133 持たざる者
最初から分かっていたのです。
私では女神さまを幸せにすることは出来ないと。
でも、それでも私は女神さまにお嫁さんになって欲しかった。
ずっと私の側で微笑んでいて欲しかった。
だってお淑やかでおっぱいの大きな美女とか反則じゃないですか。
そりゃ私だって〝ママー〟って感じでダイブしたくなりますよ。
大体、イグザさまにはほかにもアルカディアさまやオフィールさま、シヴァさまなどなどの魅力的なおっぱいがあるんだからいいじゃないですか。
それどころか、イグニフェルさまやフルガさまにも手を出してるとか、ホントちょっといい加減にしていただきたいです(怒)。
もちろんザナさまやカヤさまも美人ですし、ティルナさまは……色々と可愛らしくていいと思います。
まあ結局何が言いたいかというと、〝独り占めはよくない〟ということです。
……え、聖女さま?
確かに聖女さまは美人ですよ、ええ。
今となっては見る影もありませんが、お淑やかで私好みのお優しいお方でもありました。
私に気があったということも承知しています。
でもおっぱいがなかったんです!?
どこにお忘れになってきたのかと言わんばかりに胸元がすっからかんだったんですぅ~!?
――ごんっ!
「げふぅ!?」
その瞬間、私の顔に激痛が走ったのだった。
◇
「お、おい、エルマ落ち着け!? 一体どうしたんだ!?」
「どうもこうもないわよ!? この豚、ぶっ殺してやるわ!?」
突如ポルコさんの顔面に大振りの拳を叩き込んだエルマを、俺は慌てて羽交い締めにする。
先ほどまで心配そうにポルコさんの様子を窺っていたエルマが、いきなり全身のバネをフルに使って渾身の一撃を叩き込んだのだ。
そりゃ何ごとかと驚きもするわ。
てか、拳が手首くらいまでめり込んでた気がするんだけど大丈夫なのだろうか……。
「いや、ぶっ殺すも何もすでに死にかけなんですけど!?」
「だったらこのまま息の根を止めてやるわ!? あたしにはその権利があるんだから!?」
「と、とにかく落ち着けって!? なんの権利かは知らんが何故あのような凶行を!?」
「そんなの豚があたしをコケにしたからに決まってるでしょ!? なんか寝言みたいなことをぶつぶつと呟いてるなぁと思って耳を近づけてみたら、あたしの胸を〝すっからかん〟って言ったのよこの豚!?」
「だっはっはっはっはっ! そりゃ言いたくもなるわな!」
指を差しながら大爆笑するオフィールに、当然エルマは真っ赤な顔で声を荒らげる。
「いや、笑ってんじゃないわよ、このおっぱいおばけ!? なんならあんたのそれをもぎ取ってあたしの胸に移植してやろうかしら!?」
「落ち着いて、エルマ。それなんの解決にもなってない」
どうどうとティルナが宥めに入るも、エルマの怒りは収まらないらしく、何故かその矛先を俺に向けてくる。
「大体、あんたが巨乳ばっか集めてくるからこういうことになるのよ!? 責任取りなさいよ、責任!?」
「え、俺!?」
てか、どういう理屈!?
「そうよ!? 仮に皆が皆ティルナみたいな感じだったら争いなんて起こらなかったでしょうが!?」
「いやいやいやいや……」
何を言ってるの、この子……。
と。
「ちょっと待って。わたしよりあなたの方が小さいのだから、例に出すならそっちを主に出すべき」
「……えっ?」
ティルナの突っ込みに、エルマが呆然と目をぱちくりさせる。
そして彼女は無言でティルナに近づいたかと思うと、その胸元をぺたりと触り始めた。
――ぺたぺたぺたぺた。
途中で自分の胸元も触りつつ、互いのボリュームを比べていく。
そうして検証が終わったらしいエルマは、ふっと全てを悟ったように微笑むと、
「い、今すぐあたしの乳を揉んでぇ~!?」
「ええっ!?」
そう泣きながら俺の方へと縋ってきたのだった。
いや、揉んで大きくなるんだったら苦労はしないだろ……。
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