第394話 南太平洋艦隊(ユナーツ)vs南洋支援艦隊(アマト国)
南洋警備隊の巡視船が、ユナーツの巡洋艦に沈められたという報告を受けたソウリンは、真実かどうかを確かめるために南洋支援艦隊を率いてニューカレドニアへ向かった。
ニューカレドニアへ向かったのは、開拓村の近くでユナーツの軍船を見たという報告があったからだ。ソウリンはニューカレドニアの開拓村が襲われるのではないかと危惧した。
ソウリンと一緒に水上機母艦イワキに乗り込んだドウセツは、水上偵察機を飛ばして敵艦隊を探した。とは言え、敵艦隊が見付かるとは考えていなかった。
敵艦隊はニューカレドニア付近の海域に居て、途中の海域には居ないと思っていたからだ。ただ訓練のために捜索していたのである。
だが、ソロモン諸島の近くで水上偵察機が南太平洋艦隊を発見した。偵察員はすぐに水上機母艦に向けて、無線電信で伝える。
その報告を受けたソウリンは、南洋支援艦隊の進路を南太平洋艦隊に向けた。
「ユナーツめ、グアム島基地を攻撃するつもりだな。そうはさせるか」
ソウリンはドウセツに水上偵察機を飛ばして、南太平洋艦隊の位置を見失わないようにと命じた。
水上偵察機から連絡を受けて敵艦隊の航行ルートを推測したソウリンと参謀たちは、それを海図に描き込んだ。
「このルートだと、この島と隣りにある島の間を通過して、北上するだろう。待ち伏せられないか?」
名前が付いていない島を縫うように敵艦隊は進んでくる。
ドウセツは海図を見ながら、一点を指さした。
「ここの島影に、駆逐艦隊を潜ませておいて、狙わせるのはどうでしょう?」
「島の大きさから考えると、三隻が限界だと思うが、駆逐艦三隻の魚雷で戦果を上げられるか?」
「敵艦隊が全く気付かず魚雷を受けた場合、三発の魚雷が命中すれば、戦艦でも行動不能にできます」
それを聞いたソウリンが納得して頷く。
「ならば、狙ってみるか」
ソウリンたちは検討を続け、作戦案を仕上げた。駆逐艦三隻が先行する形で動き出す。
待ち伏せを任された三隻の駆逐艦の中の一隻であるナンザンは、南洋では珍しくない小さな島の陰に潜んで敵を待った。
「敵艦隊は、本当にここを通るのか?」
駆逐艦の艦長であるクワナ・トシハルが不安そうな顔を見せた。それを聞いた副長のシラセ・ナオクニが苦笑いする。
「艦長、予測なので絶対とは言えませんが、可能性は高いはずです」
「まあ、そうなんだろうな。だが、外れた時の事を考えると不安になる」
「提督たちも馬鹿じゃありませんよ。外れた時の対応も考えているはずです」
その時、兵の一人が報告に現れた。
「敵艦隊が現れました」
「当たったか。戦闘準備だ」
駆逐艦の軍人たちが忙しそうに動き始めた。島影から飛び出した駆逐艦三隻は、敵の旗艦である戦艦に向かって全速で向かう。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
その時、南太平洋艦隊の指揮官であるヴィンセント・ブライトマンは、艦橋で海を見詰めていた。
「キャボット参謀、今回の命令をどう思う?」
「軍の上部は、早く戦争を始めたいのかもしれませんね」
「今なら勝てると考えているのか?」
「相手はアマト国ですからね。確実に勝てるとは言えません」
「ほう、参謀は悲観的なんだな」
「楽観的な参謀は怖いですよ。何事もイケイケで作戦を進めますからね」
「その意見には一理ある。ところで、アマト国の実力をどう考えている?」
「ある面では、我々より進んでいると思います。ただ戦力というのは、数が重要になります」
ブライトマン提督が静かに頷いた。
「それは理解している。だが、アマト国の戦力が今ひとつはっきりしないのが、問題なんだと思う」
「あそこの諜報組織は、優秀ですからね。しかし、国力から考えて建造した戦艦と巡洋艦の数は、我が国が上なのは確実です」
戦艦を含む艦隊が島と島の間を抜けて北上しようとした時、見知らぬ軍艦が戦艦に向かって迫ってきた。
ブライトマン提督の耳に『敵』という言葉が聞こえてきた。双眼鏡を手に取った提督は、三隻並んで近付いてくる小型の敵艦を見て、嫌な予感を覚えた。
提督は
「なぜ、小型の軍艦が戦艦に近付いてくる?」
「提督、もしかすると魚雷では?」
キャボット参謀の言葉を聞いたブライトマン提督が
「艦長、あの三隻から離れるんだ」
「イエッサー」
その声が響いた瞬間、三隻の駆逐艦から魚雷が発射された。海中に投下された魚雷が上げる水飛沫が見え、白い航跡が戦艦に近付いてくるのを発見した。その航跡の数は十二本。
戦艦の艦橋はパニックとなった。各人が勝手に叫び声を上げ、最後の瞬間は白い航跡が戦艦の舷側に突き刺さるのを見詰める者が多かった。
四本の魚雷が戦艦に命中。爆発音が鳴り響き、戦艦の船体が大きく揺れる。ブライトマン提督は衝撃で床に投げ出された。
起き上がった提督が怒鳴り声を上げる。
「クソッタレが! ……被害を報告しろ!」
「船首倉庫に亀裂、ここは修理可能です」
「第一ボイラー室に浸水、出力が低下しています」
続々と被害が報告され、蒸気機関の出力が上げられないと分かった。
ブライトマン提督が唇を噛み締めて、方向転換して離れていく敵駆逐艦を睨んだ。
「一隻も沈められなかったのか? 不甲斐ないにもほどがある」
そこに南洋支援艦隊が接近した。
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