パワハラ聖女の幼馴染と絶縁したら、何もかもが上手くいくようになって最強の冒険者になった ～ついでに優しくて可愛い嫁がたくさん出来た～

《聖女パーティー》エルマ視点42：確かに人は見かけによらないわ……。

「――そういえば、あなた彼に抱かれる覚悟は出来たの？」

　イグザたちがボレイオスだかのところへと向かったあとのこと。

　半壊した宿の修復を手伝っていたあたしに、突如ザナがそんなことを問うてきた。

「……はっ？」

　当然、なんのことかと思わず目が点になるあたしだが、ザナは不思議そうに小首を傾げて言った。

「だって次はあなたの番でしょう？　〝斧〟を浄化したら、残っているのは〝剣〟だけだもの」

「い、いやいやいやいや!?　だからってなんであたしがあいつに抱かれないといけないのよ!?　浄化だけなら別に《スペリオルアームズ》だかは必要ないはずでしょ!?」

「ええ、確かにそうなのだけれど、どのみちフィーニスさまを倒すには全員で《スペリオルアームズ》を発動させないといけないわけだし、早いか遅いかの問題よ？」

「ちょ、ちょちょちょっと待って!?　あたし、それ初耳なんですけど!?」

　がーんっ、とあたしがすこぶるショックを受ける中、補修用の木材を運んでいたアルカディアが「心配するな」と口元に笑みを浮かべて言った。

「あいつは優しい男だ。破瓜の痛みも即座に癒してくれるだろう」

「いや、そんな心配してないわよ!?　てか、なんで抱かれる前提で話が進んでるのよ!?」

「そうですぞ！　そんなことよりもまずは本当に優しかったかどうかのお話を皆さまにあぶうっ!?」

「うるさいわね!?　いいからあんたは黙って手を動かしてなさいよ、この変態!?」

　横から興奮気味にしゃしゃり出てきた豚の顔面に硬めの雪玉を投げつけつつ、あたしはそう声を荒らげる。

　てか、〝そんなことより〟って何よ!?

　ぶっ飛ばされたいの、あんた!?

「まあ落ち着け。お前だってイグザが嫌いなわけではないだろう？」

「そ、そりゃ確かにそうだけど……。で、でもそういうことは文通とかデートを重ねてからするものでしょ!?」

「いや、〝文通〟ってお前……」

　何よ、その若干引いたような顔は!?

　あたしだって恋するお年頃なんだから、大好きな人とお手紙のやり取りくらいしたいわよ!?

　なんか文句でもあるわけ!?　とあたしが抗議の視線をアルカディアにぶつけていると、黙々と瓦礫を片づけていたティルナが少々驚いたように言った。

「これは意外。実はエルマが一番〝うぶ〟だった」

「〝うぶ〟で悪かったわね!?　しょうがないでしょ!?　そういうことを今までに一度もしてこなかったんだから!?」

「分かった分かった。とりあえず落ち着け。まあ人は見かけによらないということだろう」

　いや、それどういう意味よ!?

「確かにマグメルも一見すると清楚な修道女のように思えるが、下着は全部尻に食い込むタイプのやたらと透けているやつだからな」

「そ、そうなのですか!?」

　ぴくぴくと白目を剥いていた豚が突如として蘇生する。

　すると、向こうの方から噂の尻に食い込んでる人がもの凄いスピードで駆けてきた。

「ちょ、ちょっとアルカディアさん!?」

「いや、だが事実だろう？」

「事実なのですか!?」

「ポルコさんはちょっと黙っててもらえますか……っ？　私、今この人とお話をしているので……っ」

　そう笑顔に青筋を浮かべるマグメルの威圧感に、さすがの豚も冷静になったようで、「は、はい……」と大人しく頷いていたのだった。

　なんでもいいけど、あたしそんなパンツ一度も穿いたことないんだけど……。

　マグメルってあんな顔して意外といやらしいのねぇ……。