運命の日曜日④

平川凛


「何これちょーかわいい!!」

「……そうかな?」

「ね?可愛いよね!!ほら!」

 遥は持っている(変な)ぬいぐるみをみてそう呟いていた。僕はそれが可愛いとは全く思わないけど。

「そっか、それは良かったね」

「もう、はぐらかさないでよ」

「はいはい、とっても可愛いね」

「か、かわいい……って、ぬいぐるみの話だよね」

「うん?そうだけど」

 目を合わせてくれなくなった。どうしてだ?

 今は、買い物の途中。駅の近くにある大きなデパートを二人っきりで回っている。デートじゃないけど。

「じゃあ、これはどう?」

「えーと……」

 はい、遥と僕では嗜好が異なることがわかりました。


「はあ、疲れた!!ちょっと休憩しない?」

「りょーかい」

 その後も、1時間ぐらい一緒に回った。

 僕も少し疲れていたから、助かった。近くにあった喫茶店に2人で入る。コーヒーを二つ頼んだ。

「……」

「……」

 珍しく、遥が真剣な顔をして黙っている。どうしたんだ?本当に疲れているのかな……それとも……

「大丈夫?疲れた?」

「……っえ?あ、だ、大丈夫。ちょっとね……」

「どうかしたの?」

 遥は少し口ごもりながら、話し始めた。

「その……凛と私って幼馴染じゃん?」

「うん、そうだね」

「だからさ、仲がいいよね」

「もちろん」

「……凛が………私………」

 心なしか、遥の顔が赤みがかっている気がする。本当に気のせいかもしれないけど。

「ごめん、うまく聞こえなかった」

「凛は……私のことをどう思っているの?」

 え?

「どうって……」

「私は……」

 どう思っているか……


「私は、凛の」

「コーヒー二つ、お持ちしました」

「あ、はい」

「どうぞ、ごゆっくり」


「……」

「……」

 どうしようか、この空気。

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