《追章》その30:波乱の男子会1
各地の復興も大分進み、一時的だが魔物のいない世界というものに人々が慣れ始めてきたある日のこと。
ふとポルコさんがこんな提案をしてきた。
「どうでしょう? たまには男同士、腹を割ってお話をするというのは。いわゆる〝男子会〟ですな」
「お、いいですね。なら俺の方で色々と声をかけてみますよ。まあ結構クセが強いやつもいるんで来てくれるかどうかは正直わかりませんが……」
「はっはっはっ、全然構いませんよ。その時は二人でしっぽり飲みましょうぞ。私もドワーフ秘蔵の名酒を用意しておきますので」
「わかりました。じゃあとりあえず声がけしてみますね」
◇
というわけで、男子会当日。
拠点の食堂内には俺とポルコさんを含め、七人の男子たちの姿があった。
が。
「……あなた、僕とキャラ被ってませんか?」
「えー、そうかなぁ~? ボクの方が可愛いと思うんだけど……」
「お前、あの〝エデン〟とかいうやつの仲間なんだってな?」
「それがどうした? よもやその程度の実力で礼参りでもするつもりか? 殺すぞ?」
「まあまあ、二人ともその辺で……」
濃い面子だなぁ……。
俺とポルコさんは言わずもがな、向かい合うようにカナン、パティ、アガルタ、ヨミ、光の英雄さんという感じである。
ちなみにアガルタの腕は身重のフィーニスさまが治してくれたのだが、その際彼が子犬のようにぷるぷると震えていたのが印象的であった。
どうやらフィーニスさまに黒人形化されていたことがよほどトラウマだったらしい。
ともあれ、と俺は一つ咳払いをして言った。
「今日は皆集まってくれて本当にありがとう。はじめて会う人もいるだろうし、とりあえず自己紹介でもしようか。知ってのとおり、俺はイグザだ。よろしく」
「ドワーフのポルコです。一応〝パング〟という名がありますが、こちらの方が皆さん馴染みやすそうなので。〝盾〟の聖者です」
「えっと、次は僕ですか。〝弓〟の聖者――カナンです。種族はダークエルフになります」
「へえ、なんか〝ダーク〟ってついてるとかっこいいね!」
「そ、そうですかね?」
「うん! あ、ボクはパティだよ。よろしくね~」
「次は俺か。誉れ高き竜人族の戦士アガルタだ。一応〝槍〟の聖者をやっている」
ぱちぱちとささやかな拍手がアガルタに送られる中、全員の視線がちらりと次の人物に向けられる。
――じー。
すると、ばつが悪そうにヨミが口を開いた。
「……ヨミだ。言っておくが貴様らと馴れ合うつもりはない」
「って言いながらちゃんと一緒に来てるのがヨミのいいところなんだよ~って、うわあっ!?」
「ひいっ!?」
ずがしゃんっ! とヨミの手から放たれた斬撃系の闘気がパティとポルコさんの間をすり抜け、食堂の壁を深く抉る。
「ちょっと危ないじゃんヨミ!?」
「ふん」
パティの抗議を鼻で笑い、ヨミは再び静かに腕を組む。
危うく首をすっ飛ばされそうになったポルコさんが割と素で泣きそうな顔をしていたが、それはそれとしてあの壁は一体誰が直すと思っているのだろうか……。
「えっと……」
そんな中、最奥に座っていた精悍な顔立ちの男性が控えめに言った。
「僕はクラウ。一応〝光の英雄〟と呼ばれてはいるが、所持しているスキルは《剣鬼》だ。なのでこのような聖者の方々が集う場に呼んで貰えたことをとても光栄に思っている」
よろしく頼む、と柔和に微笑む光の英雄さんことクラウさんに、ポルコさんが「ちょ、ちょっとイグザさま!?」と慌てた様子で耳打ちしてくる。
「さっきから気になっていましたが誰ですかあのイケメンは!? 金髪碧眼の爽やかなイケメンとかもう白馬の王子じゃないですか!?」
「いや、白馬の王子かどうかは知りませんけど、〝ヴィヴァルク〟という国で〝光の英雄〟と呼ばれていた冒険者さんです。先の戦いで色々とお世話になりまして」
「……なるほど、そうでしたか。これは強力なライバルの登場ですな……!」
ぐっと闘志を燃やすポルコさんに、俺はははっと笑みを浮かべて言う。
「いやいや、そんな別に競うような感じじゃないんで」
が。
「あ、いえ、私の恋のライバルです」
「……えっ?」
えっ?
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