運命の日曜日②
石井遥
「よし、準備万端!」
昨日の夜はゆいちーに電話で今日の相談を少しした後、山下君のことでからかっていた。多分時間的には8対2ぐらい。だってゆいちー可愛いんだもん。皆に対していつも敬語を使っているのに、昨日は「えー?そ、そんなことないよー」だって。ゆいちーが少し照れているように感じたのは気のせいだったのかな?もしかして、両想いとか?うん、目が離せないね!
ちなみにそのせいで今は少し寝不足。まあいいよね、そのおかげかどうかわからないけど、結構テンション高いし!自分で言うのもおかしいけど!おかしいけどね!今なら勢いで何でもできそうだよ!例えば告白とか……?
まあ、なんでもいいよね!それはともかく、今日は家を早く出た。だって、遅れたくなかったから!よし、今日こそは凛より早く着けるといいな!だって、今日は……
「あれ?もう来て……」
駅に着いて、時計台の所に凛はまだいなかった。……そして、その少し離れたところに、見覚えのある人がいた。
1人は変な帽子をかぶって、マスクをしている。それだけなら、ただの不審者だと思っていただろうが、もう1人は間違いなく山下君だった。その後にマスクをしている方をよく見たら、おそらく同じクラスの河野君だ。
斜め後ろから近づいてみると、会話が聞こえた。
「二日間連続で尾行って、趣味悪いな?昨日が俺で今日が平川か」
「尾行じゃない、これは、親友のデートを許可なく勝手に観察するだけだ!」
「それに付き合ってる俺も大概だけどな」
なるほどなるほど、この2人は今日の私たちのデートを許可なく勝手に観察しに来たのか。じゃあ問題ないね!……って、
「何をしてるの?」
「ひっ」
「ふぁっ……って、石井?昨日ぶりだな」
後ろから声をかけた。いやー人を驚かせるのって楽しいね!!
「昨日のデートは楽しかった?」
「デ、デートじゃないし」
人をからかうのも同じくらい楽しいけど!
「そっか。で、何をしてるの?」
「えっと、こいつ……河野怜児と一緒に、出掛けるだけだ」
出掛けるだけ?そんなわけないよね。ふーん、
「誤魔化すんだね」
あ、心の声が口に出てた。まあ、間違えたわけではないので訂正はしないけど。
「え?えっと……あーさっきの会話、聞こえてた?怜児は、」
「お、おい、言うなよ!!」
あ、河野君が焦っている。河野君は知っているようだ。凜と出かける相手が私だと。
「何で?クラスメイトからの怜児の印象がもう下がりきっているのは知ってるでしょ?」
「まあな、これ以上下がらないからな!!……って、そうじゃなくて!!」
「へぇ、そうじゃなくて、何なのかな?もうそろそろ時間だから行かなきゃなんだけど?何を企んでいるのか、教えてほしいな?」
「う……えっと、何も企んではいないぜ!昨日の反省を生かして早めに着いておこうとか思ってないからな?」
「……昨日?……ふーん、昨日の、反省?なるほどなるほど」
河野君をいじめ……追及するの、楽しいね!いいストレス発散になるね!!もともとストレスなんて感じたことないけど!
「……怖っ」
おい、山下君?ぼそっと怖って言っているの聞こえているからね?
結局、河野君は誤魔化しているだけだった。言い逃れが得意なんだろう。結構時間使っちゃったかな?……あ、もう凛が来てる。
うーん、ここで2人を追い返してもいいんだけど……何度も学校で飛びついておいて今更恥ずかしいこともないし。うん、楽しそうだしまあいいか!脅迫の材料ができたしね!
「凛には言わないでおくね、その方が面白そうだし。じゃあ、またね」
「あ、じゃあな石井」
「………」
少し歩いてから後ろを振り返ると、何やら河野君が手帳に鉛筆で何かを書き足していた。今日の予定だろうか?尾行のために予定を立てるなんて、常習犯なのかもしれない。
かなり時間を使ってしまった気がする。えっと、時間は……ちょうどぴったりかな?
「やっほー凛!!」
やっぱり、飛びつくのは常識だよね!凛は、飛びつかれるのを待ってるんじゃないかな!
「うわふぁ!……急に飛びついてくるなよ、遥。まあ、おはよう」
「おはよ!!!今日もいい天気だね!!」
凛は今日も凛だった。今日は、楽しもう!!
「……今日は、鉛筆が降るかもね」
……?
相変わらず思考回路が読めない。鉛筆って。槍じゃないの?まあ、そんな不思議なところも、好きだけどね!!……多分幼馴染として。きっと、おそらく。
いや、やっぱり少し違うかもしれない。
今日は、凜との関係が少し変わるかもしれない。いや、私が変えるつもりだ。凛は……私のことをどう思っているのだろうか?
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