海老と川獺と虎 強き獣には武具を

【二つ名持ち︰通常の魔物とは何らかの差異があると判断された場合、ギルドが注意喚起として発表するもの。もしオークロードの討伐が困難だった場合二つ名持ちになっていた可能性は高い。】


《熟練度が一定に達しました。『加速(レベル9)』が『加速(レベル10)』に上昇しました。スキル『加速(レベル10)』が『多重加速(レベル1)』に進化しました。》


エイハブ山脈で修行して三日経った頃、ようやく新たなスキルを手に入れた。早速使ってみるか!


「……よしっ!いくぞ!」

「キュイ!」


多重加速を使用する。身体が軽くなった感覚があり、走ってみると今までとは比べ物にならないスピードが出た。


《熟練度が一定に達しました。スキル『時魔法(レベル1)』を獲得しました。》

《熟練度が一定に達しました。スキル『風圧耐性(レベル1)』を獲得しました。》


「よしっ!これで時魔法も手に入れた!」


それにしても風圧耐性を獲得したということは、とんでもない速度で走っていたのだろう。


「時魔法レベル1で使えるのは老化か……」


一秒当てる毎に、一日老いさせることが出来るらしい。どうやらレベルが上がると精度も上がるようだ。対魔物というよりは対人向きの能力だな。だが今の所、使い道は無いだろう。


「キュイ!!」


リザンテは俺に急ぐように促す。何かあったのか?リザンテについて行くとそこには男の死体があった。どうやら死亡してから数日経過しているみたいだ。

死体の腐敗具合を見るに、オーク騒動の時に殺された冒険者では無いように感じる。死体は防具ごと何かで抉られた跡がある。跡を詳しく調べると大きな爪痕だと分かった、つまりこの辺りの魔物の仕業に違いない。


「ん?」


よく見ると魔物の糞がある。鑑定を発動すると……


《エルドタイガーの糞︰エルドシュリンプ、エルドオオウソと争う強力な虎型魔物の糞。エルドタイガーは縄張り意識が強く、縄張りに侵入した生物を容赦なく排除する。》


エルドタイガーの縄張りに入ってしまったのだろう。それでこの冒険者は襲われて死亡したのだと思われる。


「グルルゥ……」


敵意感知に反応あり……ゆっくり振り返ると……


「グルルル……」


そこには体長40mはある巨大な虎がいた。


「グルアァッ!!!」

「くそっ!やるしかないか!?」

「キュイ!」


俺とリザンテは戦闘態勢に入る。エルドタイガーは槍を警戒しているのか、こちらに向かってこない。先手必勝だ! 俺は火球を飛ばす。


「グルゥッ!」


エルドタイガーはそれを避けずに、そのまま突っ込んでくる。やはりオークロード級の魔物だけあって耐久力も高いな。

そして一番の脅威はあの爪だ。単純な爪の大きさだけではなく、大量の病原菌が付着しており、かすっただけでも致命傷になりかねない。

ここは逃げるしか無いか……俺は多重加速を発動し、全力で走る。


「おいおい……嘘だろ!?」


しかし相手は巨体にも関わらず、猛スピードで追いかけてきた。そもそも加速の時点でオークロードの攻撃を避ける程の速度なのに、多重加速を使っているのに追いつくとかどういうことだよ!


《『多重加速(レベル1)』が『多重加速(レベル2)』に上昇しました。》


レベルアップの上昇分、更にスピードを上げる。だがそれでも引き離せない。ん?僅かだが水の音が聞こえるな……もしかしたら湖があるかもしれない。そこでならなんとかなるかもしれない……

俺は進路を変更し、音が聞こえる先へ逃げた。

後ろを確認すると、エルドタイガーがすぐそこまで迫っていた。これは賭けだ……湖があることを確認した俺は水の中へ飛び込んだ。


「キシャァ!!」


ビンゴ!!この辺の水辺にはエルドシュリンプかエルドオオウソがいる場合がある。運がいいのか悪いのか、なんと両方もいた。

そして三つ巴の争いが始まった。三体の怪物達は湖を飛び出し暴れ始める。その隙に俺も岸まで泳いで脱出した。


「全く……命が何個あっても足りないぞ……」

「キュイ!!」


リザンテは大丈夫だと言うように鳴いた。三匹の戦いは更に激しさを増していく、まるで第二ラウンドと言わんばかりに三匹の肉体に変化が起きる。

エルドタイガーには翼が生え、エルドシュリンプはとんでもない速度で脱皮し肥大化している。エルドオオウソに至っては口から雷のような光線を発射した。

とんでもない生態を目撃した俺は、流石に帰還することにした。ちなみに後日談だが、エルドシュリンプ、エルドオオウソ、エルドタイガーはギルドから二つ名持ちとして認定された。


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

生命力:B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル2)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル4)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル2)』音のダメージを和らげて、活動しやすくする。

『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。←new


●魔法

『火魔法(レベル3)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。

『時魔法(レベル1)』時を操る魔法。←new

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

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