ファミリー
【家族:父と母、あるいは親と子を根本とする生活共同体。あるいは家族の様に結ばれた集団。】
朝陽が街を照らす。今日も冒険者達が依頼を受ける為にギルドへと押し寄せていた。
「今日は復興依頼でいいかな。」
ギルドで依頼を確認すると、復興依頼は山程あった。それ以外だと魔物の生態調査依頼がちらほらとある。
復興依頼の手続きを済ませると街の外へと移動した。目的地は草原地帯だ。
今回の依頼は復興依頼のカテゴリーではあるが、内容としては小屋を建てる場所を探す依頼である。
小屋の建造は冒険者にはあまり得が無い。まず小屋を建てれば、そこに寝泊まりすることで野宿するリスクを減らせる。また最低限の道具類が揃っているので、小屋を拠点にして活動出来る。得の面はこれくらいしかなく、小屋を拠点にして活動したところで旨味が少ない。
そもそも小屋に魔物や犯罪者が住み着いていることもある。つまり小屋は危険分子を集めるという役割もあるのだ。
「犯罪者もそこまで馬鹿じゃないし、拠点を作る奴等が大半だけどね。」
そう呟いたのは同じ依頼を受けた冒険者の少年だった。
「詳しいけど、冒険者になってから長いのか?」
「それなりには。こういう依頼も何回か受けてるから。」
俺がそう聞くと、少年は少し顔色を曇らせて答える。少年は仕事慣れしている印象だった。暫く歩いていると、赤い仮置きの印があるのを見つけた。
「この辺みたいだね。」
俺は辺りを見渡した。見晴らしがよく風通しも良い場所だった。
「こういう依頼はギルドが予定地を数ヶ所決めているからまだ終わりじゃないんだ。」
少年はそう言うと、再び辺りを探索し始めた。俺も一緒になって探し始める。暫くすると二つ目の仮置きの印を見つけることが出来た。それからも三ヶ所ほど仮置きの印を見つけると少年は深く息を吐いた。
「休憩にしようか?」
そう俺が声をかける。少年も俺の提案を承諾した。俺は水魔法で水を生成すると、コップに注いで少年に渡す。
「ありがとう。」
少年は笑顔で受け取ると水を飲んだ。
俺は草原の周囲を見渡した。すると草むらからスモラの群れが飛び出してきた。かつて俺が時魔法を試す時に倒した魔物だ。
俺は槍を構えずに各種の魔法を発動させた。火、水、風の魔法を次々放つ。スモラはあっという間に焼き焦げ、溺死し、切り刻まれた。
「お兄さん、凄いね。魔物だけを的確に狙い撃ち出来るなんて。」
少年は驚いた様に言った。恐らく、周囲の草木や地面への被害を抑えて攻撃したからだろう。
「言われてみればそうだね。」
俺は思わず苦笑する。高レベルの魔法を使う者は周囲の被害を気にしない。というか高レベルの魔法を使う程の魔物が相手ならば周囲の被害など考えていられないのだろう。それ故に低レベルの魔法ですら周囲を破壊しながら使うのが一般的なのだ。少年からすれば余分な作業を行う変人に見えたに違いない。
「まあ、スモラとの戦闘が初見じゃないっていうのもあるけどね。」
「何だかお兄さんって変わった人だね。僕より冒険者慣れしてる感じがするよ。」
少年の発言に再び苦笑してしまう。同時に慣れって奴は恐ろしいなと脳内で呟いた。そもそも戦いが前提にある世界の構造に何の疑問も戸惑いも感じない。
この世界に来てから一年も経っていないのに世界に染まっていく自分……本当に元の世界に戻りたいのかと疑問に思うことすらある。
それから少年と俺は休憩を挟みつつ、依頼を再開した。スモラ以降魔物が襲って来る気配も無く、予定地を定め依頼は終了したのだった。
――――――――――――――――――――――――――
館がある。その館は深林の闇に紛れ、静かに佇んでいる。その館の中の一室に彼等彼女等は居た。
「で、どうする?」
紅き鎧を身に纏った傭兵騎士、クレイオが問う。
「概ね計画通りに流れは進んでいます。」
赤いローブを身に纏った男、エウテルベは淡々と答えた。
「奇術は既に暴かれたと見るのが妥当だろう。アヌンナキ……曲がりなりにも太極の神々達だ。」
道化師の格好をした男、タレイヤがアヌンナキに敬意を払う様に言った。
「アヌンナキ……世界に対する絶対の愛を謳う集団……迸る程の愛!!」
修道女の格好をした女、メルポルネは熱の入った表情で語る。
「そんな高尚な奴等かよ。その隔絶した才能は認めざるを得ねけどなぁ。」
白い軍服を着た男、テルプシエラは悪態をつきながら言う。
「そういう発言も程々にね。この会話も大方筒抜けだろうから。」
本を読みながら諌める様に呟くのは眼鏡を掛けた女、エトラだ。
「発言いい?勢力が拡大して、相応な階級を一人一人に割り振った。それでも人員が足りていないのが実状よ。」
続いて発言したのはハウンドのぬいぐるみを抱き締めている幼女、ポニムヒムニアだ。
「ででででででででも!!私達に進んで協力したい人達なんて、そうそうは居ませんよ!?」
そう反論するのは小柄な少女、ウラニアだ。
「……ウラニアよ、小生にも聞き取れる様に話してくれんか?」
「ふえぇぇ……」
そう言ったのは、黒い霧に包まれた謎の人型、カリオペラだった。声と口調から男性だと思われる。
「テメェの聞き取る才能が壊滅的なだけだろうが。ジジイなのは年齢だけにしろや。」
「わわわわわわ私が悪いのでテルプシエラさんは気にしないで下さいぃ!!」
ウラニアは更に泣きそうになりながら、カリオペラに説明する。
「エウテウベ、一つ聞いておきたいのだけど……」
ポニムヒムニアは、エウテウベにそう問うた。
「私の下僕を使って邪魔したい奴等が存在するのは分かるけど……それは計画には必要な事?」
エウテウベはその質問に対しては何も答えず、頷くだけであった。
「別に主義や主張を変えろだなんて言うつもりは無いけど……私達の目的はあくまで御父様の復活。」
部屋に集った者達は表情も変えず、ただ黙ってポニムヒムニアの話を聞いていた。
