運命の日曜日① 

 平川凛


 9時05分。

「うーん、ちょっと早く来すぎたかな」

 昨日、怜児と一緒にデートを見守っていた……いや、見失ってゲーセンに行っていた時間の方が長かった気がする。そして、デートをしていたのが玲児の友達の……なんだっけ、怜児の友達の田中だか山田だかそんな感じの名前の人と、西川さんだった。

 西川さん。女子。うちのクラスの学級委員で、ザ・優等生って感じの人。ちなみに眼鏡はかけてない。

 いや、なんか顔が似ているとは思っていたんだけどね、何しろ雰囲気が違ったから。ぐだーっとしていて、学校でいる時とは正反対だった。昨日は、声かけたらすぐに優等生タイプに戻っちゃったけど。

 なぜここにいるのか、デートなのか聞きたかったが、僕がここにいる訳を説明(全部怜児のせいにしといた)した時に、怜児と……田中(仮)が一緒に戻ってきた。そして、怜児がそのまま僕の腕をつかんで引っ張って行っちゃったから、結局聞けなかった。レジでそれぞれが支払って、出たところで解散した。


 というわけで、結局昨日怜児が何をしたかったのか、デートだったのかは分からないままだった。電話するほどの事でも無いし。それよりも、今日の準備の方が大事だったし。

 今日は、幼馴染の遥と遊びに行くことになっている。最寄りの大きな駅にあるショッピングモールでぶらぶらする。何がいいのか、いまいちよくわからないけど。その後はフードコートで食事をする。そんな感じのゆるーいスケジュールだ。これは、デートじゃないよね?男女二人で買い物に行くのなんて、ありふれて……ない、か。まあ、幼馴染だし緊張も何もないけどね。結局デートでもデートじゃなくてもどっちでも変わらないし。


 ちなみに、今時計を確認したら、9時13分だった。昨日も来た、時計台の前にいる。集合は9時15分だから、普通なら、もう到着しているはずだ。そう、遥じゃなければ。

 遥は、よく遅れる。集合時間ぴったりに来ることは無く、一回だけ2時間前に来た事があったけど、それ以外は少なくとも10分、遅い時だと1時間は遅れる。なぜ遅れたのか聞いても、大体は「身だしなみを整えてたら、時間が思ったより過ぎてて」と言う。身だしなみを整えるのにそんなに時間がかかるのだろうか?どうせ寝坊でもしているんだろうと思うけど。

 あと、友達と遊ぶときは遅れないそうだ。なんでだろうか?僕は遅れても怒らないと思っているのだろうか?まあ、昔は注意していたけど、無駄だとわかってからは注意したり怒ったりしてないし、もちろんする気もないけど。


「やっほー凛!!」

「うわふぁ!……急に飛びついてくるなよ、遥。まあ、おはよう」

「おはよ!!!今日もいい天気だね!!」

 遥が急に飛びついてきた。ほんとに、どこでも飛びついてくるから困る。いや、あんまり困ってないかも、だって女子に飛びつかれて困っていると……って、え?何で、もう来てるんだ?早くないか?

 時計を確認する。9時15分ぴったりだった。


 遥が遅れずに来た……なぜだ……槍でも降るのか?いや、それどころか……

「……今日は、鉛筆が降るかもね」


 僕は飛びつかれたまま、そんなことを考えていた。








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 ここからは、一話一話を短くしていくつもりです。一話ごとに視点を変えるつもりなので、本文の最初に名前を入れておきます。

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