豪雪に眠る
【オークの拠点:オークは山岳地帯の洞穴に大規模の拠点を作ることが多い。中には攫ってきた異種族の女性がメスのオークによって管理されている。無理矢理産まされた子供は洞穴の一番奥にいることが多い。今回のオーク達の拠点は街の西にあるエイハブ山岳にあるとギルドの探索班が発見した。】
「強くなりたいなら、自分の原点を見つけるべきじゃないか?」
怪我がある程度治ると、俺は直ぐに修行を始め様としていた。やはり先人の教えは大事だと思った為、俺はギルドの飲酒室で酒を飲んでいた冒険者にそう聞いたのだ。
余談だが、一般的には飲酒室で飲む方がマナーが良いとされているらしい。ルシエドさんはギルドのいたる場所で酒を飲んでいるが……
「俺の原点……」
ガリア平原での日々が脳裏に過った。ただ生き残る為に必死で魔物と戦い、そして自然環境とも戦ったあの日々を……
過酷な環境下の中でこそ人は強くなるというが、確かにその通りかもしれない。それに、あの日の経験があったからこそ、今の俺がある。何故ガリア平原で生き残れたかと聞かれれば、確実に俺に実力では無いと思う。運の要素がかなり強かった筈だ。
だからこそ、俺は運の様な一時的な強さではなく、実力を身に着けなければならない。このままではオークに勝つどころか、この先を生き残ることすら出来ないだろう。
「おう兄ちゃん、クエストかい?」
いつもの皮装備の門番が話しかけてきた。色々考えている内に、いつの間にか門の前に着いていた。ほぼ無意識ながら、足はこの場所に向かっていたらしい。どうやら俺は再びあの場所に行かなくてはならないようだ。
「オークがまだ何処かに潜んでいる可能性がある。気を抜くなよ。」
金属鎧の門番が冷静に警告する。やはり彼等も安心している訳では無かった様だ。まあ当然と言えば当然である。
「……はい。」
俺は曖昧に返事をする。何だかんだ装備はしっかり持って来ていた。門を出て、この前リザードマンと戦った森林を進む。森林を抜けると街道に出るので、そのまま北上する。道に沿って歩いて行くと、川が見えてきた。この川を辿ればガリア平原まで行けるが、この辺りで一旦休憩を取ることにした。
河原に下りて、川の水に対して浄化を発動する。手ですくって口に含むと、冷えた雪解け水が身体の中を流れていく感覚が心地良い。
軽く腕を回したり屈伸をしたりして身体を伸ばしてから、北上を再開した。ある程度進んだところで雪が降るエリアに入り、吹雪いている中を進み続けると、当然視界が悪化する。川に辿っていなかったら完全に迷っていただろう。
《熟練度が一定に達しました。スキル『寒冷耐性(レベル3)』が『寒冷耐性(レベル4)』に上昇しました。》
「……うッ!!やっぱ寒ッ!!」
常に吹雪が舞う土地ではあるし、気温が低いのは当然だ。だが、俺にとってこの寒さは非常に懐かしさを感じるものだった。
「……よし、行くか。」
しばらく歩くと、見覚えのある場所に出た。
「あっ、ここって……」
そこはかつて俺が死にかけた場所の一つ、タイタンと戦った場所だった。タイタンの死体は一切残っていなかったが、その戦いの跡はまだ残っていた。大木が倒れてその上に雪が積もっている。雪の積もり方に違和感を感じる部分が所々にあり、おそらくこれがタイタンとの戦いの跡なのだろう。
「敵意感知……ハウンドか。」
敵意感知に反応があった。五体のハウンドが俺に対して警戒しながら近付いてくる。俺は槍を構えながら南東に目線を向ける。目視で確認出来る場所にはハウンドの姿は無いが、敵意感知が確かにそこにいると告げている。
「いくぞッ!!」
俺は走り出した。加速を発動しながら距離を詰めて、槍の一振りで二体のハウンドの首を跳ね飛ばした。
「あと三体……」
しかし残りの三体は左右に別れて逃げてしまった。
「くそっ!逃がしたか……」
俺は追いかけようとしたが、ハウンドの姿は既に見える範囲から消えていた。
「取り敢えずは問題無く倒せたし良しとするか。」
こうして俺は再び平原を歩き始めた。それからしばらくして、俺は拠点にしていた洞窟の前に立っていた。俺は警戒しながら洞窟に足を踏み入れた。
「ギャアァ!!」
そこにいたのは、骨を加工している鼻が長い魔物だった。
《ヤコバク︰二足歩行の象型魔物。骨を加工して武器や防具を作る。体格がしっかりとしている故に非常に鈍足。》
俺はこいつの作った武器を街で見たことがある。確か名前は……ドクロの杖だ。 効果は魔法の効率を上げる杖だった気がする。
「ギャアァ!!」
目の前のヤコバクは襲いかかってきた。俺はそれを難なく避けた。鑑定の説明通り、動きはかなり遅い。難無く避けることが可能だ。俺は槍を構えて突進した。ドッ!と鈍い音がして俺の槍がヤコバクに突き刺さる。ヤコバクは断末魔すら吐けずに絶命した。
《熟練度が一定に達しました。個体名“トモヤ・ハガヤ”がレベル5になりました。》
《身体の損傷を再生します。》
《基礎戦闘力が上昇しました。》
《スキルポイントを入手しました。》
戦闘が終わると同時にレベルアップのアナウンスが脳内に流れた。
レベルが上がったのか……しかし、それよりも気になることがあった。
「こいつが加工した骨は、ハウンドの骨が多い気がする……」
恐らく俺がこの洞窟に残したものだろう。肉や皮など資源は俺が街に持ち帰ったが、骨の様な使い道がないものはそのまま放置していた筈だ。
