02.

「依頼があります」


 目の前。


 女性。


「ある男性の、所在を。探してほしいんです」


 明らかに、気配がおかしかった。何かを待ちきれなくて、そわそわしている。


「分かりました。費用のほうは」


「いくらでも払います。なんでもします」


 やはり。


 見知らぬ男性への粘着か、あるいはアイドルの追っかけか。


「費用のほうは必要ありません。ただし、必ずしもご期待に添える結果になるとは限りません」


 女性の頬に、触れる。


「では。仕事に移ります。もうお帰りください」


「いやです。私も一緒に仕事を監視し」


 言った女性の背中を、平手で強めに叩く。肺から空気が抜け。倒れる。


 すぐに警察に電話。


「もしもし。皆拉みなら興信所です」


『あっ、皆拉さん。どうしました?』


「依頼者が1名。女性です。特定の男性に対して、異常な執着があります」


『犯罪ですか?』


「なんともいえないですけど、とりあえず持っていっていただけますか?」


『分かりました。捜査員が五分以内に伺います。場所は興信所でよろしいですか?』


「はい。おねがいします」


 椅子に座って。彼女の頬の感覚を思い出す。違う。夢で逢うひとではない。もっと、やわらかく、それでいて硬い感触だった。


 すぐに捜査員が来て、彼女を運んでいった。

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