《聖女パーティー》エルマ視点32:なんか出てきたんですけど!?
馬鹿イグザがはっちゃけて色んな女に手を出していたのはさておき。
改めてあたしたちは火の女神――イグニフェルさまからお力を賜ろうとしていたのだが、
「……不穏だな」
「「「?」」」
彼女は何やら変な気配を感じとっているらしく、先ほどからずっと顰め面になっていた。
だがこのままでは話が進みそうにないので、あたしはイグニフェルさまに問う。
「あの、どうかされたのですか?」
すると、イグニフェルさまは困惑した様子でこう答えた。
「いや、さっきまであったはずのフルガの気配が消えた」
「「「――っ!?」」」
え、消えた!?
〝フルガ〟って確か雷の女神さまだったはずだけど……まさか死んじゃったの!?
どういうこと!? と驚くあたしたちに、しかしイグニフェルさまは首を横に振って言った。
「心配するな。神は不滅だ。恐らく別の空間にでも飛ばされたのだろう」
「……別の空間、ですか?」と豚。
「ああ。そなたらは知らぬと思うが、我らは元々一つの神――ゆえにたとえ離れていたとしても、根底では繋がっているのだ」
だから、とイグニフェルさまは炎を滾らせ始める。
ぶっちゃけ熱いのでやめて欲しかったのだが、彼女はそのまま目の前の空間に向けて一撃を叩きつけ始めた。
「――イグニスブロー!」
――どぱああああああああああああああああああああんっ!
と。
「――あちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!?」
「「「――なっ!?」」」
ごごうっ! と別の空間から薄着の女性が炎とともに飛び出してきたではないか。
「だ、大丈夫ですか!?」
しゅばっとすかさず助けに入る豚。
え、何その俊足。
あんた、あたしが魔物に襲われている時、その速度で来てくれたことあった?
ないわよね?
そうやって胸のでかさで身体能力上下させるのよくないと思うわ。
あたしが豚に半眼を向ける中、女性はいきり立ってイグニフェルさまに詰め寄ってきた。
「てめえ、ちょっとは加減ってもんを考えたらどうだ!?」
「助けてやった第一声がそれか。そなたは相変わらず礼節がなっていないようだな、フルガ」
「「「!」」」
え、フルガ!?
じゃあこの人さっきの話に出てきた雷の女神さまなの!?
「はいはい、ありがとよ! つーか、どこだよ、ここは?」
きょろきょろと周囲を見渡す女性ことフルガさまに、イグニフェルさまが言った。
「ここは我が神域。そなたの気配が途切れたことが気になってな。強引に〝脈〟を繋げさせてもらったというわけだ」
「なるほど、そういうことか。で、そいつらは……ああ、聖女か」
「あ、はい。〝剣〟の聖女――エルマと申します」
深々と頭を下げるあたしだったが、その時、彼女の口からまさかの言葉が返ってきた。
「なんだ、てっきり聖女だからあいつの女かと思ったんだが、お前はあいつに抱かれてないみたいだな」
「えっ?」
あいつってまさか……っ!?
あたしが嫌な予感を縦横無尽に走らせていると、フルガさまは驚いたようにイグニフェルさまとカヤさんを見やって言ったのだった。
「って、てめえらの方が抱かれてんのかよ!?」
「まあ成り行きでな」
「私も妾にしていただきましたので」
「はっはっはっ! まあ正妻はオレだけどな!」
「……」
え、何このアウェー感。
ちまたでは馬鹿イグザの女になるのがブームなの?
てか、あいつ本当に何してんの……。
「……」
――ずーんっ。
そしてあんたも絶望に打ちひしがれていないでちょっとは会話に参加しなさいよ。
痩せればあんただってそこそこ……あ、ごめん、そうでもなかったわ。
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