パワハラ聖女の幼馴染と絶縁したら、何もかもが上手くいくようになって最強の冒険者になった ~ついでに優しくて可愛い嫁がたくさん出来た~
《聖女パーティー》エルマ視点56:いや、なんであんただけ戻ってくるのよ!?
《聖女パーティー》エルマ視点56:いや、なんであんただけ戻ってくるのよ!?
「ふむ、頃合いか」
そう言って、あの偉そうな元聖者が玉座から腰を上げる。
先ほどから神殿内が妙に騒がしいというか、色んな方向から衝撃音やらなんやらが聞こえてくるし、もしかしたらイグザたちがここに近づいているのかもしれない。
となれば、恐らくはそれを迎え撃ちに行くのだろう。
でも確かあのエリュシオンとかいう元聖者は、聖女七人での《スペリオルアームズ》でしか倒せないはずだし、あたしがここにいたらかなり不味いのではないだろうか……。
てか、絶対やばいわよね……。
「――パティ。行くぞ」
「はい。創造主さまの御心のままに」
そんなあたしの心情などつゆ知らず、何やらパティが「ちょっと行ってくるねー」と元聖者のもとへと向かっていく。
そして階段を上り、元聖者が通っていった玉座奥の隠し通路というか、カーテンの隙間へと消えていった。
「……えっ?」
いや、何この状況。
なんで人質のあたし一人残して皆いなくなっちゃったのよ。
これじゃまるで〝逃げください〟って言ってるようなものじゃない。
え、本当に逃げちゃうけどいいの?
「……」
きょろきょろと辺りを見渡し、ほかに人気がないことを確認する。
聖神器は連れ去られる際に置いてきてしまったのだが、
――しゅうんっ。
「よしっ」
これは呼べばたとえどんな場所であろうと瞬時に取り出すことの出来るとても便利な代物である。
ありがたいことに、その特性はこの《絶界》とかいう空間でも変わらなかったようだ。
というより、たぶんイグザたちが持ってきてくれていたのだろう。
だからこそこうして無事に呼び出すことが出来たんだと思う。
ともあれ、これで武器も手に入ったことだし、あとはフルガさまから授かった雷の武技を使ってとにかく最速で駆け続ければ、再度捕まる前に誰かしらと合流出来るはずだ。
パティたちは……まだ戻ってきてはいないし、もし二人して皆を迎撃しに行ったのであれば、まず戻ってくることもないだろう。
「てか、人質の扱いがちょっと雑すぎるんじゃない? そういうところもあんたたちが勝てない原因の一つだってーの」
そう肩を竦めながら言い放ち、あたしはさっさとこの場を去ろうとしたのだが、
「――どこへ行くつもりだ? 聖女エルマ」
「ひゃいっ!?」
突如背後からあの仏頂面の声が響き、あたしは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
まさか……、と顔を引き攣らせながら振り返ってみれば、そこには先ほどと同じように玉座で頬杖を突くエリュシオンの姿があった。
なお、パティの方はがっつり不在である。
「べ、別になんでもないわよ……」
そう努めて冷静を装い、あたしはそそくさと再び着席する。
だが当然、内心は心臓がばくばくだった。
てか、なんであんただけ戻ってきてるのよ!?
さっき真顔で〝行くぞ〟って言ってたじゃない!?
なら宣言通りどっか行ってきなさいよ、紛らわしい!?
というか、パティはどこへ行ったのよ!?
この空間に二人きりとかめちゃくちゃ気まずいでしょうが!?
話すこととかないし、お茶のおかわりだって頼めないし!?
そしてなんで聖神器呼び出したことになんも突っ込んでこないのよ!?
逆に気味悪いじゃない!?
あーもう!? と堪らず頭を抱えるあたしだが、パティはまったくと言っていいほど帰ってくる気配を見せなかったのだった。
え、なんなのこの地獄!?
ちょっともう勘弁してよぉ~!?
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