第2話 萌彩と舞彩
「信じていいのか」
いったんホッとした八雲だったが、しかし、今度は不安が沸き起こってきた。八雲は萌彩を見る。やはり、まだ幼い顔をしている。ただ童顔なだけでは絶対にない。
バ~ン
すると、また奥の扉が勢いよく開いた。八雲はビクッとして、背筋が伸びた。
「さっ、行こうぜ」
さっき出てきた少女が再び出てきて、そのまま二人の方へ颯爽とやって来た。そして、八雲の前に立つ。
「えっ?」
八雲は少女を見上げた。
「えっ?じゃなくて、早く行くぞ」
「行くぞって、ど、どこへ?」
八雲は、少女に対しておずおずと聞く。
「どこってお前んちだろ」
八雲は、目をしばたいた後、萌彩を見た。萌彩は相変わらず落ち着いている。
「・・・」
八雲はもう一度、出てきた少女を見上げた。やはり出てきた少女は萌彩にそっくりだった。八雲はさらに混乱した。
「こちらは専務の舞彩です」
萌彩が落ち着いた口調で、手の平を上にして少女の方に向けた。
「専務?」
「はい」
それにしても似ている。滅茶苦茶そっくりだ。というかクローン人間のようにまったく同じだった。
「あの・・」
普段経験したことのないことを目の前にすると、頭が混乱してうまく言葉が出てこない。
「私たち双子なんです」
萌彩が言った。
「えっ」
八雲はあらためて、二人の少女を見比べた。二人は、やはりうり二つだった。
「なるほど・・、それで・・、そうだったんですか・・、どおりで・・」
双子と聞いて八雲はやっと得心がいった。
「いいから、さっさと行くぞ」
舞彩が苛立たし気に言った。
「い、今から?」
再び八雲は舞彩を見上げる。
「そうだよ。当たり前だろ」
「あの・・、あなたが?」
「そうだよ。実際見てみなきゃ分かんないだろ」
「あの、他にスタッフは?というか大人の人は?」
八雲は、事務所内を見回した。
「この事務所は私たち二人だけですよ」
萌彩が落ち着いた口調で言った。
「えっ!二人だけ?」
改めて八雲は萌彩と舞彩を見た。どう見ても高校生くらいだ。下手をすると中学生にすら見えなくもない。
「君たちいくつ?」
「十六」
二人は全く同時にハモルように言った。
「・・・、こ、高校生・・?」
「違うわ」
舞彩が言った。
「えっ」
「だって高校行ってないもん」
「・・・」
八雲は、しばしその場で茫然と萌彩と舞彩を交互に見つめた。そして、おもむろに立ち上がった。
「じゃあ、今回はなかったことに・・」
八雲は、軽く頭を下げると、そのまま出口に向かった。
「あたしたちが、子供だから?それとも、高校に行っていないから?」
舞彩が険しい顔で、事務所を去ろうとする八雲の背中に言った。
「・・・」
八雲が立ち止まり振り返る。
「能力に年なんか関係ない。出来る奴は出来る。出来ない奴は出来ない。違う?」
「・・・」
八雲はしばらく黙って舞彩を見つめていた。
「でも・・」
しかし、八雲は再び舞彩たちに背を向け歩き出した。
「他に行く当てもないんだろ」
「うっ」
八雲は再び立ち止まった。その通りだった。
「他に助けを求めた。でも、笑われるか、バカにされるか、頭がおかしいと思われたか、それで散々、彷徨った挙句ここに辿り着いた」
「ううっ、なぜそれが・・」
「ここに来る奴はみんなそうなんだよ。でも、私たちは、全て解決してきた。どんな、厄介で怪異な案件でも」
舞彩が胸を張るように八雲を見る。なんか年下のわりに妙に貫禄がある。
「・・・」
八雲は考えた。
「試してみてからでも遅くはないんじゃないか」
舞彩がそんな八雲にたたみかけるように言った。
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