戦でしか生きれぬ豚頭

【生贄召喚:基本的に召喚者の血肉や魂などの対価を必要とする。オークロードの場合は召喚者が一体では召喚できないため、周囲のオークの死体を利用したと考えられる。】


「くそ!!やられた!!」

「上を見ろ!!」


天井には巨大な緑色の肌をしたオークがいた。


「あれが……オークロード?」

「同胞達が世話になったな……」

「オークロード……本当に存在したとは……」


ルシエドは冷や汗を流していた。


「貴殿等に恨みは無いが死んでもらうぞ……」


オークロードは拳を振り下ろす。俺は咄嵯に避ける。だが地面が大きく凹んだ。


「グオォオオオッ!!」


雄叫びを上げて、口から炎の玉を出す。それを俺は避けて、すぐに槍で反撃するが……


「硬いな……」

「ここ奥には行かせんぞ……同胞達が最期に残した子等が静かに眠っているのだからな……」

「悪いが殲滅戦なんでね……通してもらうぞ。」


ルシエドさんが剣を振るう。だがオークロードには傷一つ付かない。


「ちぃ……どうなってる?」

「我は最強の戦士だ。毛無しの猿等に討たれる程、脆くは無い……」

「そうかい……ならこいつはどうだ?」


ルシエドさんは魔力を込めた斬撃を放つ。しかしそれも全く効果が無かった。


「無駄だと分からないのか?」

「そうみたいだな……」

「これならどう?竜魔法!!竜砲!!」


リゼが唱えるとオークロードの周りを囲むように光の塊が出現する。そして一気に光が膨張し爆発する。


「ぐぉおおおっ!!」


流石にこれには耐えられなかったようでかなりのダメージを与えたようだ。


「今だ!!」


俺達は一斉に攻撃を始める。ルシエドさんも攻撃を始めている。


「コノ野郎!!」


リュウジが拳を叩きつける。しかしそれすら弾力のある脂肪に弾かれてしまう。


「コイツヤバイゾ!!」


そう言いながらもリュウジは攻撃を止めない。


「グハァッ!?」


ついにオークロードの体に亀裂が入る。


「よし!!このまま押しきれれば!!」


そう思った瞬間……


「フハハッ……人族風情が調子に乗るな!!」

「何っ!?」


ルシエドさんが驚く。すると突然、オークロードの腕が肥大化する。そして俺達を吹き飛ばした。


「ガッ!?」

「グワッ!!」


俺達は壁に激突してしまう。


「……今のは一体……」

「フン、我が最強の戦士たる所以を教えてやろう……」


オークロードの体がどんどん肥大化していく。


「我が名はオークロード!!同胞の血を全て受け継いだ者也!!」


オークロードの体はあっという間に洞窟を埋め尽す巨体になっている。


「これが……オークロード……」

「凄まじいな……」

「アァ、コレハ只ノ豚ジャ無イナ……」

「ウガガガガッ!!」


オークロードの体が変化し始める。オークロードを召喚したオークは人族やゴブリンなどの血を引いた混血と混血のハーフだった。そのせいで召喚したオークロードにも影響が起こったようだ。その結果、皮膚の色はどす黒い緑色になり、腕が更に巨大化し、背中には翼のような器官ができた。


「さぁ、始めようか……真の闘争生存戦略を!!」


オークロードはこちらに向かって走ってくる。


「来るぞ!!」


オークロードは洞穴の外に出るために突進してくる。


「全員退避!!」

「ブヒィイイッ!!」


俺達は外に出る。オークロードも外に出てくる。


「グオォオオオッ!!」


オークロードは空に飛び上がると口から炎の玉を吐き出す。


「危ない!!」


神官達が前に出る。そして……


「プロテクションシールド!!」


俺の目の前に巨大な光の盾が現れる。


「竜盾!!」

「火盾!!」


俺やリゼも盾を展開する。だがオークロードの攻撃は強烈だった。


「グオオォッ!!」

「くそ……なんて威力だ!!」

「こっちの方が押されてるわ!!」


炎の玉は神官や俺達が展開した盾に簡単にヒビを入れる。


「キュイ!!」

「どうしたリザンテ!!」


リザンテの見ている場所は……オークロードの眉間だった。そこには大きなエメラルドの様な宝石があった。


「まさかあの場所が弱点か?」


確かにオークロードの身体は肥大化しているが、顔の部分はそこまで大きくなっていない。恐らくエネルギーが頭ではなくあの宝石に集中されているのだろう。オークロードに勝つに為には……



