第11話 味方とおんゆあまーく
らんの家から学校に向かってる途中俺は、まだ不安な気持ちになっていた。
本当にらんは学校へ行ったのだろうか。疑心暗鬼になりながら歩いていたが、流石に足と体力が限界を迎えたのか、自然にその場で止まっていた。よくよく考えれば、らんの家は駅から近いから普通は電車に乗っていくのが正解だろうが、その時間の電車が走ってなく、都会でもないので次のが三十分後だった。こんな疲れた後に学校になんて行きたくねーな。どうせ遅刻だし。そんなことを考えながら、近くの公園に足を向けた。公園のベンチに腰を掛け、買った缶コーヒーを開け一口飲んだ。そして、冷静になり起きた事を振り返った。
らんが何らかの事情でおばあちゃんの家に住む。
俺と彗星で作戦を立てる。
一週間たった日の朝母親から、らんのおばあちゃんの訃報を聞く
すぐらんの家に向かうもすれ違いになり、彗星が電話で学校に行ってることを確認。
何かが引っかかり、ふと時計を見た。ちょうど8時を示していた。俺が家を飛び出したのが、7時。生徒は学校に8時15分までに入らなくちゃいけない。だから、電車通学の大体の生徒が、8時の電車に乗車し学校に登校する。俺が、らんの家に着いたのが7時35分くらい。ここで一つの疑問にたどり着く。いくらなんでも家を出るのが速すぎないか?らんの家は駅から近い。徒歩五分くらいだろう。別々の道できたのではと考えたが、駅に行くのに大通りを必ず経由するのでそれは、ありえない。だとすると答えは一つ、らんは登校すると見せかけ何処か別の場所に向かっている。プルルルルルルル
丁度いいタイミングで電話がかかってきた。
「もしもし、丁度いい。言いたいことが俺からもあるんだ。で、そっちはどうしたんだ」
「あ、でた。えーと、らんちゃんを見つけたの!学校じゃない場所で!」
想定外の言葉に俺は驚いた。
「ほ、ほんとか!どこにいるんだ?てか、さっき学校に向かってるっていったよな?」
「いま、
「全くしっかりしてくれよ。だけど、助かるよ。」
「以後気を付けます!ってか、話しかけても大丈夫?」
「最悪の場合だがもしかしたら、らんはそこから飛び降りるかもしれない。だから、その前に止めてくれ。くれぐれも刺激はするなよ。」
「う、うん!分かった。任せて」
よし俺も向かうか。缶コーヒーを飲みほし、わき腹を押さえながら駅に向かおうとしたが、いい考えがあるんだ。彗星頼むぞ。
ふ~っと深呼吸をする。思っていたよりハードなミッションを頼まれた。
私の言葉で命が1つ失われるかもしれない。そう考えると、心臓が踊り狂ったかのようにはね始めた。落ち着いて。なるべく自然体で、偶然会ったかのように振る舞うのよ。
「あれ~そこにいるのは、星宮らんちゃんじゃありませんか!奇遇だね。」
やばい露骨すぎた。その声を聞いたらんはゆっくり振り返った。
「あれ?彗星先輩じゃないですか。奇遇ですね。こんな所でどうしたんですか?」
「それはこっちのセリフだよ!なにかあったの?先輩に任せてね」
「はぁそうですか、先輩ですか。だったらなんで私のいじめを止めてくれなかったんですか!」
私は返答することが出来なかった。いきなりの大声に驚いたからではない。あまりの彼女の正しさにひれ伏してただけだった。
「なんなんですかいきなり!私が少し楽になったように見えたから、ちかづいてきたんですか?最初は私だって嬉しかったですよ。憧れの先輩に仲良くしてもらって。でも、昼休みは友達と楽しそうに食べてますよね?私なんか、いじめられて以来ずっと独りですよ。私とつるむことで優越感だしたり、いじめられてる子にも優しくしてる私可愛いとでも思ってるんですか!ずっと尾行してたのも気付いてましたよ。一人でいるところを写真でも撮って、拡散でもしようとしてたんじゃないんですか!」
