《聖女パーティー》エルマ視点45:誰よ、目隠しすれば色っぽくなるとか言ったやつ!?


 その頃。


「是非シヴァさまの採寸はこの私めに……っ!」と鼻息荒くメジャーを持ってきた豚をビンタで追い返した後、あたしたちはナザリィの工房で新装備用の採寸を受けていた。


 なんでもすでにほかの聖女たちはドワーフ装備に身を包んでいるといい、イグザのローブも古の聖者が身につけていたという伝説の代物らしい。


 何それずるいという感じではあるが、冷静に考えてみれば〝終焉の女神〟とかいうやばいやつを相手にしているのだ。


 当然、そのくらい凄い装備を身につけなければどうにもならないのだろう。


 ともあれ、採寸の終わったあたしたちは、工房内で新しい装備が出来るのを今か今かと心待ちにしていたのだが、



「第一回! シヴァ先生のお色気講座ー!」



 ――ぱふぱふー。



「あらあら」



「……」



 なんか始まったんだけど……。


 木製のテーブルを囲み、突如開催された謎の講座に、あたしが一人胡乱な顔をしていると、主催者のナザリィが両手を顔の前で組み、神妙な面持ちで言った。



「この講座の目的は言わずもがな、我ら持たざる者でも先生のようにお色気むんむんになろうというものじゃ」



 何その余計なお世話もいいところの講座。


 そんなの受けなくてもお色気とかむんむんだし。


 てか、最近やっと意味を理解したけど、その〝持たざる者〟にあたしを入れるのやめてくんない!?


 少しは持ってるわよ、失礼な!?



「で、じゃ。さっそくじゃがお色気に一番必要なものを教えてくれぃ!」



 興奮気味にそう問いかけるナザリィに、シヴァは「そうね」と思案した後、ふっと笑みを浮かべて言った。



「――〝思わず固唾を呑み込む極上の肉体〟かしら? 私みたいな、ね?」



「「……」」



 はい、終了ー!


 もう夢も希望もありませんでしたー!


 てか、何が〝私みたいな〟よ!?


 さっさと垂れればいいんだわ、そんな乳!? と内心自棄になるあたしだったが、ナザリィはまだ諦めていなかったらしい。


 心に即死級のダメージを追いつつも、努めて冷静に言った。



「ま、まあげふっ……そ、そういうのも確かに必要じゃとは思うがごふっ……ほかにもあるじゃろ? こう仕草とか服装とか……」



「ええ、確かにあるわ。たとえばそうね、私のこの目隠しも、あるのとないのじゃ大分印象が変わるでしょう?」



 そう言って、シヴァが目元の黒い布を外す。


 確かに目元を覆っていた方が、なんとも言えない背徳的なエロスを感じる気がする。


 ……。


 いや、気がするだけであって、あたしがそういうプレイをしたいとかそういうことじゃないからね!?


 てか、〝プレイ〟って何よ!?


 変なこと言わせないでよね、いやらしい!?



「……なるほど。つまり我らもそういうアイテムで着飾れば、多少なりともお色気を纏うことが出来るやもしれんということじゃな?」



「そうね。なんなら試してみる?」



 そう余裕を孕んだ表情で布を差し出してくるシヴァに、あたしたちは無言で顔を見合わせた後、



「上等じゃない。なら見せてあげるわ。あたしのエロスをね」



 と奪うように布を受け取り、それをぎゅっと目元で結んでみる。



「どう? もう完全に悩殺って感じじゃない?」



 そして渾身のどや顔で二人に感想を聞いたあたしだったが、



「なんか斬首される前の囚人みたいじゃな……」



「いや、誰が斬首される前の囚人よ!?」



 べしんっ! と即行で布をテーブルに叩きつけたのだった。

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