復讐の輪 花散る時
【復讐:一般に不当な酷い仕打ちを受けた者が相手に対して行う、やり返す等の攻撃行動の総称である。】
バンシィの本来の感情が霞むほど、物語の妖精達の感情が正負の感情関係無しにバンシィの中で渦巻いている。怒り、憎しみ、悲しみ、楽しみ、嬉しさ、不安、焦り……様々な感情が入り乱れている。
次々と変わる表情、いつの間にか禍々しい王冠を装備している。皮肉にもそれの姿こそバンシィが嫌う物語に出てくる王そのものだった。
「……氷城展開……行け我が眷属……影剃り発動……」
再び氷の城門が現れ、周りにハウンドの氷像が現れる。そして影の刃に氷の刃、今まで見た技が一気に放たれた。
「くッ!!」
技の威力は当然上がっている。だが、今までは魔法をもっと滑らかに使っていたはずだ、今はなんというか手動で無理矢理発動させている感じがする。
「……上等だ、全部貫くッ!!」
槍を一本手に取り、魔法を叩き壊しながら接近を試みる。
「キュイ!!」
俺の動きに合わせるようにリザンテが動き出した。
――――――――――――――――――――――――――
それに対してバンシィは……
「……」
自らの死因を思い出し、精神が壊れれつつある中、必死に抗っていた。いくら名前を思い出した魔物であっても精神が壊れてしまえば元も子もない。本来であればバンシィは上級冒険者級、レベルで言えばレベル50程の力を秘めていた。しかし、今のバンシィは中級……いやトモヤより少し強い程度まで力が落ちてしまっている。
「フフフフフフフフフフ……ああああああああああああ……五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い……五月……あれ?」
更に記憶が混ざり合う。バンシィは何故こんなことになったのかをゆっくりと思い出していく。
一万年以上前、この大陸を支配していた妖精族、その支配欲から人族が暮らしてた山奥にまで攻め込んだ。だが、追い詰められてからが人族の本領発揮だった。英雄ドワイト・ガリアの率いる軍が山奥から平原、森林、沼地に至るまでの全ての地形を巧みに使い妖精族を追い詰めた。
「……」
バンシィはその光景をはっきりと覚えている。それがバンシィの核、英雄や王に対する圧倒的な恐怖心。そして妖精族は人族に駆逐された。
バンシィは妖精族唯一の生き残りだった。
「フフ……フフフ……フフッ……」
バンシィは笑い出す。
悲劇はまだ終わらない。その後、バンシィは人族のとある作家に拾われた。その作家は妖精族に故郷の村を滅ぼされた過去を持ち、復讐の為に物語を書き始めた。
作家はバンシィの身体を貶めて犯して苦しめて、最後にタイタンの猛毒を飲ませて殺した。拷問とも呼べる行為の数々、それを作家の創作意欲を満たす為だけに繰り返された。
そしてバンシィが最後に思い出したのは、タイタンの猛毒を飲まされたあの瞬間。出血毒で口から血を吹き出しながら死んでいく孤独で惨めな自分の姿だ。ボロボロの衣服を自分の血で真っ赤に染める。化粧にしてはあまりに酷い有様。作家に殺されたバンシィと、そのバンシィがモデルになった物語の中の妖精族、二つの呪詛が混じり合うのは必然だったのかもしれない。
――――――――――――――――――――――――――
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
プツンと音が何処から鳴り、バンシィは叫ぶ。糸が切れる様な音、決して切れてはいけない何かが切れた。
「随分暴れましたね。ですがそのおかけで見つけることが出来ました。」
バンシィの無差別攻撃とも見える広範囲の攻撃を難なく避けながら、いつの間にかバンシィの後ろを取っていた茶髪の青年は言った。
「先生!!」
ミヅキが嬉しそうに声を上げた。そう副学長だ。
「ヒバリガワさん、喜ぶのは後ですよ。」
バンシィは大量の魔法陣に包まれていた。それは今まで見た事のない程複雑で巨大なモノ。
「ヒバリガワさんも手伝ってください。念には念を入れておきましょう。」
「分かりました!!」
魔法陣が回転して光りだす。
「結界魔法レベル6『魔封』、もう魔法は使えませんよ。そして封印魔法レベル2『触媒封印』、終わりです。」
魔法陣の回転がどんどん加速していく。そして回転が終わる頃にはバンシィは石像になっていた。
「ふぅ……ハガヤさん、助かりました。ヒバリガワさんから聞きましたよ、時間稼ぎをしてくれていたようですね。ありがとうございます。」
「いえ、俺に出来ることはこれくらいなので……」
「怪我人も多いことです。とりあえず安全な場所まで移動しましよう。」
全てが終わってみれば、どっと疲れが来た。でもまだ安心はできない。リゼは命に関わる傷では無いが重症だ。リザンテも鱗が氷で損傷している。兎に角、今は休んで回復に専念しよう。
《熟練度が一定に達しました。個体名"トモヤ・ハガヤ"がレベル11になりました。》
《身体の損傷を再生します。》
《スキルポイントを入手しました。》
《熟練度が一定に達しました。個体名"トモヤ・ハガヤ"がレベル12になりました。》
《身体の損傷を再生します。》
《スキルポイントを入手しました。》
《熟練度が一定に達しました。個体名"トモヤ・ハガヤ"がレベル13になりました。》
《身体の損傷を再生します。》
《スキルポイントを入手しました。》
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現在のステータス
生命力:B
魔 力:C
体 力:C
攻撃力:B
防御力:C
魔力攻:D
魔力防:D
走 力:B
現在使用可能なスキル
●身体、精神、霊魂に影響するスキル
『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。
『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。
『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。
『仮説組立(レベル5)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。
『解読』文や言語を理解するスキル。
『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。
『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。
『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。
『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある
●技術
『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。
『加工技術』加工の技術を高めるスキル。
『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。
『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。
●耐性
『寒冷耐性(レベル6)』寒さを和らげて、活動しやすくする。
『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。
『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。
『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。
『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。
●魔法
『火魔法(レベル4)』火を操る魔法。
『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。
『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。
『時魔法(レベル1)』時を操る魔法。
『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。
●加護
『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。
『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。
『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。
現在の持ち物
銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。
冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。
毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。
黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。
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