第5話 しんじつと存在
「みんなー!おはよう!!!」
私はいつも通り、勢いよくドアを開け元気よく挨拶をした。
あれ?わたしはとある違和感に気付いた。
いつもはクラスのみんなから挨拶が返ってくるのに、誰も返事をしてくれなかった。しかも、誰も私の方を見ようともしない。まるで私が存在しないかのように。
違和感に気付いた私が、ドアのところで立ちすくんでいたところ、ドンッ
同じクラスメイトの男子が私にぶつかった。私は、ぶつかられた衝撃でしりもちをついてしまった。
「痛っ!!ちょっとなにすんのさ!」
私は少し怒りながら言った。
「みんなーおはよう」
しかし、その男子は私の事を無視してそのまま教室の中に入って行った。さらに、その子は普通にクラスの子達に挨拶を返してもらっている。
私は不安になりながらも、また教室の中に入った。とりあえずこの違和感を、りらちゃんに話してみよう。
「おはよーりらちゃん。さっきね~結構大きい声で挨拶したのに、みんな気付かなかったんだよ。ひどくない?」
私は隣で読書をしているりらちゃんに向かって、さっきのことを話した。だけど、りらちゃんは読書に集中していたからか、私と会話をしてくれなかった。
「な~んか、へんなかんじ~」
私はそんな独り言を呟いた。この違和感が核心に変わったのは、昼休みの時だった。私はいつも通り、りらちゃんとお弁当を食べようと声をかけた。
「今日もお弁当一緒に食べよー」
しかし、私に返事をするわけでもなく、りらちゃんは教室を出て行ってしまった。
私は追いかけた。職員室やトイレに行くわけでもなく、めったに人が来ない様な方へドンドン進んでいく。私は、何も言わずに追いかけていたが、さすがに声をかけた。
「ねぇどこに行くの?てか今日変だよ。私が話しかけても、返事しないし。なのに、ほかの人とは喋ってて。」
私が、問いかけても止まることなく進んでいく。私はちょっと怒りながら、
「いい加減にしてよっ!なにかあったなら話してよ。」
するとりらちゃんは足を止めた。やっと私と話してくれるんだと思ったら、とある教室にいきなり入った。しょうがなく私も追いかけた。
そこは普段使われていない空き教室だった。私が入ると、そこには見たことのある三人がいた。
「あれ?君は昨日この私に勝った、らんじゃん。こんな教室にどうしたんだよ?」
「そのもう一人の子は友達か?」
麻里先輩と真紀先輩が私に話しかけた。由里先輩は無言のままだった。
私は先輩にりらちゃんがこの教室に行くのを追いかけてきた。と説明した。
そして、今日の違和感の事も全部話した。
「どー思います先輩。ひどくないですか?」
「あーあーそりゃひでー話だな。私だったら耐えられないぜ。」
「そうね。私も耐えられないわ。」
先輩たちは笑いながらそう言った。
「何がおかしいんですか!」
私は、また少し怒りながら言った。
「まーまー怒るなって。てか、由里もよくこんなひどいこと思いつくよなぁ~」
「ほんとにそれな~可哀想ったらありゃしない」
「ど、どうゆうことですか?」
理解が追い付かない私は、反射でそのことについて聞いた。
「そのことについては私が説明するわ」
さっきまで口を閉ざしていた、由里先輩が言った。
由里先輩はずっと無言でいるりらの隣に立った。
「今日の事は全部私が考え仕組んだことなの。みんなにあなたがまるで存在しないかのようにふるまってもらったの。ねぇらんちゃん知ってる?好きの対義語は嫌いじゃなくて無なの。人は誰かに認識をされているから自己というものを確立できるの。そして学校は一番人と関わり、人と自分との違いを認識する場所なの。他人と話して、笑って、喧嘩して、遊んで、運動して、こんなことをしながら他人と自分の違いを見い出し、自己を確立するの。だけどあなたは、これから存在しないかのように扱われる。あなたはこれから誰とも笑いあったり、喧嘩とかもできないのよ。それって生きている意味ある?」
私は怒りもわかなかった。ただあるのは恐怖でしかなかった。私は小学生時代のトラウマを思い出し震えていた。
「あら震えているの?可愛いわね~。そうねじゃあ最後に親友からの一言で今回のショーを終わりにしようかな。ほらもう話していいよ。」
私はただ震えながらりらちゃんの言葉を待った。
「先輩特に言うことなんてありませんよ。」
「おいおいなんだよーつまんねぇな」
「麻里落ち着いて。まずは理由をきき」
真紀先輩の言葉を遮るかのようにりらが口を開いた。
「てか誰です?らんって人。そんなひと見たことも聞いたこともないですよ。」
私はそれを聞いた瞬間私の何かが折れる音を聞いた。まだ私は自分の親友なら私の味方をしてくれると思ってたのかもしれない。私の味方は誰もいなくなった。
「うわあああああああああああああ」
私は思いっきり泣いた。
「ハッそういうことかよ。おいうるせーぞ」
麻里先輩にお腹を蹴られた。痛くはなかった。私はもう折れているから。
「親友からの最後の言葉も終わったし、行きましょう」
由里先輩の言葉を聞き先輩たちは言ってしまった。残ったりらちゃんは、特に何をするわけでもなく、教室を出ていった。そして教室にもう誰もいないかのように教室の鍵を閉めた。もう私は存在しないのかもしれない。
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