《熟練度が一定に達しました。スキル『考察(レベル9)』が『考察(レベル10)』に上昇しました。スキル『考察(レベル10)』が『仮説組立(レベル1)』に進化しました。》
遂に考察が進化した。効果を見てみると、信憑性がある考えを導き出せるらしい。例えば、洞窟付近にハウンドが多く出る理由は、近くに餌場があるからではないか?という感じの考えが脳裏に浮かぶようになった。これはかなり便利なスキルだと思う。
俺は洞窟を出る前に、スキルポイントを使うことにした。最後に使ったのが加速を獲得した時なので、スキルポイントは多く残っている。俺は迷わずに全てのスキルポイントを使ってことにした。
≪要請を確認しました。スキルポイントを消費してスキル『風魔法』『水魔法』『加工技術』『斬槍技術』『象兵の加護』を獲得しますか?≫
≪スキル『風魔法(レベル1)』を獲得しました。残りスキルポイントは1700ポイントです。
スキル『水魔法(レベル1)』を獲得しました。残りスキルポイントは1200ポイントです。
スキル『加工技術』を獲得しました。残りスキルポイントは1100ポイントです。
スキル『斬槍技術』を獲得しました。残りスキルポイントは1000ポイントです。
スキル『象兵の加護』を獲得しました。残りスキルポイントは0ポイントです。≫
今回は五つのスキルを獲得した。どれも強力なスキルばかりだ。特に『象兵の加護』。先程倒したヤコバクからの加護らしい。その他には、リザードマンがよく使っているのを目にする水魔法。風魔法はアベルさんのおすすめだ。
その後軽く探索をして街に帰ることにした。帰る時は加速を使ってみることにした。
《熟練度が一定に達しました。スキル『加速(レベル1)』が『加速(レベル2)』に上昇しました。》
《熟練度が一定に達しました。スキル『加速(レベル2)』が『加速(レベル3)』に上昇しました。》
やはり移動には加速を使った方がいいだろう。次は戦闘に活かせるよう、もっと使いこなさなければ……そんなことを考えているうちに街に着いた。
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現在のステータス
生命力:C
魔 力:C
体 力:C
攻撃力:C
防御力:C
魔力攻:D
魔力防:D
走 力:C
現在使用可能なスキル
●身体、精神、霊魂に影響するスキル
『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。
『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。
『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。
『仮説組立(レベル1)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。
『解読』文や言語を理解するスキル。
『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。
『加速(レベル3)』身体の速度を上昇させるスキル。
●技術
『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。
『加工技術』加工の技術を高めるスキル。←new
『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。
『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。←new
●耐性
『寒冷耐性(レベル4)』寒さを和らげて、活動しやすくする。
『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。
『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。
『爆音耐性(レベル1)』音のダメージを和らげて、活動しやすくする。
●魔法
『火魔法(レベル3)』火を操る魔法。
『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。←new
『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。←new
『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。
●加護
『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。
『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。←new
現在の持ち物
銀の槍(無名):ヴィクター・アガレスが使っていた槍。
冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。
毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。
黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。
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