来ていた。なぜなら誰も何も隆二に注意をしなかったからであった。
夏帆はこんなにも男の人に優しくされたことはなかった。男の人たちは、夏帆のことをいやらしい目で見るのがほとんどであった。こんな雨の日なんかは特にであった。そのため、隆二がしてくれたことがとても嬉しかった。だから少しずつ目から涙が流れていた。
「…ありがと、隆二。」
隆二に聞こえるか聞こえないか位の声で小さく言った。だが隆二はその事を聞き逃しはしなかった。
「別に何もしてないから、お礼なんて言われても困る。」
そう返すとなんだか不思議な人と思い、夏帆は泣くのをやめて笑った。すると、空が徐々に晴れていった。そして、嬉しそうに夏帆は隆二に言った。
「私と友達になってよ。その方が楽しいと思うよ。」
「俺と夏帆が?友達っていたって何をすればいいんだ?」
「別にただ一緒に遊びに出かけたり、買い物に行ったり、気軽に一緒に帰ったり、連絡をしあうのも友達だよ。だから、友達になってよ。」
そう言われて隆二は夏帆と友達になった。隆二にとっての友達は夏帆が初めての存在だった。そのため、無性にとてもうれしかった。
「なら、今日は一緒に帰らない?」
隆二は夏帆にそう言うと、嬉しそうにうんと言って二人で帰った。この時すでに、二人の歯車は噛みあい始めていた。今までの歯車は空回りをしていた。そして、この時動き出した。
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