マシンガンでの攻撃を私は、受け止めた。ここで避けてしまったら、この子とはもう一生分かり合えない。そう直感した。
「確かに、いじめを止めなかったのは謝るよ!これは本当に後悔をしてるよ。私も大多数と同じく、いじめられたくないからと見て見ないふりをしていた一人で、あなたのいじめに間接的に干渉していたよ。本当にごめんなさい」
私はこれ以上言葉で伝えても、なにも起こらないと思いその場で土下座をした。
「でも、らんちゃんとは本当に仲良くなりたかった!この気持ちは本当です。尾行してたのは、詳しくは言えないけど全部らんちゃんのためだから信じてください。」
「嘘です!そんなこと言われても信じることなんて不可能です。許してほしいなら、真実を話してください。この最低野郎が!」
「これだけは、彼の口から聞いてほしいです。私は彼に協力した、だけど私もあなたの味方だから!」
「早く話せよ!ってかお前なんかが味方だとしても、加害者の味方なんていらないんだよ!早く彼って人もおしえろ!」
彼女の口調が段々と荒くなっていく。これが、彼女の今まで受けたすべてなのだ。私たちが今の彼女を生んでしまった。だったら生むようなことをした人が、ケリをつけるべきだ。
「私だけじゃない!あなたは唯一いじめを頑張って隠してた人がいるでしょ?
あの人だけは巻き込みたくないと。」
「あんたまさか!あの人を、鈴燈先輩をまきこんだの!あの人は、優しいから全部悩んでる人の悩みも抱えるような人だぞ。だから、あの人の迷惑になりたくないから、あえて隠してたんだぞ!それなのにお前は!」
らんは私の髪をつかんで、平手打ちをしようとした。
彼女の受けた傷はこんなもんじゃ無い。潔く受け止めよう。叩かれると思った瞬間
「久しぶりだな、らん。やりすぎだぞ。」
叩こうとしてた手も、先輩の髪をつかんでた手も離して唖然とした。
「全くこんな事を先輩にしやがって。これじゃあ、あいつらとおなじになっちゃうぞ。第一いじめとかの問題が起こったら、俺に相談してほしかったな。俺はいつでもらんの味方なんだぞ!」
そのセリフを聞いた瞬間、涙が止まらなかった。私にはこんな身近に最強の味方がいたのに。こんなに頼れる人がいたのに。気持ちのいい天気雨が私を包んだ。
「で、でも私は先輩を巻き込みたくなかったから!先輩は全部一人でやろうとするから!」
「ばか、俺がいつそんな仏になったんよ。可愛い後輩のため先輩が助けるのは当然の事だろ。」
「はは、やっぱり先輩はかっこいいですね。ありがとう。、、、、っ、、本当にありがとうございます。先輩たちのおかげでなんだかとても軽くなりました。」
笑顔の目元の涙はとても輝いていた。
「それと、彗星先輩すみ、」
「謝らないでいいわ。事実私も加害者の一人だから。」
やっぱり憧れの人がそこにいた。
「言いづらいけど、おばあちゃんのこと」
「ああ、良いんです。確かに悲しいです。でも、私は甘えすぎていたんです。このままだとだめだからあえて私を一人にしたんです。おばあちゃんは。だけど、そのおかげで、周りには心強い味方がいることを改めて知れました。おばあちゃんには感謝してもしきれません。」
「そっか。」
天気雨もいつかは止み、太陽の上には虹がかかっていた。
「そういえば鈴燈。なにかあるんでしょ?」
「ああもちろん。流石にやられっぱなしじゃ腹が立つし、陸上部の文化にも腹が立つ。だから作戦を考えてきた。そうその名もHAB作戦!」
ちょっと頼もしかったが、不安もなかったと言ったら、嘘になる。
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