運命の日曜日⑤

 西川結


「うみゃーーーーーー」

 私は、一人ベッドの上で転がっていた。

 昨日、やってしまった。

 名前で呼んでほしいとか、甘えすぎでしょ!好きって言ってるようなものじゃない?そして、気づかないとか鈍感過ぎない?

「…やっぱり私、しょーたのこと、好きなんだろうなー」

 ……ううう。明日からどうすれば……

 ……。

 ……………。


「でかけよっかなー」

 ふと思っただけだったが、気分転換になりそうだし、いいんじゃない。

 私は、着替えてから家を出た。


「何で……」

 駅のほうに歩いていくと、向こうのほうから翔太が歩いてくるのが見えた。いつもなら「やっほー」とか言って近づいていくところなのだが……

「今は気まずすぎるでしょ昨日名前で呼んでとか言ったから翔太も呼び方に困りそうだし今はおしゃれしてないからって言ってもいつもそんな感じだけど隣に河野君がいて話に詰まりそうだしそれに私から話しかけるのはなんか恥ずかしいしっていうか私恋する乙女みたいな反応してるけどそんなキャラじゃないし優等生キャラあるいはぐでっとしてる」

「おーい」

「キャにゃ?!!」

 翔太がいつの間にか近くにいた。1人だけらしい。

 うう……死ぬほど恥ずかしい…死んだら翔太に会えないから死なないけど……

「大丈夫か?ああ、怜児は撒いてきたからいないよ」

「う、うん…」

 何を話せばいいのかな!わかんない!ていうかこんなキャラじゃないと思うんだけど私!時間が経ってるから忘れられてるのかな?

「あの、わ、私……」

「どうしたんだ?一回落ち着け」

 翔太の顔をずっと見つめていると、だんだん落ち着いてきた。恥ずかしいけど。普通に恥ずかしいけど!

「翔太を殺してー私も死ぬーこれで永遠に一緒だねー」

「え?」

……いやいや、ちょっと待て。何を言ってるんだ私は。

……ほんとにやろうかな……いや、それは最終手段だからとっておこう。

「ごめん、ちょっと混乱してた」

「ああ、大丈夫だ」

 ここで翔太に会えたのは、幸運だったんじゃない?どうせなら、買い物にも付き合ってもらえないかな?あと、お昼とか。

 でも、そのまま付き合ってって言ったら、誤解されちゃうよね。なら……

「私、翔太のことが大好きだから、(買い物とか)付き合ってくれない?」

「は?え?」

……いま私なんて言った?何も考えずに思いついたままに誘ってみただけなんだけどねー。

あははー何私変なこと言っちゃってるんだろーでも私の気持ちとしては間違ってないよね。それでこの関係が崩れるから言ってなかったけど外に結構出していたから気づいてるかもしれないし。

「……これは、本音だよー(今言う気はなかったけどね)」

「……」

 翔太は、何も言わない。私は、気まずくなって、慌てて去ろうとした。

「で、でででは私はこれで返事はいつでもいいですからよね学校で!」

「……結」

「え?」

 ……言い直すんでしょ?

「結、ありがとう」

 ……言い直さないの?

「俺も、結が好きだ」

「え?」

 幻覚?幻聴?夢?…いや、違う。これは、翔太だ。私にはわかる。幼馴染である、兄妹のような存在である私には。一番翔太について知っているのは私だ。


「昔は、幼馴染で、手のかかるけど尊敬する姉ぐらいに思っていたんだけどな」

「…け、結構甘えてたしねー」

「なんかしっくり来た。恋愛感情、情熱的に好きってわけじゃないけど。結といると落ち着くのに、なにか物足りない気がしていた」

「……?」

「幼馴染としてじゃなくて、もっと特別な関係として結に甘えてほしかったのかもな」

「え?あ……」

 待って待ってほんとに待って!え?カッコいいんですけど幼馴染じゃなくて彼氏だから?わかんない確かに前もカッコいいなと思ったことはあったしそれは誇らしかったけど反則でしょこんなの

「えっと、じゃあ、これからもよろしく!」

「よろしくねー。幼馴染として、彼女として。もっと甘えるからねー」


私は、これからも翔太と長い付き合いになりそうな予感を持ちながら、微笑んだ。

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