《熟練度が一定に達しました。スキル『仮説組立(レベル1)』が『仮説組立(レベル2)』に上昇しました。》


俺は作戦を考えた。そしてすぐに実行に移す。


「リゼ、リュウジ!!援護してくれ!!」

「分かったよ!!」

「ワカッタ、ナ二ヲスル?」

「リュウジはオークロードの攻撃を何分耐えられる?」

「八分ッテトコロカ。」

「十分だ。リゼは竜砲で……」

「分かったわ!!」


俺は作戦を説明する。


「竜砲!!」


リゼが放った竜砲はオークロードの周囲を囲む。


「それはもう効かぬ!!」


そもそも竜砲はオークロードを狙っていない。光が弾けて周りの岩や地表が砕け砂となる。そして爆風の影響でオークロードの周りに砂煙が発生する。


「オラ!!」

「ナイスだ嬢ちゃん!!」


リュウジやルシエドさんが砂埃を物ともせずに攻撃する。

他にも一部の冒険者達が遠距離攻撃を行う。


「ちまちまと…」


オークロードは恐らく視力が悪いのだろう。砂塵の中から攻撃をしている二人を見失っている。そして俺の狙いは……


「加速!!」


俺の姿が消える。そしてオークロードの背後に回る。


「喰らえ!!」


オークロードも俺を攻撃するが、加速した俺は攻撃を軽々避ける。


「何!?」


俺の槍がオークロードの脳天に直撃する。


「ヌゥウウッ!!」

「まだだ!!」


オークロードの肩に乗り、更に連撃を叩き込む。すると少しづつ宝石が削れていく。


「グハァッ!?」


やはり宝石が弱点だった!!オークロードは完全に怯んだ様子で倒れそうになる。


「そこだ!!旋律!!」


俺の攻撃に音が、想いが、魔力が乗る。


「キュイ!!」


そしてリザンテの鳴き声も槍に乗る。


「グワァアアッ!?」


パッリンッ!!と音を立ててオークロードの宝石が割れた。


「人族風情に…我が…負けるだと…貴様…名は…」

「トモヤ・ハガヤだ!!」

「そう……か……同胞達よ……すま……ぬ……子供達を……守れな……」


オークロードは最後まで喋ることはできずに絶命した。するとオークロードは光に包まれ消えていった。恐らく召喚された魔物は死体が残らないのだろう。


「終わった……」


《熟練度が一定に達しました。個体"トモヤ・ハガヤ"がレベル7になりました。》

《身体の損傷を再生します。》

《基礎戦闘力が上昇しました。生命力がCからBになりました。》

《スキルポイントを入手しました。》


《熟練度が一定に達しました。個体名"トモヤ・ハガヤ"がレベル8になりました。》

《身体の損傷を再生します。》

《基礎戦闘力が上昇しました。攻撃力がCからBになりました。》

《スキルポイントを入手しました。》


《熟練度が一定に達しました。個体名"トモヤ・ハガヤ"がレベル9になりました。》

《身体の損傷を再生します。》

《基礎戦闘力が上昇しました。走力がCからBになりました。》

《スキルポイントを入手しました。》


「ウサ子居るか?オークの幼体はどうなった?」


すると受付嬢が洞穴から数人の冒険者を連れて出てきた。


「オークロードが洞穴に出た時点で、私と偵察班が即座に処理しました。」

「そうか…おい坊主!」

「……はい。」


流石に疲れた。返事が遅れてしまう。


「お前よくやったぜ!!あんな大物を討伐出来る奴は中々居ねぇぞ!!」

「いえ……皆さんのお陰です……」

「いや弱点を見つけて、作戦考え出したのは君だろ?ナイスファイトだよ。」


他の冒険者も褒めてくれる。


「あぁそうだ、報酬はどうなるんだ?」

「今回のオークロードは金貨50枚で良いでしょう。」

「マジかよ!大儲けじゃねえか!!」

「功績者の坊主には追加で銀貨10枚の贈呈って事でいいんじゃねーか?」

「そうだな。」

「異議無し!!」


こうして俺はオークロードを倒した功績により、一気に他の地域にも名前が広がったらしい。こうして大規模クエストは本当に終わりを告げた。


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

生命力:C→B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:C→B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:C→B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル2)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『加速(レベル3)』身体の速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル4)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル2)』音のダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル3)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(無名):ヴィクター・アガレスが使っていた槍。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る