「ボクの……ボク等の父、記録官の再臨を望まない者なんてこの場には居ない筈だよ。」
エトラは読んでいた本を閉じると、一同を見渡しながらそう言った。
「小生にとっては父でも義父でもなく、大殿なのだがな。」
「おいジジイ、テメェは空気も読めなくなっちまったのか?」
だがエトラは気にした様子もない。
「でもカリオペラ……君は与えられた大恩を返す為にこの場に居るんじゃないのかい?」
「理解しておるわ。大殿に受けた恩を返さねば死んでも死にきれん。」
エトラはそれを聞くと、再び本を開いて読み始める。
「御恩と奉公、それもまた愛……愛に報いよ。」
メルポルネがそう言うとカリオペラは顔を顰める。
「……お前さんも変わらず歌舞いた娘よな。」
「貴方が言える発言でもありませんよ。」
エウテルベは言い終わると部屋を出た。
「家族団欒、言葉にすればそうなんでしょうが……その核となる者が居なければ虚しい言葉ですね。」
――――――――――――――――――――――――――
現在のステータス
生命力:B
魔 力:C
体 力:C
攻撃力:B
防御力:C
魔力攻:D
魔力防:D
走 力:B
現在使用可能なスキル
●身体、精神、霊魂に影響するスキル
『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。
『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。
『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。
『仮説組立(レベル5)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。
『解読』文や言語を理解するスキル。
『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。
『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。
『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。
『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある
●技術
『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。
『加工技術』加工の技術を高めるスキル。
『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。
『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。
●耐性
『寒冷耐性(レベル6)』寒さを和らげて、活動しやすくする。
『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。
『毒耐性(レベル4)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。
『酸耐性(レベル5)』触れた酸を中和させて、活動しやすくする。またこのスキルを発動すると、触れた酸と同質量の水が生成される。
『塩基耐性(レベル3)』触れた塩基を中和させて、活動しやすくする。またこのスキルを発動すると、触れた酸と同質量の水が生成される。
『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。
『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。
『恐怖体制(レベル1)』迸る恐怖を和らげて、活動しやすくする。
●魔法
『火魔法(レベル4)』火を操る魔法。
『水魔法(レベル3)』水を操る魔法。
『風魔法(レベル3)』風を操る魔法。
『時魔法(レベル4)』時を操る魔法。
『結界魔法(レベル1)』障壁を作り出したり、対象を拘束する魔法。
『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。
●加護
『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。
『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。
『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。
『魔強酸粘液の加護』魔強酸粘液から異種族に与えられる加護。
現在の持ち物
銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。
冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。
毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。
黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。
デモカイガの繭:デモカイガは卵から双子の幼虫が生まれ、その双子の繭は空間が捻じ曲げられたかの様に繋がっている。その性質を利用し音声を共有することが出来るが、一度しようすると繭の中から成虫が飛び出して使えなくなる。片方の繭をミズキ達が所持している。
グランベードの遺石︰グランベードが消滅時に遺した結晶。リザンテに呑まれ、そのまま取り込まれた。
異界冒険記 端孤みゃみゃ式 @tatibanayuuki
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