146 大封印術式
結論としてシヴァさんとエルマ、そしてポルコさんを除いた全員でテラさまのもとへと行くことになった。
マグメルの《スペリオルアームズ》に、海中を移動した時のような防御壁型の移動術を組み合わせれば、たとえ高速で飛んだとしても大丈夫だろうということになったからだ。
もちろんナザリィさんも里に残り、二人の装備の新調を手伝ってくれるという。
「テラさまー? いらっしゃらないのですかー?」
というわけで、早々に世界樹へと辿り着いた俺たちだったが、いくら呼びかけてもテラさまは一向に姿を現してはくれなかった。
「ふむ、見た感じ争ったような形跡はないように思えるが……」
「そうね。でも心なしか、彼女が依り代にしているというこの樹も元気がないように見えるわ」
そう言って、ザナが世界樹の幹に優しく触れる。
確かに以前来た時のような生命力というか、力強さは感じられないような気がする。
やはりテラさまの姿が見えないことと何か関係があるのだろうか。
「さすがにこう立て続けに女神さま方のお姿が見えないと不安になりますね……。ほかの方々の安否も気になりますし……」
「確かに心配。とくにほかの女神さまたちは、三柱とも周囲に亜人や人が大勢いるから」
「そうだな。いくら神が不滅とはいえ、フィーニスさまが関わっている以上、その法則も崩れかねないし、人間は言わずもがな、黒人形に亜人の里を襲わせた彼女が今さら人々の命を気にするとは思えないしな」
「ちっ、こりゃあたしも一度ババアの顔を見に行かねえといけねえみてえだな。まああのババアがそう簡単にやられたりはしねえと思うけどよ」
そう面倒臭そうに頭を掻くオフィールだが、その表情にはどこか陰りがあるように見えた。
ああは言いつつも、やはり母同然に育ててくれたトゥルボーさまのことが心配なのだろう。
ティルナにしてもそうだ。
シヌスさまが人魚の里――ノーグの神殿にいる以上、里への出入りを解禁されたセレイアさんも巻き込まれる可能性がある。
努めて冷静を装ってはいるが、内心気が気でないはずだ。
ゆえに、俺は大きく頷いて言った。
「――分かった。ならこのままトゥルボーさまの神殿に向かおう。本当は一度報告に戻った方がいいんだろうけど、それだと色々と間に合わない気がするからな。――マグメル」
「分かりました」
頷く彼女と再び《スペリオルアームズ》を発動させた俺は、防御壁の強度を最大限まで上げ、最速でトゥルボーさまのもとへと向かったのだった。
◇
「――合わせろ、トゥルボー!」
「我に命令するな!」
どぱんっ! と大地を蹴り、イグニフェルとトゥルボーが同時にフィーニスへと斬りかかる。
その手にはそれぞれ剛炎を纏う大剣と、暴風を纏う大鎌が握られていた。
所有している神のみが扱える最上級にして唯一無二の武器類だ。
が。
――ばちちちちっ!
「うふふふふ……♪」
フィーニスはそれらの一撃をかざした両手のひらでいとも容易く受け止める。
見れば、両手のひらの前には薄い障壁が張られていた。
「ちっ、やはり通じぬか……っ」
だがそうなることはイグニフェルたちも予想済みであった。
元より五柱全ての力を持つフィーニスが、さらに二柱分の力を取り込んだのである。
たとえイグニフェルとトゥルボーが力を合わせたところで、フィーニスには遠く及ばないだろう。
「――はあっ!」
ばちんっ! とがら空きだった背中に向けて放たれたシヌスの刺突が、やはりフィーニスの障壁によって受け止められる。
「ふふ、残念だったわね……?」
「くっ……」
どうやら手をかざさずともはじめから全身に障壁を張り巡らせていたらしい。
だが――それもお見通しだ。
――きゅいいいいんっ!
「――っ!?」
フィーニスの双眸が大きく見開く。
当然だろう。
何故ならイグニフェルたち三柱の身体が同時に目映く輝き出したからだ。
「まさかあなたたち……っ!?」
「然り! 我ら三柱とともに再び虚無の彼方へと封じられてもらうぞ、フィーニス!」
――きゅいいいいいいいいいいいいいいいんっ!
輝きがさらに強さを増す中、イグニフェルたちは揃って封印術を発動させたのだった。
「「「――エンドアースオブリヴィオンッッ!!」」」
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