現実感と暗躍する影

【アガレス領ギルド職員︰アガレス領のギルド職員は元々戦闘経験がある者が多く所属している。アガレス領は北にガリア平原、北東にガリア帝国跡地、西にはエイハブ山脈がある。危険地域に多く面しており、魔物の大量発生などのトラブルに対処する為である。その為冒険者の数も他の地域よりも多く、またその質も高い。】


「巨赤に緑雷、白翼ねぇ。」


ギルドの掲示板に貼られていたのを見て呟く。そもそもあの三体が同時に戦えばあのような身体の変化が出るのは冒険者達の間で知られていたことらしいが、三体同時に変化する事象は前例が無い自体らしい。

ルシエドさん曰く、オークによる環境破壊の影響で生態系が崩れていることや、エイハブ山脈で連日続く大雨により、水棲の魔物達が活発になっているのではないかと言っていた。


「ギルドはここ数日忙しそうだな……」

「当たり前です。」

「うぉっ!?ビックリした!」


突然背後から現れたのは受付嬢だった。


「まだオーク被害による環境復興の依頼は残っています。それに加えて二つ名持ちが三体も現れましたからね。」

「そんなに大変なんですか?」

「オーク騒動で荒れ果てた土地やエイハブ山脈の開拓作業、オーク達の死体の処理、それにエイハブ山脈付近は大雨の影響で川の氾濫の可能性が高く、調査依頼も出ています。」


うへぇ……聞いただけでギルド職員も冒険者も大変そうなのがわかる。


「なのでトモヤ様もギルドの支援、何時でもお待ちしております。」


口調も表情も変わってないが、圧が凄い。


「ギルド職員の募集も行っていますが……」


怖い。とても怖い。そして大量の書類を持ったギルド職員達も笑顔でこちらを見ている。全く目が笑っていない。


「えっと……考えておきます……」


そう言って逃げるようにギルドを去った。


「キュイ?」


リザンテはどうしたのかと聞いてきた。


「まぁ……人間社会には色々とあるんだよ……」

「キュイ〜」


リザンテは納得したのか、軽く鳴いた。すると……


「ハガヤ殿ではございませんか!ちょうど良いところに!」


彼はオーク騒動時に、オークの第一陣を発見してギルドや街中に知らせてくれた冒険者の人だ。


「実は……お願いしたいことがありまして……」

「お願いですか?」

「はい。ハガヤ殿はゲカルドゲという魔物を知っていますか?」

「確か……岩場に生息する魔物でしたよね。」

「それがエイハブ山脈の開拓中に発見されたのです。」

「我々としても放置するわけにもいきませんでしたので、討伐を試みたのですが……これがまた手強く……そこで少数精鋭で討伐しようと思いまして。」

「俺にも手伝って欲しいということですね。」

「はい!!報酬の方は弾みますので是非とも!!」

「俺以外には誰が参加するんですか?」

「私と、もう一人の冒険者が参加します。」


そんなに少数で大丈夫なのかと一瞬思ったが、そもそもこの人はオーク騒動時に受付嬢が率いる偵察班の一人だった。実力はあるだろうし信頼出来るはずだ。俺もまた修行の成果を確かめるいい機会だと思った。


《ゲカルドゲ︰山岳地帯に生息する岩型の魔物。本体は黒いガス状の気体である。主に幻覚や夢を操る攻撃を得意とし、獲物の精神を蝕む。》


――――――――――――――――――――――――――

静かな森に、鳥の鳴き声が響く。鳴き声の正体は鳥型の魔物キョウムだった。どうやらこのキョウムは完全に使役されているようで、主人の命令に従い森の奥を進んでいった。


「……来ましたね。」


キョウムは目的の場所に到着した。そこには赤いローブ姿の男が立っていた。キョウムの右足には手紙のようなものがくくりつけられていた。


「ありがとうございます。」


男は恭しく頭を下げ、キョウムに礼を言う。


「エイハブ山脈で出現したオークロード討伐……アガレス公はエイハブ山脈の開拓を本格的に始める……」


男は自分の左薬指に指輪を嵌めた。その指輪の宝石は赤ではなく、青く輝いていた。


「はぁ……行きますよ。」


男はため息を吐き、部下を呼び出す。


「だ、旦那!!あれは一体なんなんだ!?」

「おや……結局生き残ったのはあなただけでしたか。やはり思考能力が乏しい連中は生存が厳しいようですねぇ。」

「グヘヘ……そりゃどうも。」


どうやら部下の男は一人だけ生き残った事実に優越感を得たようだ。


「相変わらず汚らわしい笑い方ですね……それとあなたも生き残ったからといって油断しないように……」


ローブの男は部下に目も向けず、歩き始めていた。


「待ってくれよ!?旦那ぁ!!」


キョウムは部下の男を馬鹿にするように鳴きながら飛び去っていった。


「ゲカルドゲ……一体ほど確保出来れば計画には十分ですかねぇ……」


ローブの男の声は森の影にゆっくりと吸い込まれていった。


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

生命力:B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル2)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル4)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。

『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル3)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。

『時魔法(レベル1)』時を操る魔法。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

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