第6話
関所の見張り役から一報が入った。
武装した男たちが関所に近付きつつあるとの知らせだ。
その数二十。恐らくは、この前関所に現れた二人組が連れてきたに違いない。
私は関所へと駆けだした。
早い。あれからまだ十日足らずだと言うのに、それだけの人数を集めてくるなんて……
準備がいい……とは少し違う。それならば最初から人を用意して来るはずだ。
前回のは偵察だった。いやそれも少し違う。そう言った雰囲気ではなかった。
胸騒ぎ、虫の知らせ、女の勘……ただそういう第六感が警鐘を鳴らしている。
しかし、腹に抱えた違和感が拭い去れないまま関所に到着した。
「状況は?」
「はい、関所から少し離れた場所で待機しているようです。特に大きな動きはありません」
見張り役に短く伝えるとその言葉にいち早く反応したアベルが説明してくれる。
「昼間から堂々と武器を持って現れてなんの嫌がらせなのでしょうか?」
続くアベルの言葉に耳を傾けながら、私は物見窓から奴らを覗き見る。
軽装ではあるが手にしている武器は立派なものだ。
だが、剣に槍に斧まであり様々だ。それに意匠も統一感がない。
恐らく戦場での戦利品やそう言った物が集まる闇市から買い漁ったものだろう。
「傭兵だろうな。誰かに依頼を受けたのだろう」
「しかし、どう言った依頼なのでしょう?」
訝るアベルに対する答えは残念ながら持ち合わせていない。
依頼の内容も経緯もわからない。ただ……
「わかることは、狙いが私だと言うことだ」
「では、姫様が出なければ奴らも動かないのでは?」
「それはわからないが……いつまでも居座られると、他の通行人に害が及ぶだろう」
やはり出るしかないだろう。
あぁ……嫌だな……
「皆のものよく聞け!奴らの狙いは私一人だろう。ならば奴らへの攻撃は不要だ。私を抜けて関所に近付いてくる輩がいた時だけ向かい討て」
「ブリュンヒルド様お一人では無理です!」
皆が口をつぐみ、深く頷く中、一人納得がいっていないアベルの顔を見る。ただ駄々をこねる子供を見るように。
「アベル、どんな状況になっても決して関所からは出るな。そして……どんな結末になろうとも」
この先の言葉が出てこない。
いや、出してはならない。私はそれを胸に飲み込み関所を出た。
後ろからアベルの声が聞こえるが、どうやら他の見張り役が抑えこんだようだ。安心だ。
さて、たった二十人程度とはいえこの数を相手にするのは何十年振りだろうか。
折角のお誘いだ、上手く踊れたらいいのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます