《聖女パーティー》エルマ視点27:やっぱりそういうことじゃない!?


 人魚はその名をセレイアと言った。


 なんでも偶然溺れたあたしたちを見つけ、助けてくれたらしい。


 豚の凶行に関しても、意識の戻らないあたしを心配して、人工呼吸を行おうとしてくれたのだとか。


 それだけ聞くと全力でぶっ叩いたあたしの方が悪いように思えるのだが、しかしあたしはセレイアから聞いてしまった。



 ――元々彼女があたしに人工呼吸しようとしていたということを。



 にもかかわらず、あの豚はやたらと男らしい顔で〝自分がやる〟と言い出したという。


 聖女であるあたしを守るのは自分の役目だからと。


 ……。


 いや、あんた単純にあたしとキスしたかっただけでしょ!?


 何をかっこつけて〝俺が守る!〟みたいに言ってくれちゃってんのよ!?


 なんなら心臓マッサージとか言っておっぱい触ろうとしてたんじゃないの!?


 でもそりゃそうよね!?


 だって今まで手を出したくて堪らなかった至高の美女を好きに出来る絶好の機会だったんだもの!?


 あーおぞましい!?


 まさに性欲の権化よ、権化!?


 ちょっとあとで下着がなくなってないか調べないとダメだわ!?


 いえ、むしろもう全部買い替えよ、買い替え!?


 あの豚、絶対被ってそうだし!?


 いや、穿いてすらいるわ、絶対!?


 ぶるぶると自身の身体を抱き、あたしが未だ目を回している豚にどん引きしていると、セレイアが小首を傾げて言った。



「それであなた方はシヌスさまに会いにいらしたのですか?」



「え、ええ、そうなのです。イグザさまもお会いになられたと聞きましたもので」



「まあ。ではあなた方はイグザさんのお知り合いで?」



 ぱあっと顔を明るくさせるセレイアに、あたしも微笑して頷く。



「ええ、もちろんです。今でこそ別行動をしていますが、元々彼とは一緒に旅をしていた間柄でしたから」



 嘘は言ってないわよ?


 あいつがこのあたしを捨てたことはさておき。



「まあまあ、そうでしたか。聖女と聞き、もしやとは思っていましたが……」



「ふふ、そうなのです。ですから彼と再び合流した時に足を引っ張らぬよう、そして人々の一層のお役に立てるよう女神さま方のもとを訪れておりまして」



「なるほど。事情は分かりました。そういうことでしたら、私があなた方をシヌスさまのもとへとご案内いたしましょう」



「ありがとうございます! 命を救っていただいた上、そこまでしていただけるなんて、本当に感謝の言葉もございません」



 そう頭を下げつつ、あたしは内心よしっと拳を握る。


 これで海中移動問題もクリアだわ!


 さっすがあたし!


 というわけでさっさと起きなさいよね、豚!

 


     ◇



 そうしてあたしたちはセレイアの案内のもと、海の底にあった人魚の里――ノーグへと到着し、そのままシヌスさまのいるという水神宮へと向かったのだが、



「――よくぞここまで辿り着きましたね、人の子らよ」



 ――ぼぼーんっ。



「「――っ!?」」



 いや、乳でかっ!? と彼女の巨体の方よりも、むしろその胸元にめっぽう驚いていたのだった。

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